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2013年05月05日

【写真レポート】SPAC「ふじのくに⇔せかい演劇祭2013」プレス発表会②03/28アンスティチュ・フランセ東京エスパス・イマージュ

 SPAC・静岡舞台芸術センター「ふじのくに⇔せかい演劇祭2013」プレス発表会の写真レポート②です。⇒①はこちら ⇒SPAC公式ツイッター

 6月の土日に静岡に宿泊して、はしご観劇するのがオススメです。 「ホテル特別割引」は要チェック!
 SPAC新作『黄金の馬車』開演前と終演後には、劇場近くのカフェで「フェスティバルbar」があります。

 スケジュール表は公式サイトTOPページ下方でご覧ください。
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 ●SPAC「ふじのくに⇄せかい演劇祭2013」
  ~演劇で世界と静岡をつなぐ一ヶ月~ ⇒公式サイト
  2013年6月1日~30日@静岡芸術劇場、舞台芸術公園など
  ・ステージ数が少ないですのでご予約はどうぞお早めに!※『室内』は完売。
  ・東京・静岡間の劇場直行バスあり!(片道1000円)

 ※長いレポートですので、写真を目印にして、気になる演目からご覧ください。

【3】小島章司『生と死のあわいを生きて フェデリコの魂に捧げる』 ↓(c)山廣康夫
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 解説:フラメンコにその生涯をかけ、73歳となった小島章司が静岡に舞い降ります。一日限りの特別なステージ。

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小島章司さん

 小島:声楽家を志していた若いころ、初めてオペラ『フィガロの結婚』でフィガロ役を歌った時に、演劇的な要素のある作品に対して、自分が声楽的な観点からしかアプローチできていないことを発見しました。目を動かすこと、指先1本を使うこと、足を一歩前に出すこと、一歩後ろに下げること、そして五感など、全てのことが舞台芸術に必要だということに初めて気づかされたのです。それからバレエ、現代舞踊、パントマイム、フラメンコをやり、大学に入ってから間もなく、声楽よりもむしろ肉体言語というか、肉体表現をともなったものに魅力を感じるようになりました。
 私の故郷は四国の徳島県の南方です。何かあったら近隣の人たちにすぐ指を差されるような古い因習のある町で、息切れがしている時に東京に出てきて、めくるめくような東京の生活があって、東京オリンピックがありました。
 私がスペインの乾いた大地に到着したのは1960年代。横浜から船で日本を発ち、シベリア鉄道に乗って3週間ぐらいかかりました。その頃のスペインにはまだ内戦後の空気感があり、因習の塊のようなものが、そのまま屍として残っているようでした。フラメンコの揺籃の地であるアンダルシアに行きますと、白樺の周りにずーっと何人も、黒い喪服を身にまとった女性が、無気力に並んでいた。本当にフェデリコ・ガルシア・ロルカの戯曲『ヴェルナルダ・アルバの家』のように、黒衣の役者たちがずっと連なるような光景が見えました。当時は誰かが亡くなるごとに喪に服す慣習がありましたので、そういう残像がスペインの中にも存在していました。
 私が敬愛するフェデリコ・ガルシア・ロルカは、スペイン内戦で凶弾に倒れました。フラメンコを通して、私に一番魅力を振りまいてくださった作家であり詩人です。三大悲劇の『ヴェルナルダ・アルバの家』『イェルマ』『血の婚礼』に登場する女性像は、悲しみに満ち溢れています。不条理の中で生きてきた女たちの悲劇という観点から、自分が今まで踊って来たもの全てを、今作にぶつけたいと思っております。

 『ラ・セレスティーナ~三人のパブロ~』

 1970年代のはじめにスペインの偉大な芸術家パブロ・ピカソが亡くなり、『鳥の歌』で有名なチェリストのパブロ・カザルス、それからノーベル文学賞を受賞したチリの熱血漢、パブロ・ネルーダという詩人も、同じ年に亡くなりました。私がスペインに寄せる熱情と、それを代表する3人の方が亡くなったのです。私はその3人にオマージュを捧げたいとずっと思ってきました。また、バレエに『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』のような大きな作品があるように、私の中でもそういう1つの作品と言えるもの残してみたいという希望がありました。それでここ数年は、フェルナンド・デ・ロハスの戯曲形式の小説『ラ・セレスティーナ』にとりかかり、3人のパブロの全ての要素を入れた作品を作ったというわけです。ロハスはシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』にも影響を与えたと言われる、シェイクスピアより前の時代のスペインの作家です。

