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2012年11月06日

【インタビュー】韓国ミュージカル『ウェルテルの恋』主演チョン・ドンソクさん

 韓国ミュージカル『ウェルテルの恋』プレスツアーに参加して、日本公演に主演される2人の韓国人俳優と、演出家にインタビューをしてきました。まずはチョン・ドンソクさんです。8名ほどの記者からの質問に次々と答えてくださいました。

 ドンソクさんは『ウェルテルの恋』で来日する前に、シアタークリエ5周年記念コンサート『ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL』にゲスト出演されます。『エリザベート』でルドルフ役を演じていらしたので、日本公演でトート役だったマテ・カマラスさんと『闇が広がる』を歌われるそうです。『ウェルテルの恋』の前にドンソクさんの歌声を聴けるチャンス♪ 

【写真:チョン・ドンソクさん(c)ぴあ】
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 ●ミュージカル『ウェルテルの恋 ~原作:ゲーテ「若きウェルテルの悩み」』
  期間:2013年1月11日(金)~26日(土) 全20回公演
  会場:赤坂ACTシアター
  韓国語上演。日本語字幕付き。全席指定9,800円。
  一般発売日:2012年11月9日(金)10:00より
  ⇒公演公式サイト
  ⇒公演公式ツイッター

 ・しのぶの演劇レビュー内関連リンク
  ⇒『ウェルテルの恋』プレスツアー参加報告
  ⇒チョン・ドンソクさんインタビュー(このページです)
  ⇒キム・ダヒョンさんインタビュー
  ⇒演出家キム・ミンジョンさんインタビュー
  ⇒韓国公演初日レビュー

■ドンソクさんが語る『ウェルテルの恋』の魅力

―『ウェルテルの恋』は韓国で幾度も再演されています。これだけ韓国人を惹きつける魅力は何だと思いますか?
ドンソク:韓国には海外のラインセンス・ミュージカルはたくさん入って来ています。『ウェルテルの恋』は韓国オリジナルの創作ミュージカルで、その中でもドラマ性、音楽性が素晴らしいので、長年支持されているのではないでしょうか。観客が観て「あ、自分の話だ」と共感できるストーリーが、一番の魅力のポイントではないかと思います。

―小説『若きウェルテルの悩み』は、日本では高校生などの若者に読まれています。読んだ感想を教えてください。
ドンソク:日本では高校生も読むんですね。原作が受け入れられていると知り、ちょっと安心しましたし、期待も高まりました。小説は読者によってだいぶん違う印象を持つと思います。愛の痛みを経験済みの方は憂鬱な心で読むかもしれません。でも面白い要素もあるんです。小説は敷居が高いし設定が難しいですが、ミュージカルには接近しやすい、近づきやすい要素がたくさんあります。色んな日本の皆さまに共感して頂ける作品になるのではと思います。

―『ウェルテルの恋』で一番観て欲しい場面、好きな場面は?
ドンソク:いいシーンばかりなので、みんな集中して観ていただきたいんですが、特に最初の音楽(Overtune)ですね。個人的によく聴く部分でもあります。ウェルテルの幸せ、悲しみが一気に聴ける、最初のつかみの部分が非常に気に入っています。

【写真:チョン・ドンソクさん(c)ぴあ】
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■オペラ歌手が夢だった

―ドンソクさんはオペラ歌手を目指して声楽科に入学し、今も在学中です。最初にクラシックの道を選ばれた理由は?
ドンソク:(韓国の)ほとんどのクラシック専攻者がそうであるように、私も教会の合唱団の指揮者の先生から影響を受けて、この道に進もうと思ったんです。K-POPの歌手になるという夢は全くなかったですね。いわゆる歌謡曲はあまり聴いたことはありませんでしたし、今もクラシックを好んで聴く傾向にあります。

―オペラ界からミュージカル界へ進んだドンソクさんにとって、ミュージカルはどんな存在ですか?
ドンソク:幼い時はヴェルディー、大きくなってからはモーツァルトを歌っていました。声はハイ・バリトンです。オペラからミュージカルに進んで、終わりのない芸術をずっと続けているという印象があります。ミュージカルは歌いながら演技をするという深い側面があるので、やはり今も芸術という道程の真っただ中にあると思っています。ミュージカルは続けていきたい。ミュージカルは私の人生です。


■今は演技に関心がある

―オペラ歌手からミュージカル俳優への転向は簡単ではなかったのでは?
ドンソク:もともと私は歌を志していたので、ミュージカルでも歌を生かそうと、さまざまな努力をしてきました。でも最近は演技に関心を持っていて、楽しく表現しようと思っています。学校では声楽を専攻しましたから、専門的な演技の教育を受けたことはありません。でも先輩から「作品が最高の先生」という、すごくいい言葉を教わりました。実際、作品を作りながら、演出家の先生や先輩から本当にたくさんのことを学びました。今も作品に携わりながら演技を磨いています。
 ミュージカルは演技と歌を一緒に表現できるのが素晴らしいです。オペラは敷居が高くて、意味もテーマも壮大なものが多いですが、ミュージカルは言説的で、親近感があって、観客の皆さんと接近しやすい芸術だと思います。

