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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2014年04月13日

砂の上の企画『水分-みくまり』04/10-13旧平櫛田中邸アトリエ

 悪い芝居の山崎彬さんの一人芝居ということで、彼見たさに行ってまいりました。旧平櫛田中邸は千代田線「根津駅」から徒歩13分。会場にたどり着くまでにかなり迷いましたが(汗)、温かいお昼間に散歩するのにはとても気持ちのいい町並みでした。

 上演時間は約1時間35分。山崎さんは舞台中央に座ったままほとんど動かなかったので、朗読劇でも良かったんじゃないかと思いました。桟敷席だったのもあり、上演時間も長すぎるように感じました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『水分-みくまり

 山崎さんの一人芝居なのに、山崎さんが、動かない…。もちろん演出意図があるのでしょうけど、これは“宝の持ち腐れ”ではないかと思わざるを得ませんでした。首藤康之さんと近藤良平さんが出演してるのに踊らなかった、『音のいない世界で』を思い出しました。

 違う回を観劇されたお客様のツイート↓です。

 ここからネタバレします。

 1人で1時間半以上のセリフを覚えて語るのは、セリフの分量的にも大変だろうと思います。山崎さんは最後の方で立ったり動いたりはされていましたが、ほとんど腰かけたり、床に座ったりしたままでした。また、登場人物の一人語りと状況説明の文体で、会話がほとんどないので、朗読の方が鑑賞しやすかっただろうと思います。私はほとんど山崎さんの顔を見ることはなく、ただ耳を傾けて想像を膨らませていました。

 山奥で猟犬と暮らす猟師の男が雪山で見知らぬ女を救い、2人と1匹で春夏秋冬を過ごす。やがて男は女と交わるが、女はすぐに彼らを捨てて出て行って、消えてしまう。納屋で彼女の免許証を見つけた男は、免許証の住所を尋ねる。東京のとある家にたどり着くと、インターホン越しに「娘は何年も前に蒸発しました」との返事。男はそのまま山に帰り、犬との暮らしに戻る。やがて犬も死んで、雪に埋もれて猟師も死ぬ(ジープに乗って自死?)。

 猟師が鹿を狩ってさばいて、人間の食べる部位、獣に与える部位、そのまま自然に返す部位などに分けることや、身重の女鹿を撃ってしまい、お腹にいた小鹿が生まれても生き延びられない(であろう)ことなど、地球上の生命の食物連鎖や、猟師と女の関係などを暗示するエピソードがありました。

 山崎さんは猟師、犬、女、そして猟師と女を「お父さん」「お母さん」と呼ぶ「僕」も演じます。「僕」とはいつか猟師と女の間に生まれる赤子のことだろうと想像させますが、最後の最後に、猟師の遺体が土に返った後に生まれてくる、何かしらの生命体になります。猟師のもとを去った女がどこかで産んだ赤子でもよさそうですが、水底から空を仰ぐ描写があったので、たぶん「赤子」じゃなくて「自然」じゃないかな。だからタイトルが「水分」なのかしら。
 じっとしている山崎さんの身体、存在を「生命」と見立てる試みだったのかもしれません。んー、だったとしても私には物足りなくて、1時間35分は長すぎました。空調のない部屋の桟敷席も辛かったです。

砂の上の企画#5
出演:山崎彬(悪い芝居)
脚本・演出:司田由幸(砂の上の企画) 美術:加藤ちか 室礼:片桐功敦(花道みささぎ流家元) 音楽:寺田英一 宣伝美術:東學 写真:渞忠之 制作:郡山純一(砂の上の企画)
前売り3,000円、当日3,500円
(※全席自由席となっております。当日受付にてのご精算となります)
(※各回30席程度とお席に限りがございますので、お早めのご予約をお願いいたします)
(※演出の都合上、全席桟敷席(座布団席)となります。怪我などの特別のご事情がございます場合は事前にお問い合わせください。)
http://www.suna-no-ue.com/cn4/mikumari_2.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2014年04月13日 14:59 | TrackBack (0)