2001年11月26日

自転車キンクリートSTORE『第17捕虜収容所』紀伊国屋サザンシアター11/16-25

 ドイツ軍の捕虜収容所に抑留されているアメリカ兵たちのお話でした。何も起らない、することもない、劣悪な環境の収容所でなるべく明るく過ごそうとする男達。ある時、自分達の情報がドイツ軍に筒抜けになったことから、仲間の中にスパイがいると知って・・・。

 なかなかサスペンスフルな結末でした。伏線もしっかり張られていて。ドキドキしちゃった。中盤以降にスパイが誰なのかが観客に知らされるのですが、「こら!その人がスパイなんだから、そんなことを今しゃべっちゃダメよっっ!」と客席から叫びたくなるほど臨場感がありました。ふふふ。

 翻訳ものなんですが台本(飯島早苗)、演出(鈴木裕美)がしっかりしていたんだと思います。ただ、枠の中にきちんと収まっていた感があって、客と芝居との距離がちょっと大きかったかな。いわゆる「ウェルメイドなお芝居」ですね。

 実力のある男優さん達の競演でしたが、一番良かったのは(役得でもありますが)小村裕次郎さん。元・猫ニャーの看板男優さんですね。背が高くてハンサムな方なんだけどボケ&可愛いいキャラが素敵でした。
 私のいちおしの山本亨(やまもと・あきら)さんは、あんまり活躍してなかったなー・・・。メイクも濃いし衣装もかなり作りこんであったので誰だかわからないぐらいだった。残念。

作=DONALD BEVAN / EDMUND TRZCINSKI/訳=鴇澤麻由子
演出=鈴木裕美/台本=飯島早苗 出演= 出演=京晋佑・高橋克実・山本亨・川原和久・樋渡真司・大石継太・岡田正・ 田鍋謙一郎・ 五十嵐明(青年座)・藤本浩二・浅野雅博(文学座)・小村裕次郎

Posted by shinobu at 13:18 | TrackBack

2001年11月18日

阿佐ヶ谷スパイダース『日本の女』スズナリ11/7-18

 阿佐ヶ谷スパイダース、略して阿佐スパ(あさすぱ)。今、小劇場界で一番熱い長塚圭史さん作・演出のプロデュース集団です。毎回、様々な新しい役者さん達とのミックスが楽しみです。

 何しろ長塚さんの脚本って退廃的です。どす黒くてエログロ。これは好みが分かれるところだと思うのですが(私は苦手なんです)、その気持ち悪さを吹っ飛ばすというか、気持ち良さに変えてしまうような、暑苦しい、カラッカラに乾いた、言ってみればジャンプ力に近いような笑い(ギャグ)が魅力だと思います。役者さんが巧いというのもありますし、その役者さんの魅力を引き出すことが出来ている長塚さんの演出力でもあるかもしれません。

 今回のお話はわかりやすかったですね。構成が「ライヒ」@東京グローブ座に似てたし。私もかなり阿佐スパ色に慣れてきたらしく、パターンがわかってきてしまってストーリーを楽しむことはできなかったんですが、何しろギャグが良い。巧いんです。
 私は
 「ホットケーキの匂いがぷんぷんするっていうんだ。それほどホットケーキ食ってないのに。」
 で卒倒しました(笑)。

 それと、阿佐スパに出る「男」ってかっこいいんです。特に今回は男による男のための芝居だったから特にその色が濃く出てましたね。男性のファンが多いのもうなづけます。

 阿佐スパのメンバーは長塚さんと中山祐一朗さん、伊達暁さんの3名だけですが、私はこの3人の役者さんが大好きです。特に伊達さんファン♪中山さんも毎回違うキャラですごいし。今回は本当に怖い人(田中役)でした。実は長塚さんのへろへろなのに瞬発的な動きにくびったけだったりする。