―演技に関心があるとのことですが、この作品で特に取り組んでいることはありますか?
ドンソク:ウェルテルは悩み悲しむキャラクターです。悩んだり、しんどいと思う時、人間は自分の中でどこが問題になっているか、わからないものです。人によって心が痛かったり、お腹が痛かったりと、だいぶん違いますしね。
 『ウェルテルの恋』では、「僕自身が悩み苦しむ時はどういう状態になるんだろう」と今一度確認して、演技に反映できるようにしました。自分がこれまで表現しきれていなかった感受性を、舞台の上で表す機会になりそうです。自分にとってのターニングポイントと言える、大切な作品になるのではないかと思います。


■尊敬する俳優はリュ・ジョンハンさん

―尊敬している、目指している先輩の俳優は?
ドンソク:やはりリュ・ジョンハンさんです。一番の憧れの存在ですね。こんなこと言うと、やきもちをやく先輩がいるかもしれませんが(笑)。ジョンハンさんはご自身の存在やスター性をすごく長い間、ずっとずっと守り続けていらっしゃいます。それは人間にとってとても難しいことです。ジョンハンさんと2人で会う時はプライベートのことも話しますが、80%はミュージカルの作品について話し合っています。


■「ウェルテルは私がやりますので、クオリティーが高いですよ!」

―日本のファンにドンソクさんご自身のアピールをしてください。
ドンソク:これまで日本に進出した作品もいいものばかりだったんですが、今回の『ウェルテルの恋』には私が出ますから、クオリティーが高いですよ!(笑) 観客の皆さんが受け入れてくださる可能性は高いと思います。韓国の俳優は歌も上手いし演技も優れています。観に来ていただければ、その実力をおわかりいただけると思います。ぜひ観に来てください。

【写真:チョン・ドンソクさん(c)ぴあ】
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■初恋は6年間の片思いだった

―主人公ウェルテルを演じる上で大切にしていることは?
ドンソク:『ウェルテルの恋』をやりながら初恋を思い出すことが非常に多かったです。私自身は、純粋で何も知らなかったピュアな心を生かしたいと思っています。
 ウェルテルには悲劇的な結末が待っています。カップルで観に来られる方が多いと思うんですけど、観終わった後には、隣りにいる恋人が自分にとってどんなに大切で、貴重であるかを再び認識して、劇場をあとにしていただきたいと思っています。

―初恋を思い出す…ということは悲しい思い出なのでしょうか?
ドンソク:ええ、そうです。初恋はすごく悲しかったです。高校2年生から軍隊に行く直前まで、ずっと思いを寄せていた方がいました。6年間の片思いですね。利己的というか自分勝手というか、相手からの絶対的な愛を求めていた初恋だったと思います。
 『ウェルテルの恋』の本を読みながら「わ~、自分に似てるなぁ」と思ったことが何度もあったんです。ウェルテルとすごく似た経験をしたこともあります。だからウェルテルというキャラクターを理解し、共感できました。

―軍隊に入る前というと…そんなに昔じゃないですね?
ドンソク:はい、昔じゃないです(笑)。
 ※ドンソクさんは1988年生まれ。現在24歳です。⇒韓国のウェブサイトより


■ニックネームは“ミュージカル界のカン・ドンウォン”“ドンソク王子”

―ミュージカル界のカン・ドンウォンと呼ばれていることを、どう思われますか?ドンソク王子と呼んでいる日本人もいます。
ドンソク:前からちょっとは聞いていたんですが、非常に恐縮しておりまして、いいのかな…と思っています。“ドンソク王子”はお気に入りです(笑)。

―実際、とても王子様っぽいですよね。意識して演じていらっしゃるのですか?それとも昔から?
ドンソク:この1年間ずっと王子の役を演じておりますので、無意識にそういった部分が表現されてしまっているのではないかと思います(笑)。


■王子様イメージから脱却する役に挑戦したい

―『ウェルテルの恋』の次の舞台出演は?
ドンソク:次の舞台はまだ調整中です。やりたい作品はたくさんあります。先ほどのご質問にもあったように、私には王子のイメージがかなり付いているんですね。それから脱却できるようなキャラクターに挑戦したいと思っています。たとえば意外性のあるもの。殺人を犯すとか、結末が反転するものとか、そういうものにぜひ挑戦したい。

―ミュージカル以外でもご活躍ですね。
ドンソク:ドラマや映画は演技の部分がミュージカルとは違うんです。たとえば表情や視線の向け方など。自分の経験のためにも是非挑戦したいと思っています。ストレート・プレイには1度出演して、たくさん勉強ができました。もともと歌をやってきたので、歌のない演劇をすることによって、逆にミュージカルの大切さに気づくことができました。また機会があればぜひ出たいです。

【写真:チョン・ドンソクさん(c)ぴあ】
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■運動もゲームも好き

