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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2001年04月05日

新国立劇場演劇『紙屋町さくらホテル』04/04-25新国立劇場 中劇場

 3年半前に新国立劇場のこけら落としに上演された作品の再演です。「再演」自体が新国立劇場演劇が始まって以来初めてのこと。それくらい再演のリクエストが多かったそうです。
 舞台写真はこちら(2006/07/31追記)。

 パンフレットに新国立劇場 芸術監督の栗山民也さんの文章がありました。
 「これからも演劇が我々の人間という存在にとって、絶対に必要なものだということを、一つ一つの作品によって広く示していかねばなりません。」
 このお芝居によってそのことが鮮やかに描き出され、私の心の中にまっすぐに染み込みました。

 昭和20年(1945年)5月、終戦(原爆投下)間近の非常時下の広島。移動演劇隊「さくら隊」が停泊する紙屋町ホテルでの3日間。さくら隊を指揮する有名映画俳優、アメリカ移民2世と見張りの特高、そして天皇の密命を帯びた海軍軍人とそれを追う陸軍軍人・・・。
 正確な時代描写のもと、人生の意味とは、戦争責任とは、などの重いテーマを上品な笑いとともに優しく、厳しく伝えます。

 お芝居が始まって間もなくの、ピアノに合わせてみんなで合唱するシーンで、どうしようもなく涙が溢れました。自分でもなぜなのかわからないほど。セリフも全然ないし、ただ芝居(劇中劇)のお稽古として歌を歌っているだけなんですよ。なのに、ものすごく伝わってくるものがあったんです。そう、姿勢というか。

 心から演劇(お芝居)が好きで、歌が好きで、自分が舞台に立っていることを楽しんでいて、お客様に感謝していて、今、この瞬間を本気で生きている。舞台上の役者さん達がそのように感じながら演技をしている(歌を歌っている)のが、私に伝わってきたからだと思います。

 舞台装置、やっぱりすごかったです。美術は私が大ファンの堀尾幸男さん。今日は初日だったのでお姿をお見かけできてうれしかったです♪

 ただ一つだけ私がひっかかってしまったのは、戦争責任についての作者の意見を登場人物の心情・意見として言わせたこと。あれは私にはいただけませんでした。

 でも、その分を差し引いたとしてもお薦めの作品です。素晴らしいセリフがたくさんありました。何度も泣かされました。明日、目が腫れるのが心配です。

新国立劇場 : http://www.nntt.jac.go.jp/


レビューに続いたエントリーより
「紙屋町さくらホテル」空席あります!4/4-25

> 堀尾さんの美術も素晴らしい。回転舞台の良さが良く引き出された演出で、面白い。オススメです。

 始まる前は全く何も無い舞台だったのでちょっと心配しつつも「一体どんなことをしてくれるんだろう!?」とわくわくして待っていたら、なんと、あんな・・・・(内緒)とは!!抑制からじわ~っと緩和。そして華々しく、しかし奥ゆかしく。
 堀尾さんの舞台って私はいつもブルーを感じます。色としてではなく、空気として。か細くてひんやりした一条の光が常に差し込んでいて、その世界をそっと照らしているような。

> ただ残念なことに、今日は木曜日だったせいか空席がだいぶありました。

 実は初日もガラガラでした。すごく寂しかった。25日までやってます。23日以降はまだS席さえある状態。今ならインターネットからも購入できます。→新国立劇場HPへ お時間のある方はぜひぜひ足を運んで欲しいです!

> 新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999
新国立劇場 : http://www.nntt.jac.go.jp/

Posted by shinobu at 2001年04月05日 01:34 | TrackBack (0)