 1968年に初めて私をマドリッドの劇場に1ヶ月間も出演させてくださった歌い手さんをはじめ、自分を支えてくださった大御所の歌い手さんたちは、私の中では生きているのに、現実には亡くなってしまっています。そして自分の中で輝いていた3人のパブロも70年代に亡くなってしまった。自分の中に昼と夜があり、自分の中で彼らは生きていて、死んでいる。1時間も2時間も1人で踊り続けることで、自分の中からふつふつと沸き出してくる不条理やフラストレーション、踊りたいという願望、スペインに対するパッションなど、そういうモロモロも含めて、自分が今生きているのか、死んでいるのか。
 私をフラメンコに導いてくださった方たちの輝かしい生と死のはざまのようなものを、今回の作品にぶつけて、そういう人たちの代表であるフェデリコ・ガルシア・ロルカの魂に捧げる舞台にしたいと思っています。観に来ていただければ幸いに思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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宮城聰さん

 宮城:僕にとっては「夢が叶った」という感じです。僕が大学生の頃、小島さんは既にフラメンコの頂点にいらした。それから30年間、不動の地位を築いてこられたように思います。
 しかし、小島さんの作業を少し覗きこんでみると、驚くほど変化して進んで行かれているのもわかる。不動の状態を保っているように見える人こそ、その中で、ものすごく変わっているのかもしれない。一歩一歩、足を踏みながら変わっていくやり方は、パっと見では変化がわからないけれど、しばらく経つと大幅に動いてるのがわかる、時計の長針のようなものだと思います。
 90歳になられるクロード・レジさんもそうですけど、継続性の中で変わるものと変わらないものを考えるという、この演劇祭のテーマのお手本のような作品を見せていただけるのではないかと楽しみにしています。
   
   
【4】中野成樹作・演出『Waiting for Something』 ↓(c)Yusuke AOKI
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 解説:『Waiting for Something』は『ゴドーを待ちながら』に着想を得た作品。アジア舞台芸術祭で発表され、3年の月日をかけて制作されました。

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中野成樹さん

 中野:ものすごく個人的なことですが、今年で僕は40歳になります、年取ったな~、ハタチが2回も来ちゃったよ~とか思ってたんですけど、今日ここに来て、クロード・レジさん、小島章司さん、宮城さんのお話を聴いて、自分はまだまだ若造だな、と(笑)。ただのガキだなーと思いました。気を引き締めて、若者らしく暴れたいと思っています。
 『Waiting for Something』は、わかることとわからないこと、伝わることと伝わらないことをテーマにしています。世の中では「わかりあえること」「言ってることが伝わること」がとても大事で、一方で「わからないこと」「伝わらないこと」「うまく受け取れないこと」は滑稽だという、固定された観念、価値観がありますよね。でも本当は滑稽というより、面白くて、楽しいことなんじゃないかという気がするんです。たとえばキャッチボールをやっていて、受けそこなったボールが顔にバーン!と当たったら、絶対面白いはずなんですよ(笑)。それをケラケラ笑って「へたくそ!」と言った方が投げたボールが、全然違う方に飛んで行っちゃったりして。
 きっと人間は今まで、そんな「うまくいかないこと」や「伝わらないこと」を、悲しむのではなく、もっともっと積極的に楽しんでいたんじゃないか。そういう伝統をふまえた上で、若者なりに、「受け取れないこと」「うまく投げられないこと」を楽しんでいけたら、無敵じゃないかと思うんですよね。伝わったら伝わったで楽しいし、伝わらなくても楽しいし、全部楽しいじゃないか!と。そんな風にあと2倍ぐらい(40年×2)、生きていかなきゃいけないんだなと思っています(笑)。

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 宮城:中野成樹さんは演劇の実績をずっと積み重ねてこられて、僕の拝見する限り、ここ数年間で長足進歩を遂げられているように思います。演出家はいくつかの異なる仕事を同時にやらなくちゃいけない。そういう総合力が、本当に充実してこられた。集団を率いるという意味も含め、演出家として日本の演劇界を担って行かれる方の一人だと期待しております。


