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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2001年10月16日

THE SHAMPOO HAT『蝿男』10/10-14ザ・スズナリ

 舞台美術の福田暢秀さん(F.A.T.studio)のお仕事を拝見しに行きました。

 シャンプーハットは2度目なんですが、前回公演の「アメリカ」ではボロボロに泣かされたので、今回は如何!?とけっこう意気込んで挑みました。

 ちょいとシュールで退廃的で、ブラックジョークを含みつつ基本的には怖い作品でした。ハードな脚本ですよね。予想外だったかも。でも苦手なほどではなかったです。押さえて押さえて作ってあったので。上手だなーと思いました。

 前回同様すごくリアルな汚らしいセットの中、鼻の奥にツーン匂ってきそうな演技と間。登場人物が「あっちい」と連呼するんですが、本当に暑かった。汗の匂いがしました。

 リアル、か。
 リアルって必要なのかな。
 必要じゃないんじゃないかな。
 リアルって観客が自分で受け取る(作り出す)気がします。
 だから、発表する側がリアルにしてくれなくてもいい気がしちゃう。

 ただ、前回の「アメリカ」についてはそのリアルが必要だったと思います。フェイクが存在するために。
 今回の「蝿男」については不要だったかな、と。

ザ・シャンプー・ハットHP : http://www33.ocn.ne.jp/~shampoohat/ (2006/03/20追加)

Posted by shinobu at 23:16 | TrackBack

文学座『崩れた石垣、のぼる鮭たち』10/16-25紀伊國屋サザンシアター

 MONOの作・演出家である土田英生さんの書き下ろしです。

 30~50年ぐらい未来の日本。ちょっぴり田舎の古びた旅館のロビー。地球温暖化の影響で雨は毎日土砂降り状態。少しずつ国が水没しつつあり、日本もあと1年の命といわれる中、クラス会を開いた中年男女8名。プラスα。

 泣けましたねー・・・。
 やっぱり土田さんの脚本はすごい。

 模擬建築された嘘の城。中州に取り残されて死んだ中学生時代の友人。密室の極限状態。それらを上手に絡ませて、心地よく笑いも織り交ぜて、最後は甘すぎず、辛すぎず締めくくる。登場人物の一人一人の背景がすごく細やかに、でも簡潔に表現されていることが土田さんの脚本の魅力じゃないかな、と思います。

 終演後、劇場の窓から外を見た時に雨が降っていないことを知って驚きました。そう、それくらいお芝居の中にどっぷり浸かることができていたんですね。

 脚本は良かったですが、演出がいまいち。選曲は古い。役者さんはいかにも文学座~って感じでした。

 文学座 : http://www.bungakuza.com/

Posted by shinobu at 22:54 | TrackBack

ク・ナウカ『トリスタンとイゾルデ』10/12-18青山円形劇場

 私のいちおしシアターカンパニー、ク・ナウカの新作です。スピーカーとムーバーの2人で1役という独自のスタイルを築いています。

 「トリスタンとイゾルデ」はドイツを代表する作曲家、リヒャルト・ワーグナー脚本・作曲のオペラ。壮大な男女の愛の悲劇がク・ナウカ主宰の宮城聰さんの手によってどう変わるかが見所ですよね。

 堪能しました・・・息が詰まるほど集中して観ました。なるほど、なんとも艶めかしい演出で・・・はぁ~・・・・思い出すだけでうっとり恍惚のため息でございます。ドキドキしてきゅーんとなって、ふっと体がゆるんだ時にまた、ハッとして。
 スピーカーの発する言葉が明瞭で易しくて、そして美しい。オペラで観た時にはわかっていなかった意味がわかった気がしました。宮城さんの台本は本当に丁寧で繊細で、心に染み入ります。

 看板女優(ムーバー)の美加理の美しさに心を奪われ、終演後しばらくは動けなかったです。
 照明がまたスゴイ。シンプルだけど大胆。ラストは涙が出そうになりました。
 生演奏なのにマイクを通していた(ように感じた)のがちょっと寂しかったかな。
 衣装には「王女メディア」の時のようにかなり政治的要素が含まれていましたね。

 ク・ナウカを一度もご覧になったことの無い方、ぜひぜひ体験してもらいたいです。

 ク・ナウカ : http://www.kunauka.or.jp/

Posted by shinobu at 15:46 | TrackBack