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2012年05月31日

箱庭円舞曲『どうしても地味』05/16-27駅前劇場

 古川貴義さんが作・演出される箱庭円舞曲の新作です。箱庭円舞曲は昨年のCoRich舞台芸術まつり!2012春・グランプリ受賞団体。初日に伺いました。

 駅前劇場であることを忘れるぐらい、空間をうまく使った舞台美術でした。まさに“箱庭”。そしてがっつりストレート・プレイを堪能しました。充実の2時間5分でした。

 本公演の初めて大阪ツアーを行います。もうすぐ開幕で完売間近だそうですので、関西の方はどうぞお見逃しなく!⇒チケット予約

 ⇒CoRich舞台芸術!『どうしても地味

 ≪あらすじ≫
 村の人々の共同スペースになっている、お寺の座敷。純日本製線香花火の製作・販売でひと儲けした人々は、今年も継続するつもりだったのだが…。
 ≪ここまで≫

 今よりもっと窮屈になった日本の過疎の村の、不格好で滑稽な人間模様が描かれました。あっという間に常識化する過激な社会制度や、いつの間にか忘れられ、失われる日々の喜びを、地味目の会話にギュっと詰め込んだ現代劇です。シーンごとの密度が高く、照明の切り替えだけで時間を越えて場面転換するのが鮮やか。小気味よい切れ味でした。(ツイートより部分引用)

 畳の部屋を斜めから見せる建て込み方の具象舞台でした。下手がお寺の庭で、ちょうど中央付近に縁側が位置します。席によっては顔や演技が見えないこともありますが、かえってリアルな会話を覗き見している臨場感がありました。巧いな~と思います。
 役者さんは皆さんが、場面を成立させるために、役人物としてストイックに存在しているように見えて感心しました。

 ここからネタバレします。

 中国人排斥運動が盛り上がり、日本では中国人差別が横行。中国人とわかると投獄されたりします。そんな過激なナショナリズムに便乗して「純日本製」線香花火はヒット。外国人を排斥するほど日本人の人口は多くないはずで、日本の文化・伝統は現在や未来の流行に上書きされていっています。はかない線香花火のともしびで消えゆく日本を象徴したのでしょうか。

 たばこが違法になり、闇たばこが横行。僧侶(小野哲史)は市民からワイロとしてたばこを要求します。弱みに付け込んで人妻にも手を出す悪徳僧侶は、パートナー(内縁の妻?:笹野鈴々音)にチクられて警察に捕まりました。夫(須貝英)に相手にされず欲求不満になった妻(神戸アキコ)は、逆上して花火工場に放火してしまいます。その妹も中国人とのハーフだったことがバレて、火事の時に芋づる式に連行されました。

 僧侶の弟子(内縁の妻?)が寺の後を継いで法事を取り仕切るようになります。男物の着物がぶかぶかで、ロングヘアーもひっつめず、どこから見ても僧侶失格の格好ですが、ちゃっかり寺に居座っている様子。ああ、こうやってなし崩し的に色んな事が変化しながら続いて行くんだな~と思いました。お寺が空き物件になるよりは、彼女が留まっていた方がいいかもしれません。長いスパンで考えると、日本語に「古語」や「現代語」があるのも、節操のない変更や新語(流行語)の発明のせいですよね。過去も現在も、未来も不確かなものだと思いました。

In a word, you get bored of everything.
≪東京、大阪≫
出演:小野哲史 須貝英 爺隠才蔵 片桐はづき 菊池明明(ナイロン100℃) 木下祐子 磯和武明 神戸アキコ(ぬいぐるみハンター) 小島聰(ブルドッキングヘッドロック) 笹野鈴々音
脚本・演出:古川貴義 舞台美術:稲田美智子 照明:工藤雅弘(Fantasista?ish.) 音響:岡田 悠(One-Space) 舞台監督:鳥養友美 衣装:中西瑞美 演出助手:村田鈴夢 労組:山内翔・井上裕朗 宣伝美術:Box-Garden House 題字:須山奈津希 記録写真:鏡田伸幸 制作:安田有希子 企画製作:箱庭円舞曲
【休演日】2012年5月22日(水)【発売日】2012/04/15 前売:3,000円/当日:3,500円(全席自由) 学生券:2,500円(各回枚数限定)※劇団前売のみ取扱・受付にて要学生証提示
・16(水)19:30の回は、初日割引 前売:2,800円 / 当日3,300円
http://www.hakoniwa-e.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年05月31日 14:10 | TrackBack (0)