■招聘演目

【5】ヘルベルト・フリッチュ演出・美術『脱線!スパニッシュフライ』 ↓(c)Thomas Aurin
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 解説:『脱線!スパニッシュフライ』はドイツ、ヨーロッパを席巻した大ヒット作。一言で表すなら・・・「ドイツの吉本」(「まるふ」演目紹介より)。ドイツの名優が繰り出す体当たりのボケの数々をお楽しみください。
 ヘルベルト・フィリッチはベルリンの劇場フォルクスビューネの俳優で、60歳を過ぎてから演出を開始。理屈っぽいと言われるドイツ演劇のイメージを一新しました。

 フィリッチからのメッセージ↓

 フィリッチ:この作品にメッセージはないけど、マッサージにはなるよ。お客さんにとって癒しとなる演劇なんだ。(「まるふ」演目紹介より)。

 ・『脱線!スパニッシュ・フライ』静岡公演記念トークショー ⇒詳細はこちら
  5/11(土) 東京ドイツ文化センター
  5/12(日) サールナートホール 静岡シネ・ギャラリー

 宮城:『スパニッシュフライ』は題名に「媚薬」という意味もある、100年ほど前の戯曲です。第一次世界大戦直前の戯曲の中に、我々の変わってなさを見る。それは安心と同時に恐ろしいことでもありますよね。先ほど申し上げた“継続性”“変わらないものと変わるもの”を、招聘演目のどの作品からも感じていただけると思います。


【6】ヤン・クラタ演出『母よ、父なる国に生きる母よ』 ↓(c)Natalia Kabanow
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 解説:キッチュで幻想的な歌と踊り。コラージュのように展開するテキスト。女性の葛藤をしなやかで強い肉体を通じて描く圧巻の90分。


【7】ミロ・ラウ演出『Hate Radio(ヘイト・ラジオ)』 ↓(c)Frank Schroeder
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 解説:ルワンダ虐殺の一翼を担ったというラジオ局の内部を舞台化した、驚くべき精度のドキュメンタリー演劇。舞台は隣人を殺すようあおる、当時のルワンダで最も人気のあったラジオ局です。


【8】人形劇団ラ・パンデュ『ポリシネルでござる!』 ↓(c)Denis et Christelle GREGOIRE
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 解説:イタリアの仮面劇コメディア・デラルテの主役ポリシネルは、チョイわるピエロ。2人の人形使いのことも、操ります。シャルルヴィル・メジエール国立人形劇学校を卒業した、2人組のエリート人形劇団の作品です。チケット代はなんとワンコイン500円!(未就学児は無料)。(「まるふ」演目紹介より一部引用)


■ふじのくに野外芸術フェスタ

 宮城:SPACが静岡県と組んで行う新しいイベントです。劇場に行くのは敷居が高いと思う方でも、野外で地続きでやっていれば、フラっとご覧いただけるのではないか。そこでレベルの高いものを観ていただければ、やがて舞台芸術というもう少し囲われた世界にも、足を踏み入れていただけるかもしれない。そう考えて「クオリティーは高い、しかし敷居は高くない」ものを集めてみました。


【1】『夢の道化師~水上のイリュージョン~』

 宮城:清水港の海でやりますので、入場無料です。


【2】『ベトナム水上人形劇』

 宮城:数あるベトナム水上人形劇団の中でも最高峰の、ハノイのタンロン水上人形劇場に来ていただきます。


【3】SPAC『古事記!!エピソード1』 ↓写真提供:SPAC
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 解説:今年の3月に初演された宮城聰演出作品です。


■しのぶよりひとこと

 クロード・レジさんと小島章司さんが、死者と生者について同じことをおっしゃっています。私は今年の4月に庭劇団ペニノ『大きなトランクの中の箱』を拝見して以来、人間の記憶についてよく考えるようになりました。起こった瞬間に過去になっていく出来事たち、記憶として蓄積され続ける自分の人生、増え続ける死者とその思い出。人間とはつまり記憶そのものである、と考えてもいいのではないでしょうか。舞台上にも客席にも今を生きる人間が集まる“劇場”では、作り手の記憶をもとに生み出された作品を媒介にして、多くの人間の脳と身体に蓄積された記憶が共鳴し合います。つまり劇場は、記憶(=人間)が出会う場となり、そこには記憶の中にいる死者たちももちろん集まるのだと思います。
 私の中の死者も生者も総動員して、宮城さんがテーマに掲げられた「不変であり続けながら、激しく変わっていくこと」を目で見て、体で感じて、蓄えたいと思います。


※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2013年05月05日 20:54 | TrackBack (0)