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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2012年07月17日

テアトロ・マランドロ『春のめざめ』06/30-07/01静岡芸術劇場

 コロンビア出身でスイスでご活躍中の演出家オマール・ポラスさんによる『春のめざめ』は、「ふじのくに⇔せかい演劇祭2012」参加作品です。⇒記者発表の写真レポート

 ポラス作品はSPAC『ドン・ファン』、SPAC共同制作版『シモン・ボリバル、夢の断片』を拝見したので、個人的には3度目。フランク・ヴェデキント作『春のめざめ』は戯曲がすごく好きで、今回はじめて上演を観られて嬉しかったです。演技も演出もとても面白かった。上演時間は約1時間55分。

春のめざめ―子どもたちの悲劇
フランク ヴェデキント
長崎出版
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 ⇒CoRich舞台芸術!『春のめざめ

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
 「赤ちゃんはどうやったらできるの?」
 性にめざめ始めた子どもたちの悲劇
 「子どもたちの悲劇」というサブタイトルを持つ本作は、性にめざめ始めた10代の少年少女の姿を赤裸々に描くと同時に、彼らを取り巻く無理解な大人たちや、19世紀末の抑圧的な道徳観を痛烈に批判した社会風刺劇です。ストレートな性描写、10代での妊娠・中絶死、暴力、やがて起こる友の自殺――。その過激さゆえに発表当時(1891年)のドイツでは社会問題にまで発展し、以後1906年まで上演を禁じられていたという、いわくつきの作品です。ブロードウェイミュージカルにもなった本作を、ポラスがどのように演出するのかに注目です。
 ≪ここまで≫ 

 舞台中央から下手にコンクリートの壁。その奥には森の木々。壁の前の床には土が敷かれています。俳優はいわば戯画的な演技で子供たち、大人たちを代わるがわる演じます。衣裳とヘアメイクは映画「アダムス・ファミリー」みたい。
 勉強できない子を落第させたり、世間体を守るために堕胎させたり、大人が子供の命を奪うエピソードが連続する残酷な物語ですが、過激だったり幻想的だったりするヴィジュアルによって、出来事の奥底や外側を豊かに想像させてくれました。役者さんもすごく達者な方々で満足。

 ここからネタバレします。

 両親が息子メルヒオールを糾弾する場面は、白黒の無声映画を模した演出でかなりコミカル。でも起こってることは非常に恐ろしいです。
 自殺したモーリッツが眠る墓地で、出演者が次々とかつらを脱いでいくのには驚きました。完全に、物語の世界の外側へと出て行く演出ですよね。具体的にどういう意味なのかはっきりとはわからないですが、私は(物語の中の)窮屈な世間からの開放や、架空の物語と今ここにいいる出演者(および観客)との出会いなどと解釈しました。


 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:オマール・ポラス 宮城聰 ほか(女優さん1人)

 ポラス:この作品は長い、長い、詩だと思う。詩的な部分をあらわすために絵を使った。壁の絵の文字はCondemned to Agony。

 ポラス:人生は「楽しい苦しみ」だと私は思っています。
 宮城:座右の銘にしたいぐらいの言葉ですね。


SPAC・静岡県舞台芸術センター ふじのくに⇔せかい演劇祭2012
出演:ソフィー・ボット、オリヴィア・ダルリック、ペギー・ディアス、アレクサンドル・エテーヴ、アドリアン・ジギャクス、ポール・ジャンソン、ジャンヌ・パスキエ、フランソワ・プロー、アンナ=レーナ・シュトラーセ
脚本:フランク・ヴェデキント 演出:オマール・ポラス 翻訳・翻案:マルコ・サッバティーニ、演出助手:ジャン=バティスト・アルナル、作曲・音楽監督:アレッサンドロ・ラトチ、美術:アメリー・キリツェ=トポール、衣裳:イレーヌ・シュラッテール、衣裳助手:アマンディーヌ・リュチャマン、衣裳製作:セシリア・モッティエ、かつら・メイク:ヴェロニク・グエン、かつら・メイク助手:ジュリー・デュリオー、技術監督:オリヴィエ・ロレタン、舞台監督:ジャン=マルク・バッソーリ、小道具:ローラン・ブーランジェ、音響デザイン:エマニュエル・ナッペー、照明デザイン:マティアス・ロッシュ、制作:フロランス・クレットル、広報:サラ・ドミンゲス、ロジスティクス:リュシー・ゴワ、会計:ロサンジェッラ・ザネッラ 製作:テアトロ・マランドロ 共同製作:フォロム・メイラン劇場、エスパス・マルロー シャンベリー・サヴォワ国立舞台、シャトーヴァロン国立文化創造発信センター 助成:ジュネーヴ市、ジュネーヴ共和国・ジュネーヴ郡文化部、メイラン市、プロ・ヘルヴェティア スイス文化財団、ロトリー・ロマンド、メイラン市文化・スポーツ・社会事業推進財団、ハンス・ヴィルスドルフ財団、レーナールト財団 後援:スイス大使館 ※テアトロ・マランドロはフォロム・メイラン劇場のレジデントカンパニーです。
SPACスタッフ 舞台監督:村松厚志 舞台:市川一弥 渡辺明 永野雅仁 照明:樋口正幸 村松彩香 音響:西沢理恵子 大塚翔太 衣裳:駒井友美子 畑ジェニファー友紀 通訳:石川裕美 字幕・操作:堀切克洋(酒寄進一訳による) 制作:佐伯風土 岡野彰子
【発売日】2012/04/15 一般大人:4,000円/大学生・専門学校生2,000円/高校生以下1,000円
☆SPACの会特典のほか、ゆうゆう割引、早期購入割引、みるみる割引、ペア/グループ割引料金があります。
http://www.spac.or.jp/f12printemps.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年07月17日 19:31 | TrackBack (0)