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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2002年07月31日

ひょうご舞台芸術『ジェイプス』パルコ劇場07/26-08/04

 正式なタイトルは『ジェイプス~記憶の棲む家』です。ひょうご舞台芸術は見逃さないようにしています。

 サイモン・グレイ作の濃密な3人芝居。イギリスの最高級住宅地にある立派な家を舞台に27年間にわたる男2人と女1人の複雑な三角関係を描きます。伝えんとするのは古きよき時代から現代への人間、家族のあり方の変容と現状。やりきれない気持ちとどう向き合っていくのか。これからの未来をどう乗り切っていくのか。

 宮田慶子さんの演出は一人一人の心を細やかに表すことに成功していると思います。

 ストーリー、ちょいとネタばれします。

 兄の恋人と関係を持つ弟。それを知っていてその女と結婚する兄。
 兄と家族になりながら弟を恋焦がれる女。
 アルコール中毒になってボロボロの体で家に帰ってきた弟をゆっくりと抱きしめる兄。
 「ああ。ここはお前の家だよ。」と優しく何度もつぶやきながら。

 兄役の羽場裕一さん。うますぎです。兄の性格、生い立ちなど全てが指先から頭のてっぺんまで満ち満ちていて、非常に生々しくその存在を受け止めさせます。年をとっていくのがすごく自然。

 弟役の高橋和也さん。バケモンです。アル中の演技なんて本当に20歳ぐらい年とって見えました。女に対しては遊び人ぶったり、つらくあたったり優しくしたり、その時々で色んな態度をとるのですが兄といる時はいつも同じ口調に戻るんです。なんて細かい演出&演技なんでしょう!

 妻役の土居裕子さん。ナーバスすぎるかとも思ったのですがそれがあってこその女。変身ぶりにもうなります。過去にいろんな賞を取ってる女優さんなんですね。納得。

 宮田慶子さんの指揮のもと、役者3人が繰り広げる静かで激しいバトル。それが一番の見どころだと思いますが、舞台美術も必見です。ある豪邸のリビングなのですが、柱、壁、暖炉、ソファ、ステンドグラス入りの大きなドアなど、その家に棲む人間の匂いと歴史を何十年に渡って染み込ませ、今も静かに待っている。
 横田あつみさんはこれから要注目の舞台美術家だと思います。妹尾河童さんのお弟子さんなんですよね。

ひょうご舞台芸術第26回公演
(東京/PARCO劇場、兵庫/川西みつなかホール、新神戸オリエンタル劇場)
出演=羽場裕一、高橋和也、土居裕子
作:サイモン・グレイ、翻訳:小田島恒志 演出:宮田慶子、美術:横田あつみ、照明:中川隆一、音響:高橋巖、衣裳:前田文子、宣伝美術:坂本拓也、宣伝写真:小林敏伸、舞台監督:加藤高、芸術監督:山崎正和 ひょうご舞台芸術第26回公演 企画制作:兵庫県、(財)兵庫県芸術文化協会、制作:RUP
兵庫県立芸術文化センター(仮称)」 : http://www.gcenter-hyogo.jp/
http://www.parco-play.com/web/program/001139/

Posted by shinobu at 18:56 | TrackBack

2002年07月24日

「子供のためのシェイクスピア」は必見だ!

 今、東京グローブ座さよなら公演として上演されている『ヴェニスの商人』を観てきたのですが、やっぱり最高でした。
 これから日本国中を15箇所以上まわりますが、東京公演は★明日★まで。

 東京グローブ座休館にともない、座付き劇団であるグローブ座カンパニーの「子供のためのシェイクスピア」シリーズの存続は危うくなっています。

 このシリーズは子孫へ代々引き継いでゆくべき日本演劇界の宝です。
 皆様、どうぞお見逃しの無きよう!!

