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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2012年04月04日

モナカ興業『ファウスト』04/04-08 SPACE雑遊

 モナカ興業はフジノサツコさんの戯曲を森新太郎さんが演出される劇団です。今回はゲーテの「ファウスト」が原作なんですね。私は劇団初見です。

 SPACE雑遊をそのまま使った何もない空間をシャープな照明で染めて、怒涛のセリフ量で攻めまくる、シンプルで力強いお芝居でした。ファウスト役が意外にも・・・ネタバレなので自粛します(笑)。上演時間は約1時間35分。

 次回公演は10月、三鷹市芸術文化センターのMITAKA "NEXT" SELECTIONに参加されます。

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 悪魔に死後の魂を売った男ファウスト(時にはハインリヒ)と、彼が愛した女性マルガレーテ(劇中ではグレートヘン)のエピソードです。セリフと演技だけで何もかも表現すると言っていい、ザ・演劇な作品でした。相良守峯さんの訳はかなり古いものらしく、言葉は難しい目です。最初につまづくとつらいかも。私は「このまま(の演出で)最後まで続くのかしら・・・?」という興味が最初からずっと持続させられたので、退屈せずに観続けられました。

 最後の最後に「ファウスト」という古典作品や、ある男女の悲恋という具体的なストーリーなどから離れた、演劇の魔法が見られた気がして、終演後しばらくの間、席に座ったまま余韻にひたりました。

 ここからネタバレします。

 ガランとした空間に、肩に届く長さの茶髪の女性(渡辺樹里)が登場。手にはコンビニでもらうタイプの白いビニール袋。灰色タイツにがっしりした黒いショートブーツ、紫色の綿のパーカーにふんわり素材ミニスカート、その上にちょっとかしこまったデザインの黒いジャケットを着ています。なんと彼女がファウスト役でした。メフィストフェレスやマルガレーテなど他の役は、他の役者さんが代わる代わる演じますが、ファウストは渡辺さんだけが演じ続けました。

 なぜ女性が男性役を演じるのか理由が分からなかったのですが、最後に渡辺さんがマルガレーテ役を演じた時に、ハっとしたんです。演出意図からははずれていると思いますが、私は、悲劇的結末を迎えたファウストとマルガレーテの恋が、渡辺さんの体の中で成就したように感じました。人間は肉体がある限り、愛する人とひとつになることはできません。人間は絶対的に孤独な存在です。でも演劇なら、ひとりの俳優の中に愛し合う2人を共存させることができる。演劇が生み出す奇跡のような瞬間を味わえました。

 ※「この作品は獄中のマルガレーテの回想だった」という解釈もあるようです。そういえばSPACE雑遊のコンクリート壁も、劇場入り口のドアも牢獄っぽいですね。ドアの取っ手のデザインがかっこいいです。

モナカ興業#11
出演:遠藤祐生 木津誠之 佐治静 澁谷佳世 杉森裕樹 吉原真理 渡辺樹里 長瀬知子
作/ゲーテ 翻訳/相良守峯 構成・脚本/フジノサツコ 演出/森新太郎 照明/佐々木真喜子(ファクター) 音響/中村光彩 衣裳/koco 舞台監督/鈴木沙織 グラフィックデザイン/やまねまい 宣伝写真/STUDIO DE VUE 舞台撮影(写真)/小尾幸春 制作/長瀬知子・蒲生みずき 企画制作・主催:モナカ興業
【発売日】2012/03/06 日時指定・全席自由 前売・当日共 2800円 金曜昼割り☆ 2500円
http://www.k4.dion.ne.jp/~monaka/sub11.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年04月04日 23:43 | TrackBack (0)