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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2012年07月19日

非戦を選ぶ演劇人の会・ピースリーディングvol.15『私(わん)の村から戦争が始まる 沖縄やんばる・高江の人々が守ろうとするもの』07/18-19全労済ホール/スペース・ゼロ

 非戦を選ぶ演劇人の会が毎夏おこなっているピースリーディング。今年は沖縄北部の高江の今を伝えてくださいました。リーディングが約1時間50分、休憩15分を挟んで演奏が2組、最後にトークがあり、終演までで約2時間50分ほどだったと思います。

 初日は当日券が多数出る盛況で満席でしたが、明日14:00の回は半数ぐらいしか予約がないと坂手洋二さんがおっしゃっていました。お時間ある方はぜひ。
 最後のトークに出演された琉球新報の記者さんが、「沖縄の米軍基地とそれにまつわる諸問題の全てが、この演劇で語られていた」とおっしゃっていました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『私(わん)の村から戦争が始まる

 ≪あらすじ・解説≫ 公式サイトより
 沖縄県、東村高江(ひがしそんたかえ)は、沖縄本島北部の「やんばる」と呼ばれる豊かな森に囲まれた、約160人が住む小さな集落です。
 このやんばる地方には広大な在日アメリカ軍施設「北部訓練場」があり、隣接する高江集落でも昼夜問わず軍用ヘリコプターが上空を飛び交っています。
 1995年、日米両政府による「SACO合意」に基づいて、米国は北部訓練場の約半分を返還することを約束しました。沖縄の負担は軽減されるはずでした。
 ところがある日、高江集落を囲むように、米軍のヘリパッド(ヘリコプター離着陸帯)を新たに6つ、増設する工事が始められました。北部訓練場一部返還の条件として、返還される部分にあるヘリパッドを高江に移設するということが取り決められたためです。話し合いを求める住民の声を無視して計画は進められていきました。
 2007年の夏、このままでは高江に人が住めなくなる!と考えた高江の住民たちは、工事現場の入り口で、座り込みを始めました。
 ≪ここまで≫

 日本国内の米軍基地の75%が沖縄に集中していることは、情報として知ってはいました。でも、やっぱり人の声と体を通して聴くと全然違います。私の場合、自分に起こった出来事になるから、無視できなくなるんですよね。語られたことが事実なのだと素直に信じられるのは、この企画に参加されている演劇人の方々の普段のお仕事を拝見して、信頼をしているからでもあります。

 戦後十数年経ったころに沖縄で実際に起きた、小学校に米軍機が突っ込んだ事故の惨状は、聴いているのがものすごくつらかったです。米軍兵による女児を含む婦女へのレイプおよび暴行事件の、なんと多いこと。しかも事実上の治外法権なんですね。日本、なんという国…。

 辺野古への基地移設に反対するCoccoさんのドキュメンタリー映画があります。昨年観たお芝居(沖縄の基地問題が題材です)のレビューにも載せてますが、再掲します。おすすめです。

大丈夫であるように-Cocco 終らない旅- [DVD]
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 原発建設反対デモを“日課”のように実行してきた祝島の方々のドキュメンタリーもあります。高江の方々が望む、基地のない、豊かな自然とともにある生活も、こんな感じなのかなと想像しました。

祝(ほうり)の島  原発はいらない!命の海に生きる人々 [DVD]
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 ここからネタバレします。

 オスプレイと呼ばれるヘリコプターと戦闘機が合体したような兵器は、会場であるスペース/ゼロ(最大584席)の中にすっぽり、ピッタリと入るぐらいの大きさだと言われて、しばし呆然としました。デカすぎる…。詳しい説明は省きますが、「プロペラが簡単に壊れる構造になっている」と技術者が言っていたのは、つまり、乗務員は助かるけど、大破して飛び散ったプロペラの破片による負傷者のことは考慮していないということです。
 「軍は市民を守らない」というセリフが何度か繰り返されました。それは沖縄戦の際に日本兵が防空壕から一般市民を追い出したエピソードからも明白ですし、まさに今、日本の空(それも150mという低空)を飛ぼうとしている米国の兵器のずさんな設計にもあらわれています。

 高江から武器を積んだ兵器が飛び立つことが嫌だという気持ちが、刺さりました。この公演のタイトルにもなっていますね。アルジャジーラは沖縄を「悪魔の島」と呼んだそうです。米軍の戦闘機は、沖縄から、中東へと飛んでくるから。ベトナム戦争の時も基地で働く沖縄の人が戦闘機の整備(?)をしていた、と。私も、日本から戦争が始まるのは、嫌だ…。

 ・演奏1:ひらたよーこ/パーカッション:大光亘

 ・演奏2:HiRO(唄者)


 ≪トーク≫ 聴いてメモできたことのみです。
 ゲスト(舞台下手から):坂手洋二 与那嶺明彦(琉球新報記者) 糸数慶子(衆議院議員) 宮城康博(元名護市議) 

 与那嶺:オスプレイは本土上空も飛ぶのです。沖縄だけじゃない。

 糸数:第二次世界大戦の本土決戦では沖縄が最初に戦場になりました。そして沖縄の人々の4人に1人が亡くなりました。日本に復帰して40年。今またオスプレイを配備しようとしている。いつも沖縄が切り捨てられている。オスプレイ配備に反対している日本の知事は、沖縄県知事以外だと6人しかいません。高知、山口、和歌山など、飛行ルートに入っているところだけ。

 宮城:高江は沖縄からも名護からも遠くて、住んでいる人も少ない。なのに10年以上、反対をしてきて、実際にヘリパッド建設を止められているのは凄いこと。でも今年7月10日に工事が再開されました。2年前、真鍋防衛局長は「オスプレイが配備されるかどうかははっきりしていない」と説明していたのに、本当はすでに配備が決まっていたことがわかったんです。
 坂手:そうやってずっと我々を愚弄し、だましてきた。

 与那嶺:沖縄はいつも「基地か経済か」の二項対立ばかりが目立って報道されますが、実際は沖縄のGDPで米軍基地が締める割合は5%です。それに、基地もいらないし経済的にも豊かに暮らしたいと、両方を求めて何が悪いのかと思います。


出演:北直樹、KiNoMi、きゃんひとみ、ゴリ(18日のみ)、沢田冬樹、重田千穂子、高橋長英、高山正樹、津嘉山正種、寺田路恵、中川安奈、西村壮悟、比嘉モエル、藤木勇人、蒔田祐子、みやなおこ、宮城康博、山谷典子、ゆかわたかし、ほか、阿仁屋美峰、新井純、市毛良枝、采澤靖起、枝元萌、大沢健、大鷹明良、大谷亮介、大多和民樹、沖直美 HiRO
脚本:清水弥生、瀬戸山美咲、坂手洋二 演出:鵜山仁 演出補:永井愛、美術:加藤ちか、照明:賀澤礼子、音響:秦大介、舞台監督:北条孝、宣伝デザイン:石原燃、制作:福島明夫・高橋俊也、広報:松田美由紀 協力:ポスターハリス・カンパニー、ヘリパッドいらない住民の会、CoRich舞台芸術! 主催:非戦を選ぶ演劇人の会  特別協賛:全労済ホール/スペース・ゼロ
【発売日】2012/06/27 一般1500円、中高生1000円、小学生以下500円
http://www.hisen-engeki.com/


※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年07月19日 01:24 | TrackBack (0)