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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2011年07月23日

新国立劇場オペラ『キッズオペラ2011「パルジファルとふしぎな聖杯」』07/22-24新国立劇場中劇場 

 新国立劇場が製作する子供向けオペラの新作です。『ジークフリートの冒険』『スペース・トゥーランドット』に続く第3弾ですね。
 衣裳も装置も豪華絢爛(⇒舞台写真)。もちろん生演奏ですので、こども(4歳から小学6年生)2,100円、大人(中学生以上)3,150円はお得です。上演時間は約1時間20分。

 開演前にロビーで出演者が子供たちにダンスを教えてくれますので(⇒みんなで踊ろう!「グレール・ダンス」動画)、これから観に行く方はぜひお早めに劇場へ。私は開演10分前に着いたのですが、ほとんど終わってました(涙)。開演20分前には着いた方がいいかも。

 ⇒CoRich舞台芸術!『パルジファルとふしぎな聖杯

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより ※ネタバレあり
 どこかの時代の、どこかの星。モン・サルヴァート王国の神殿の奥に、王家に代々伝わる聖杯と聖なる剣が納められている。この二つを合体すると不思議なパワーが働き、王国は平和を保っている。国王ティトレルは、忠臣アンフォルタスほか聖杯の騎士たちに聖杯と槍を守らせていたが、後継者が決まらぬまま他界。ティトレルの葬儀中に執り行った聖杯の儀式に黒魔術を使う邪悪なクリンゾールが仲間を引き連れて現れ、聖なる槍を奪い去る。アンフォルタスが聖なる槍で深手を負い床に伏していると、夢の中で「清き愚か者 現れて 我らの王となる」との預言を受ける。彼は、聖なる鳥、白鳥を射落した罪を咎められたパルジファルを、預言に関係するのではないかと思い立ち、聖杯の儀式に参加させる。すると、聖杯の覆いを取るごとに奇跡が起こり、白鳥の言葉がわかるようになったパルジファルと、聖杯のパワーで傷が治った白鳥のマグダレーナの間に特別な気持ちが芽生える。天の声によって聖杯奪回の使命に目覚めたパルジファルは、世界征服を企むクリングゾールが治めるモン・ディアーヴォロに攻め込む。魔法の誘惑にあい、危機一髪のところでマグダレーナに救われたパルジファルは、聖なる槍を奪い返し、槍のパワーでアンフォルタスを救う。喜ぶ聖杯の騎士たちをよそに、マグダレーナをうっかり置き去りにしたことに気づいたパルジファルは、廃墟と化したモン・ディアーヴォロに戻る。命を失った白鳥のマグダレーナを見つけると、彼女が大切な存在であったことに気付き深く悲しむ。しかし、聖杯と聖なる槍を合体させる聖杯の儀式を執り行うと、奇蹟が起こり、白鳥のマグダレーナは瞬く間に美しい王女の姿となって甦る。周囲は花々が咲き乱れ、一同、新王パルジファルの誕生と后マグダレーナとの結婚を喜ぶ。
 ≪ここまで≫

 山車のように移動して出てくる装置が豪華で、衣裳も1つずつが凝っていて眼福。久しぶりに聴いたオペラ歌手の歌はやっぱり美しいです。嬉しいわ~。
 でも演劇としての楽しみは残念ながら大きくはなかったです。演出よりも音楽を聴かせることを重視したんじゃないかしら。音楽はもちろん大切ですが、子供は飽きちゃいますよね。

 私は『ジークフリートの冒険』が一番好きだな~。美術(堀尾幸男)と衣裳(ひびのこづえ)で演劇的なイリュージョンをみせる演出だったんです。大人2100円だったのもありますが、メルマガ号外も出すぐらい。パンフレットも素晴らしかったんですよね~。今回は公演オリジナルの紙製うちわが付いていただけで寂しかった。また次の新作に期待します。

 ≪ここからネタバレします≫

 会場前にロビーで踊っていたダンスを、舞台上の出演者と一緒に観客も踊ります。豪華な衣装を着たオペラ歌手たちが、子供たちと積極的に触れ合ってくれるのは、やはりいいですね。

 お菓子の家がかっこ良かったです。アンサンブルの女性たちもセクシーですし。ああいう「ちょっとホラー」「ちょっとエロ」なことが子供には必要な気がします。たとえばこの作品みたいに。
 敵との戦闘で、白鳥のマグダレーナはパルジファルを守って盾になり、刺されて死んでしまいます。それを一瞬で見せたのが良かったと思います。いつだって致命的なことはあっという間に起こってしまうものですよね。

 指揮者(三澤洋史)が舞台下手前方の穴から出てきて挨拶したり、このシリーズに貫かれている遊び心はやっぱり素敵。ただ、カーテンコールはもっと面白くなるはずだったんじゃないかな~。狂言回し的な役割の2人(大きな魔法使いと良い小人)は、あまりうまく機能してなかったかも。言葉で説明することが多すぎます。

 赤い悪者クリングゾール(大森いちえい)が色んなクイズを出して盛り上げてました。答えは「赤いから」なんだけど、だんだん違ってくるので子供たちも飽きませんね。「ガンダムって知ってるかい?」は古いかもな~(笑・私は好きだけど)。
 ところであの槍のデザインってロンギヌスの槍に似ますよね~!こうやってアラフォーの私がすぐにエヴァンゲリオンを思い出しちゃったり、出演者がガンダムのネタを話したり。やはりアニメの浸透率は高いですね。

≪東京、高知、兵庫≫
【出演(15時の回)】パルジファル:所谷直生 クリングゾール:大森いちえい マグダレーナ:渡邉早貴子 アンフォルタス:押川浩士 グルネマンツ:大久保光哉 ユニコーン:宗方銀次、佐伯理沙 他
合唱:新国立劇場こどもオペラ・ヴァーカルアンサンブル(黒澤明子 前川依子 佐々木昌子 鈴木涼子 大木太郎 竹内公一 塩入功司 照屋睦) 管弦楽:新国立劇場こどもオペラ・アンサンブル(東京フィルハーモニー交響楽団メンバーによる)
台本・音楽構成・編曲 :三澤洋史(リヒャルト・ワーグナー舞台神聖祝典劇「パルジファル」、楽劇「ラインの黄金」より)指揮:三澤洋史 演出:三浦安浩 美術:鈴木俊朗 衣裳:半田悦子 照明:川口雅弘 振付:伊藤範子 舞台監督 :大澤裕 主催:新国立劇場
全席指定 / こども(4歳から小学6年生) 2,100円 大人(中学生以上) 3,150円
http://www.atre.jp/2011kidsopera/
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/20000492_opera.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年07月23日 10:40 | TrackBack (0)