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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2012年05月09日

Bunkamura『シダの群れ 純情巡礼編』05/04-27 Bunkamuraシアターコクーン

 岩松了さんが作・演出される任侠ものの第2弾(⇒第1弾レビュー)。第1弾から出演されているのは風間杜夫さんだけで、キャストは一新されています。物語は第1弾の続きではありますが、観ていなくても大丈夫じゃないかと。

 観終わって「彼の行動の動機は?」「あのラストはなぜ?」などと悶々と考えていたのですが、タイトルの『純情巡礼』に答えがあるような気もします。上演時間は約2時間55分(途中休憩15分を含む)

 ロビーで販売中のパンフレットに「拝啓 岩松了様―後輩劇作家からのメッセージ―」というページがあり、とても面白かったです。

 ⇒初舞台の小池徹平さんのインタビュー:
 ⇒CoRich舞台芸術!『シダの群れ 純情巡礼編

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより、(役者名)を追加。
 前作の舞台「志波崎組」は跡目争いをきっかけに、「増岡組」との抗争を激化させ、今は壊滅状態に陥っている。友好関係にある「矢嶋組」の若頭・坂本(堤真一)は、増岡組組長とその女・ヤスコの狙撃に失敗した部下・泊(小池徹平)を始末する役目を買って出たが、かわいい妹・可奈子(倉科カナ)の恋心を思い、尊敬する志波崎組元幹部・水野(風間杜夫)のもとに彼を預ける。
 だがこの行動はやがて、矢嶋組と増岡組、そして志波崎組との関係をも徐々に捻れさせていく。
 移ろう人間関係と、その移ろいの根拠のなさに揺れる男たち。その行方に待つものとは―。
 ≪ここまで≫

 アーチが連なる美術。バーカウンターなどの大道具がスライドして場面転換します。登場人物は現代人(ヤクザ関係)で、皆スーツやドレスなどの現代服で演技されますが、実は抽象的な要素が多いです。役者さんは現代日本人を演じているはずですが、実は役者さんも、登場人物さえもわかっていない何かが、役人物(○○役を演じる俳優という人間)を動かしているように見えました。舞台上にいる人(=役者さん)が何層にもなっているというか、存在に嘘(=虚構)がいくつも重なっているような感覚です。

 「志波崎組」「増岡組」「矢嶋組」の3つの組の名前が覚えられなくておろおろしつつ(汗)、でも瞬間を楽しむよう心がけて鑑賞しました。相変わらず私には岩松さんの作品を「理解する」ことはできないのですが、通り過ぎて行く言葉、風景の中に、忘れたくない刺激的な瞬間があって、それを自分なりに感じ取って反芻することが、他では味わえない体験になります。今回はその瞬間が前作に比べると少なかったですね。

 女優さんは3人出演されており、残念ながら私には「がんばってる」感が強すぎて、色気まで到達していなかったような。まだ公演は始まったばかりなので、これから変化していかれることと思います。
 増岡組組長(石住昭彦)と会計士(吉見一豊)のコンビがすっごく面白かった!演劇集団円の方々ですね。お2人が出演されていたマーティン・マクドナー作品(⇒)を思い出しました。石住さんは岩松さん作・演出の『国民傘』でも良かったですよね~。
 坂本の部下で、泊と仲がいい吉岡を演じた太賀さんも印象に残りました。増岡組組長の息子を演じた清水優さんは役柄にぴったりだった気がします。

 ここからネタバレします。セリフなどは正確ではありません。

 第1弾の最後に水野(風間杜夫)は森本(阿部サダヲ)に足を刺されますが、死んではいませんでした。タカヒロ(江口洋介)を殺すように指示を出したのは水野だったんですね。
 坂本(堤真一)とヤスコ(松雪泰子)のラブシーンはコミカルで良かったですが、もっと色っぽくなって欲しいな~。

 坂本に振られて立ちすくむヤスコに向かって、看護婦(市川実和子)が「今から教会に行くの」と話しかけ、ギターの生演奏があって、終演。唐突な結末です。看護婦は愛していた水野(風間杜夫)が坂本に刺されたのに、なぜ微笑みを浮かべて何事もなかったように「教会に行く」のかしら…。笑っていたのだから「水野は死んでいない」のか、教会で水野のお葬式があるのか…。
 水野が坂本との刃物による決闘を望んだのは、自殺するためだったのかもしれないですよね。そこも謎のままですが、『純情巡礼』の意味からすると、水野はカタギになるぐらいならヤクザのままで死にたかったのかな、とも思います。幼い頃から縁がある坂本に何かを教えたかったのかもしれません。

出演:堤真一 松雪泰子 小池徹平 荒川良々 倉科カナ 市川実和子 石住昭彦 吉見一豊 清水優 太賀 鈴木伸之 深水元基 浅野彰一 風間杜夫 ギター演奏:村治佳織
脚本・演出:岩松了 美術:伊藤雅子 照明:沢田祐二 音響:藤田赤目 衣裳:山下和美 エアメイク:宮内宏明 擬闘:栗原直樹 歌唱指導:伊藤和美 舞台監督:福澤諭志 演出助手:坂本聖子 劇場舞台技術:野中昭二 票券:佐久間友規子 チーフプロデューサー:加藤真規 プロデューサー:松井珠美 大宮夏子 企画・製作:Bunkamura
【休演日】5/7,14,21【発売日】2012/02/18 S¥9,500 A¥7,500 コクーンシート¥5,000 (税込)
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/12_shida/index.html
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/12_shida.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年05月09日 13:00 | TrackBack (0)