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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2011年01月25日

青年団若手自主企画vol.46だて企画『終わりなき将来を思い、18歳の剛は空に向かってむせび泣いた。オンオンと。』01/14-25アトリエ春風舎

 そもそも私は“観客参加型演劇”というものがすごく苦手なんです。「観劇は、させません。観劇は、できません。あなたを巻き込む即興高校ドラマ。」という挑発的な宣伝文のおかげで、情報を得た時からこの公演は観に行くつもりがなかったのですが、作・演出の舘そらみさんからツイッターで直接お誘いいただき、それなら行ってみるか!と勇気を出して観に行ってみました。

 でも・・・やはりダメでした・・・劇場入り口で敗退。場違いも甚だしいひどい状態でした。失礼いたしました。上演時間は約1時間45分。
 『パブリック・ドメイン』は大丈夫だったんですけどね。舘さんがストレート・プレイを上演されることがあれば、またチャレンジしようかなと思います。

 ⇒CoRich舞台芸術!『終わりなき将来を思い、18歳の剛は空に向かってむせび泣いた。オンオンと。

 アトリエ春風舎が高校の教室になっていました。観客は生徒の1人として木製の机につきます。ご覧になった方から「参加じゃなくて体験だ」というご指摘があり、そうだなと思いました。参加できるほど観客には自由がないのです。段取りを知っている役者さんと“仲間になって”架空の物語を進行させていきます。一般の観客ができるのはチャチャを入れたりあいづちを打つ程度ですね。
 たまたま観客の中に青年団の役者さんがいらして、絶妙なタイミングでアドリブを入れられていました。出演者がそれにアドリブで返し、波風が立ったのを抑え込んで、次へと進みました。ストーリーは変わりません。

 私は小学校から高校まで公立の学校に通っていました。席に座りながら、学校ってひどい場所だったなぁとしみじみ思いました。思考停止してただ教師に従うことを強いられ、好きでもないのに「仲間だ」とひとくくりにされ、同じ考えじゃないのに「みんなの気持ちは」などとまとめられて。軍隊と似てるんじゃないかな。

 「観客がすすんで楽しく参加できるような環境づくりをする」のではなく、その逆で、「理想的な観客参加型作品にするために、観客をその型にはめる」やり方だと感じました。
 出演者の木崎友紀子さんと折原アキラさんに救われました。私のような萎縮してガチガチになってしまった観客とのコミュニケーションを心得ていらっしゃる。ありがとうございました。

 ここからネタバレします。セリフ等は正確ではありません。

 担任の若い女性教師が突然休んだので、代わりに男性教師がやってきた2年3組の教室。休みの理由は「家庭の事情」。男性教師が席を外した時に彼が置き忘れた携帯が鳴った。生徒が無断でその携帯を開いてみると、休んでいる女性教師からだった。彼女は男性教師に頻繁に連絡を取っているらしい。もしかしたら2人は付き合ってるのかも・・・?

 アトリエ春風舎エントランスのらせん階段に「足音は静かに・風紀委員会」という張り紙がある時点で窮屈な気分に。そして階段を降りている途中で下にいた学生服の男性に「おはよう!」と声をかけられ、気持ちが凍りました。全然知らない見たこともない人から「おはよう!」って言われたら・・・怖いです。受付でも知らない人からの馴れ馴れしいタメグチは続き、「写真撮っていい?」「付箋に名前書いて」「その名前、もうこのクラスにはいるんだよね~(変更して!)」「(張り紙を指さして)これ読んで」などなど無礼な態度と発言の連続。「お芝居に参加するつもりで来たんでしょ?」としたり顔で、勝手に決めたルールを当然のごとく守らせるのです。たしかに心の準備をして劇場に来ましたけど、ものすごく不愉快でした。導入が懇切丁寧だったPOTALIVEを思いだしました。

 劇場内には私服の生徒たちが妙な仲良しムードで談笑するような演技をしていますが、とてもぎこちなかったです。当然ですよね、一般客が混じっているんですから。あからさまな“やらせ”に加担することを強要され、そしてオープニング映像で「僕らは仲間だ!」「これはルールだよ!」とダメ押し。
 映像では「スクールウォーズ」「3年B組金八先生」「高校教師」「GTO」「ごくせん」などの学園ドラマも流れていました。お芝居の内容には“熱血教師と彼の言うことをきく生徒たち”という構図が当てはまるものが多かったですね。パロディーとして鑑賞して苦笑したくとも、生徒の一員という意識を持っていると笑えず。

 教卓の後ろの壁に時計がかけてありました。1時間目という設定なのですが、朝10時を過ぎてもチャイムが鳴らないんです。上演時間が1時間45分だから当然なのですが。そういう嘘をどれぐらい許容しなければならないのか、えらそうにつまらない話をしつづける男性教師への憤りをどう処理すればいいのか。「2年3組の仲間」というルールは曖昧ゆえに、私にとっては拘束力が強かったですね。途中退出できるようなムードでもなかったです。

 「参加ではなく体験だ」という観点で考えなおせば、かつて自分が浸かっていた閉鎖的な学校生活を、客観的に体験しなおせたことは良かったと思います。

出演:木崎友紀子 小林亮子 石松太一 伊藤毅 折原アキラ 重岡漠 舘そらみ(以上青年団) 海老根理 千田美智子(文学座) 
脚本・演出:舘そらみ 美術:乘峯香苗  照明:山岡茉友子  映像:高良真秀  映像補佐:橋爪知博 演出助手:池垣敬裕 飛谷映里 中野聡 WEB:池田宇大 宣伝美術:大木瞳  撮影:村田まゆ  制作:だて企画・ガレキの太鼓 芸術監督:平田オリザ 企画制作:青年団/(有)アゴラ企画、こまぱアゴラ劇場 主催:(有)アゴラ企画、こまぱアゴラ劇場
各回限定30席 予約:2000円 当日:2500円 *全席自由・日時指定・整理番号付き。*未就学児童はご入場いただけません。
http://garekinotaiko.com/
http://www.komaba-agora.com/line_up/2011/01/date_kikaku/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年01月25日 16:40 | TrackBack (0)