―舞台出演が連続していてお忙しいですね。
ドンソク:この前まで『二都物語』のチャールズ役を演じてましたので、『ウェルテルの恋』のはじめの方の稽古にはあまり参加できませんでした。『二都物語』出演中にウェルテルのキャラクターを把握して、終わった後から具体的に作りあげていきました。ここ1年は『エリザベート』、『二都物語』、『ウェルテルの恋』と演じ続けていたので、1年間ずっと稽古してきたという印象があります。

―ストレス解消法は?
ドンソク:ストレスがたまった時は、より悲しいことをしなくちゃいけないとウェルテルが教えてくれました。ウェルテルを演じながら「うわ、しんどいなー」と思うことが、ストレスの解消になるんです。人間は避けてはだめなんだと教わりました。

―プライベートの時間にやりたいとは?
ドンソク:運動をしたい(笑)。ゲームも好きなので、ゲームもたくさんしたい。たとえば「スター・クラフト」(韓国の国民的コンピューターゲーム)とか。僕はすっごく上手いですよ。時間があればアウトドアもインドアも全部まぜてやるタイプです。歩きまわるのが好きなので、時間さえあれば日本でたくさん歩いて遊びたいと思います。


■日本のファンについて/日本でやりたいこと

―日本のファンのことをどう思っていらっしゃいますか?
ドンソク:日本のファンの皆さんは韓国のファンに比べて慎重で、ドドっといきなり押し寄せて来るのではなく、少し遠いところから、見守りつつ接近してこられます。最初は不思議に思っていたんですが、非常に大切に、慎重に近づいてきてくれるので、自分自身が宝物のような貴重な存在だと思わせてくれるんです。それが日本のファンの皆さんだと思います。

田代:日本に来るのは初めてですか?日本でやってみたいことはありますか?
ドンソク:日本は初めてです。心の底から、日本で寿司を食べてみたい。韓国とどれだけ味が違うんだろう。お寿司大好き。漫画「将太の寿司」も読みました。そんなに美味しいのか確かめたい(笑)。


■キム・ダヒョンさんと演出家が語る、ドンソクさんの魅力

ダヒョン:ドンソクさんはラグビーボールのような魅力を持つ俳優だと思います。稽古の時に演出家が「ウェルテルについてどう思う?」と聞くと、ドンソクさんは予想だにしない答えを返してくる。私は「彼はウェルテルに合ってるのかな…?」と思ったんですが、だんだんと彼にしかできない答えや表現があるとわかってきました。自分だけの魅力があり、自分だけにしかできないことを持っている、多種多様な面を持った俳優です。また、昔の私の姿を彼の中に見ることもありますね。

演出家:ドンソクさんは少年のような人。色んな面を持っていて、爆発的な部分も含め、火山みたいにどこに転ぶかわからない魅力があるんです。ある意味、ウェルテルのような魅力を持っているといえると思います。


【しのぶよりひとこと】
 チョン・ドンソクさんは186cmという長身の24歳。礼儀正しくて姿勢が良くて、本当に“王子様”のよう。若者らしい照れ笑いや、いたずらっぽい微笑みを浮かべて、囁くように語られます。語尾が柔らかく息声のように消え入って、うっとりとするような余韻が残るんですよね。ご覧の通りの甘いマスクですが、実は目尻がツンとつり上がっているんです。舞台では早乙女太一さんばりの流し目で悩殺してくれるかしら…♪
 そんな可愛らしいルックスで周囲をふんわり幸せ気分にしておきながら、さらりと「ウェルテルは私がやるからクオリティーが高い」と言い切る自信家!私はこのギャップに魅せられました(笑)。韓国の軍隊の中でも最も厳しいと言われる海兵隊で兵役義務を終えられていますし、“コンクール荒らし”との異名を取るほどの歌声の持ち主だそうです。

【写真↓ファンからドンソクさんに届いた初日祝いのお米。韓国ではお花の代わりにお米を贈るそうです。】
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韓国題名『뮤지컬(musical)젊은 베르테르의 슬픔(Die Leiden des jungen』
出演(※主演Wキャスト):キム・ダヒョン(김다현)、チョン・ドンソク(전동석) ほか ※出演者、配役は変更になる場合がございます。
原作:J.W.Goethe(ゲーテ) 演出:キム・ミンジョン 音楽監督:イ・ソンジュン  振り付け:ホン・セジョン 芸術監督:シム・サンテ 劇作/歌詞 :コ・ソンウン 作曲:チョン・ミンソン 脚色:ソン・ジョンワン、キム・ソンミ  編曲:イ・ソンジュン 主催:ぴあ 制作:CJ E&M、劇団カッカジ(韓国)
11月9日(金)10:00より、チケット一般発売
早割指定 9,000円(税込) ※11/8(木)までの先行期間のみ適用料金となります。
全席指定 9,800円(税込) ※未就学児童のご入場はご遠慮ください。
http://wakaki-w.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年11月06日 15:41