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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年08月08日

Studio Life『DRACULA』06/09-27新宿シアターサンモール

 男優集団スタジオライフ。毎公演、完売御礼の大人気劇団です。
 今回は2バージョンあったのですが、私はLATITUDEバージョンを拝見しました。LONGITUDEは風邪で逃したのです・・・(泣)。ドラキュラ役に笠原浩夫さんと曽世海児さんですからね、そりゃ両バージョン観たかったですよー。

 休憩15分間を含む3時間10分でした。脚本・演出の倉田淳さんはいつも原作に忠実に作られるのですが、今回もまたそうだったようです。原作どおりにきちんと全てを追うと簡単にそれぐらい長時間になってしまうのでしょう。確かに長く感じましたが、私は熱狂的ではないけれど、しっかりしたスタジオライフ・ファンなので(笑)、役者さんの演技をじっくり楽しみました。

 ただ、ファンじゃなかったなら、つらかったかもしれません。ストーリーの説明シーンが多いし、暗転が多いし、美術はほぼ変化しないし。2つ以上のシーンが舞台上で同時進行することも、ほとんどなかったですしね。3時間の上演時間の中で演劇ならではの自由自在な演出が少なかったと思うのです。登場人物すなわち役者さん一人一人に思い入れの有る芝居だったと思いますが、そのせいで「一人で舞台正面で独白」とかが多くなっているのがちょっと弱いかな、と。言葉やストーリーを大切にされているのだとは思いますが、ビジュアル的な演出がもっと増えていくとさらにファン層が拡大される気がします。

 パンフレットに詳しく書いてありましたが、さすがスタジオライフ、と言いますが、脚本・演出にホモセクシュアルなニュアンスをプラスされていました。原作や作者のブラム・ストーカーの人生にもそういう匂いはあるようです。ジョナサン(甲斐政彦)のことを想うドラキュラ(笠原浩夫)のあのせつない顔が忘れられないんですよね~(笑)。

 舞台装置はいつもながらシンプル。ちょっと物足りなかったなぁ。スタジオライフの美術って、なんでいつも四角いんでしょうね。斜めにしたりイメージを断絶させたり、もっと冒険してもいいんじゃないかと思います。開演した時から気になっていたのですが、天井に棺おけがぶら下がっていました。「どうやって使うんだろう・・・」と思っていたら、最後にちょっと斜めに降りて来るだけでした。うーん・・・拍子抜けでしたね。だったら完全に隠しておいても良かったのではないでしょうか。

 音楽については選曲がいただけなかったですねぇ・・・。よく耳にするクラシック音楽を何度も流すのはなるべく避けて欲しいと思います。野田秀樹さんの作品でも感じるのですが、新しく選曲家を連れて来たらどうかしら・・・。

 中盤辺りから「なんだか観たことあるな~」と思っていたのですが、ラストシーン(ジョナサンの息子が彼の首に噛み付くところ)で確信しました。観ました、コレ!・・・ということはシアタートラムでの初演を観たんですね、私。その時に比べたら笠原さんってものすごい俳優になられましたよね。

 笠原浩夫さん。ドラキュラ伯爵役。大満足です。貴族をまともにやるのって本当に難しいですよね、今の時代の日本で。笠原さんは姿勢もいいし、言葉も美しいし、知的だし、文句なしです。マントを翻して登場する&去っていく姿に見とれます。
 甲斐政彦さん。ドラキュラ伯爵に愛されるジョナサン役。立つだけで、そこがどこなのかがわかる演技をしてくださいました。笑いも上品に作ってくださって、素晴らしかったです。
 舟見和利さん。ジョナサンの妻ミナ役。最近バージョン違いで見逃していたので、久しぶりの船見さんだ!と思ったら、いつの間にこんなしっとりした女形になられていたのでしょう!?一つ一つ細かく作られた、女らしい可憐な所作が絵になっていました。
 倉本徹さん。精神異常者レンフィールド役。リアルでした。倉本さんのおかげでホラーも味わえました。劇団しゅうくりー夢の主宰さんだったんですね(1993年退団)。
 河内喜一朗さん。有能な医師ヘルシング役。どうしちゃったのかなぁ・・・2年ぐらい前はすごく渋くて重厚な演技をされていたのに、最近はよくセリフを間違うし、NHKの朝ドラみたいな感じなんですよねぇ・・・。

 劇団内でワークショップや殺陣指導などの俳優養成をされていると聞きました。海外での演技の教室にも俳優を送り込んでいるそうです。だからあんなに役者さんが育っているんですね。演劇界にとっても観客にとっても嬉しいし、素晴らしいことだと思います。

 チラシやポスターは大きな“D”の文字の中にいる二人のドラキュラ、というビジュアルになっていますが、なんとあの“D”、わざわざ作成されたものだったんです。てっきりCGだと思ってたんですが、シアターサンモールの入り口の階段を下りるところに現物が飾ってありました。すごーい!!そりゃブロマイドも作りますよね。

原作/ブラム・ストーカー 脚本・演出/倉田淳
【LATITUDE】出演:笠原浩夫 甲斐政彦 舟見和利 山崎康一 吉田隆太(フレッシュ) 佐野考治 牧島進一 倉本 徹 河内喜一朗 下井顕太郎、萬代慶太、他劇団員
【LONGITUDE】出演:曽世海児 山本芳樹 及川 健 林 勇輔 深山洋貴 奥田 努 寺岡 哲 篠田仁志 船戸慎士 下井顕太郎、萬代慶太、他劇団員
美術:松野潤 照明:森田三郎 舞台監督:北条孝 土門眞哉 西村朗(ニケステージワークス) 音響:竹下亮(OFFICE my on) ヘアメイク:角田和子 衣裳:竹原典子 今村あずさ アクション:倉本徹 美術助手:小野寺綾乃 宣伝美術:河合恭誌 菅原可奈(VIA BO, RINK) 宣伝写真:峯村隆三 デスク:釣沢一衣 岡村和宏 水上知子 制作:稲田佳雄 中川月人 赤城由美子 CUBE STAFF プロデューサー:北牧裕幸 高橋典子 制作:北里美織子 宣伝:米田律子
スタジオ・ライフ:http://www.studio-life.com/

Posted by shinobu at 2004年08月08日 16:45 | TrackBack (0)