(ひとことモノローグに掲載した内容です。レビューは残っていません。)

Posted by shinobu at 23:47

三越夏休みファミリー劇場『人魚姫』07/20-28三越劇場

 夏休みの子供向け商業演劇です。去年のRel-ay11月公演『侍 百太郎』でお世話になった衣装の速水由樹(A.C.T.)さんのお仕事拝見が目的。

 皆様おなじみのとおり『人魚姫』というとアンデルセンの童話。人間の王子様と恋に落ちてしまった人魚が、その献身的な愛を貫き、最期には自ら命を絶ってしまうという純粋な悲劇ですよね。でも最近の子供達の間ではディズニーの『リトル・マーメイド』がメジャーになっていてですねー、なんとあれは悪い魔女をみんなで退治して王子様と人魚が結ばれてしまうハッピーエンドなんですよ。
 けしからん!“人魚が船から身を投げ海の泡になって消えていく図”というのは深い深いブルーな思い出として子供の心に残るべきものなんです!(力説)
 で、この公演では・・・・・ちゃ~んと切ない悲劇でした♪うむ、余は満足じゃ。

 隣国の王女様こそが自分を助けてくれた人(=人魚姫)なのだと勘違いして、王子様は『あなたこそ私の運命の人』と朗々と歌い上げます。それを背後ろから、細いスポットをあびながら肩を震わせ、体をこわばらせて見つめ続ける人魚姫。あぁ、人生って(人魚・生)って、うまくいかないものなのね・・・セツナイ・・・。これだよ!これ!やっぱり童話って厳しいモンなんだって!

 人魚姫役の矢部美穂さん。ちょーきれー。かわいー。経験を積んでいい舞台女優さんになって欲しいです。隣国の王女様役の矢部美佳さんとは姉妹なんですね。二人ともグラビア・アイドル出身とか。きれいなら全て許される。うん。それは真実です。

 衣装は盛り沢山でした。人魚、王子、召使、と。まあここまでは普通なんですけどね。魚、たこ、カニ、くらげ、うつぼ、ヒトデ・・・・・こりゃすごい(笑)。ヘドロの魔女の衣装が豪華で良かったですね。でも私の一番のお気に入りはくらげです。あの、ふわ~んと脹らむ透明な感じはまさにくらげだ。

三越劇場:http://www.mitsukoshi.co.jp/store/1010/theater/

Posted by shinobu at 23:31 | TrackBack

2002年07月17日

NYLON100℃『フローズン・ビーチ』07/12-28紀伊國屋ホール

 第43回 岸田國士戯曲賞 受賞作品です。オリジナルキャストでは最初で最後の再演とか。私は初体験です。

 いやー・・・・サスペンスでナンセンスなんだけど癒し系!ケラさんっぽいネタ満載で退屈することなく一気に駆け抜ける2時間15分。さすが戯曲賞を取った作品ですね。ストーリーがとってもよく出来てる。しかも演劇だからこそ実現するファンタジーと説得力。女優さん4人、すごかった。全員キャラがニョキニョキ立ってました。

 犬山犬子さんのキレる女は最初、イライラするんだけどだんだん一番怖くなってくる。計算で演じてるんだなーと気づくと、また味わい深い。
 峯村リエさんの『頼る女』は「そうそう、こういう頭弱いゆえにカワイ~奴っているよね~」と思わせつつ行動が大胆でその変わり身の早さは本当に節操がない。実は一番「今風」かも。かわいい。
 今江冬子さん。オバサンキャラ役をされるのが多いですが、いつも上手いですね。脇をきちっと締められる役者さんだけど、前に出て来てもやっぱりうなる巧さ。
 松永玲子さん。スタイルいい。また見たい。あっけらかんとした変身振りが爽快。怒っても叫んでも全然引かない。立ち姿に男気を感じる。はつらつセクシー。

 前説の映像はあまり好きじゃなかったですが、オープニングの映像やエピソード紹介の映像がすっごく良かった。CG映像なんだけど影絵みたいでアナログな雰囲気。音楽もすごく良かった~。舞台装置はまあまあ、かな。

 ラストシーンで涙が出そうになりました。そう、どんなにつらくても笑えるんだね。
 カニバビロン。
 ああ、私も生きていくよ!

ナイロン100℃(ヒャクドシー)HP : http://www.sillywalk.com/nylon/

Posted by shinobu at 23:21 | TrackBack