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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2003年04月25日

Oi-SCALE『マッピー』04/23-27明石スタジオ

 林灰二さんの脚本が魅力のオイ・スケール。私は2度目です。

 少年院から出てきた少年、行方不明の兄、3人のヤクザ、首吊り死体などが出てくるハードな設定です。でもそのキワモノな怖さとかを全く感じないんですよね。(あ、死体はそれ自体がやっぱり怖いけど)林さんの脚本は全てを見越したような冷めた視線を保ちつつ「こんなの、いかがですか?お気に召すといいのですが・・・。」と丁寧に差し出す態度が感じられます。

 自分の頭の中の想像と現実が交錯していく主人公。素朴に淡々と語る独白がとても聴きやすかったので、尋常でない設定を背景としてすんなり受け入れられました。電車のシーンでは、面白いアイデアでオブラートに包まれた暴力シーンが作られていました。表現している具体的内容は非常に怖いお話なのですが、すんなり受け入れて入って行けるのは無理やり押し付けないからじゃないかな。どこか冷めていて、引っ込んでいて、どこか優しい。なんか透明なんですよね。感覚というか、肌触りが。

 前回の『無修正アレルギー』でも良かったですが、今回も舞台装置がとても良いです。低予算で作られているのが見て取れますが、効果がちゃんと出ているので気になりません。愛らしくさえ感じます。地下と地上を上手く現していましたね。遊び感覚もあって楽しいし。

 照明をカットアウトするタイミングがすごく気持ちいいです。映画に似てる感じもありますが、映画ほど鮮やかすぎないのがいい。パンク色が強いんだけれど、ものがなしくて心地よい選曲。

 無駄に長いおさげを首にぐるんっと巻くんですが、その動作自体がさらに無駄なので笑える。
 ピーポ君人形を持ってかざして「警察だ。」は可愛い。
 首吊り死体のお父さんの声色が良かった。

 明石スタジオで2時間のお芝居。腰が痛くなったのと足の踏み場が狭すぎたのがちょっと辛かったですが暗い世界観ながらも予想を軽快に裏切ってゆく展開に心の隅っこでわくわくしながら、3~4つの世界が重なっていき、最後になるほど!と唸らせられるまで満喫しました。ラスト近くの主人公のセリフ「もうかんしゃくは起こさないよ。」に感動。(セリフは完全に正確ではありません。)

 OiSCALEのHP : http://www.oi-scale.com

Posted by shinobu at 2003年04月25日 20:39