 苦手だ苦手だと思っていながらもいつの間にかディープなファンになっているという・・・・。これが阿佐スパなんですね。参った参った。

阿佐ヶ谷スパイダースHP : http://syns.com/spiders/

Posted by shinobu at 15:00 | TrackBack

2001年11月15日

新国立劇場演劇『コペンハーゲン』新国立劇場小劇場10/29-11/18

 第2次世界大戦中に核分裂の研究をしていた科学者たち(実在した人物)が、その死後にその時のことを回想する形で語られる濃密な会話劇です。登場するのはボーア博士とその妻マルガレーテ、そして弟子のハイゼンベルクの3人だけ。

 休憩時間を含めておよそ4時間ありました。さすがに疲れます。こんなに疲れたのはワーグナーのオペラ以来でした。途中でお腹がすいて眠っちゃったり(泣)。役者さん、熱演なのにごめんなさい。

 素晴らしい脚本でした。めちゃくちゃ深いです。原子・電子レベルで起こる現象と人間同士のコミュニケーションにおいて起こる出来事が実は、同じことだという視点。それが論理的に明かされます。(これだけじゃないですが)説明はすごく上手ですが、なにしろテーマが壮大で難解なので戯曲をちゃんと読み直さないと本当の意味はわからないと思います。おせじにも賢いとは言えない私の頭脳に伝わってきてくれた数少ないセリフを下記に紹介しようと思います。稚拙な解釈付きで。

 『歩くということは話すということ。』
 ボーア博士とハイゼンベルクは、いつも散歩をしながら物理学の話をしていました。何か新しい理論が生まれるのはいつもその散歩の時でした。 私たちにも当てはまりますよね。例えばデートとかってそうじゃないですか?ただ、道を歩いているだけでそこに何かが常に生まれている。会話のときも沈黙のときも。

 『誰も見たことのないような新しい量子倫理学が必要となるでしょう。』
 これは「将来こうなるだろう」という予言なのですが、私もその通りだと思います。例えば、世界を優しく覆う倫理というものがあったならば原爆は落とされなかったかも、と。 今で言うと、クローン人間についてはまさにそこがテーマなんじゃないでしょうか。(語弊があるかもしれません。お許しください。)

 『沈黙。わたしたちはいつもこの沈黙に戻ってくる。』
 ボーア博士とその妻マルガレーテの長男は海で溺死しています。そのことを常に思い出す。そしてその時、二人(及びその周りの人)は沈黙します。「話すことなど何も無い」に行き着くからです。めちゃくちゃ漠然としていますが、なんかコレって原子の調和と同じなんじゃないかなって。

 ≪ご参考≫
 「ボーアとハイゼンベルクとの対話劇

新国立劇場HP : http://www.nntt.jac.go.jp/

Posted by shinobu at 23:56 | TrackBack

2001年11月05日

ク・ナウカ『王女メディア』青山円形劇場11/01-05

 ク・ナウカ初めて観ました。
 こんな芝居初めて観ました。

 女(俳優)は舞台上で舞い、男(弁士)が後ろでセリフを読みます。
 BGMはアジア風パーカッションの生演奏。
 なんていうか・・・説明しづらいです。
 オリジナルですね。他に無いものだと思います。Only 1だと思います。

 タイトルどおり、エウリピデスのギリシャ悲劇の物語を基としていて・・・・
 ああ、やっぱり説明できない・・・・。

 弁士も女優も非常に達者で
 衣装も美しく、
 舞台装置には見所があり、
 生演奏には躍動感があります。
 とにかく完成度が高い!

 全てが計算しつくされた舞台でした。
 しびれっぱなし。

 メディアが自分の息子を殺すシーンの重厚な緊張感。
 女の白と男の黒との対比の上に黄色い照明。

 まだまだ他にいっぱいあるんです。すごいところが。
 私の貧弱な語彙では言い表せません・・・・。

ク・ナウカ : http://www.kunauka.or.jp/  ※URLは2005/07/13加筆

Posted by shinobu at 22:40 | TrackBack