REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2011年03月05日

SPAC『マルグリット・デュラスの「苦悩」』03/04舞台芸術公演・楕円堂

 フランスの有名女優ドミニク・ブランさんの一人芝居です。京都、東京を経て静岡へ。会場がBOXシアターから楕円堂に変更になっていました。楕円堂の一人芝居というと昨年の『彼方へ』も凄かった。

 舞台は1945年4月のパリ。夫を待つ妻の独白です。上演時間は1時間30分ぐらいだったような(すみません、忘れました)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『苦悩

 ≪あらすじ≫
 ナチスの強制収容所に連れて行かれた夫ロベールを待つ妻。彼は死んだのだと自分に言い聞かせて乗り越えようとする。
 ≪ここまで≫

 舞台中央奥の壁の上部に日本語字幕が表示されます。演技に関してはもう、何も言うことなし、です。「俳優」であり「語り部」であり「妻(女)」であり。シームレスかつ鮮明に変化。

 ユダヤ人虐殺について描いた舞台はいくつか拝見しています。たとえばSPAC『巨匠』もそうですよね。でもヨーロッパの白人が語るのを観たのは、おそらく初めてだったと思うんです。被害者であるフランス人女性が「彼ら(ナチス)と我々は同じ民族だ」「犯罪を共有することだ」と強く語るのは、大きな衝撃でした。なんという勇気。私は涙だだ漏れ状態でした。

 カーテンコールでブランさんは、観客の一人ひとりと話をするように、おだやかな笑顔で拍手に応えらっしゃいました。ブランさんと会話ができたと感じました。私は舞台にこういうことを求めているんだと思います。

 ここからネタバレします。

 苦悶の末にロベールの死を受け入れた、ちょうどその時、ロベールが生きているという情報が入ります。ダッハウから戻ってきた彼は骨と皮だけの、人間とは思えない姿になっていました。体重は38キロ。スプーン一杯のお粥さえのどを通りません。17日間の渾身の看病により、彼はよみがえります。「おなかが空いた」という一言で終幕。

 ドイツ人によるユダヤ人の大量虐殺を、人類(=自分たち)の罪だと言うフランス人とじかに出会えたことは、私の人生の財産になると思います。
 「ロベールは死ぬ間際になっても誰も摘発しなかった!」と妻は誇らしく語ります(ダッハウからパリへ向かう車中で、ロベールは遺言を話していました)。何かと犯人探しに熱心で、いざ突き止めたら罵声を浴びせかける日本人とは真逆です。

 ロベールとその妻がレジスタンス運動をしていたことは前半部分でわかります。彼らは夫婦でもあり同志でもあったんですね。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:ドミニク・ブラン 宮城聰

 宮城「俳優は崇高な仕事だと思いました。」
 ブラン「私もそう思います。」

 ブラン「この作品は2008年にスペインで初演され、フランスでは150回ほど上演し、その他ストックホルム、ローマ、ブラジルなど各国で上演しています。私がM役、演出家がD役になって読むうちに、これは一人の女性が夫を待つ話だとわかったので、演出家に一人芝居にして欲しいと依頼しました。出来る限り手軽な(身軽な)作品にして、世界中で上演したいと思いました。実際この舞台は、上演する土地で机とイス数脚を調達すればできます。」

 ブラン「この小説を選んだ理由は、まずマルグリット・デュラスがとても好きな小説家だから。『苦悩』はレジスタンス、恋愛、蘇生をあらわすもっとも美しいテキストだと思った。」
 ブラン「戦争や人間の残忍さは残念ながら普遍的なものです。女性が男性を待ち続けるということもまた世界共通です。」

 観客「この作品を上演するにあたって、もっとも心がけていることは何ですか?」
 ブラン「沈黙です。日本で、この空間で上演したことで、正統の、印象の強い沈黙を感じ、いつもよりあがってしまいました(笑)。」
 宮城「これまで『苦悩』を上演してきた会場の中で、楕円堂が最も小さい空間だそうです。」

 ブランさんは「できれば生涯この作品を上演し続けたい」ともおっしゃっていました。

≪京都、東京、静岡≫
出演:ドミニク・ブラン
演出:パトリス・シェロー ティエル・ティウ・ニアン 原作:マルグリット・デュラス ツアーマネージャー:アリス・プルシェール 照明:フレデリック・マルティ 音響:ファブリス・ノー 通訳:石川裕美 字幕:奥平敦子 翻訳:田中倫郎
【SPACスタッフ】舞台監督:山田貴大 照明:川島幸子 中野真希 音響:青木亮介 衣装メンテナンス:敦ジョンミン 制作:高林利衣 丹治陽 助成:アンスティチュ・フランセ 特別協力:東京日仏学院 協力:京都造形芸術大学舞台芸術センター 著作権代理:(株)フランス著作権事務所
一般大人4,000円/ペアチケット(2枚)7,000円/大学生・専門学校生2,000円/高校生以下1,000円
★SPACの会のほか、ゆうゆう割引、グループ割引、早期購入割引、リピーター・くちコミ割引などの割引料金があります。
http://www.spac.or.jp/11_spring/douleur
http://www.institut.jp/ja/evenements/10472

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2011年03月05日 12:10 | TrackBack (0)