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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2004年10月09日

G-upプロデュース『金魚鉢の中で』10/06-11シアターVアカサカ

 小劇場界で有名で実力もある役者さんが集められたプロデュース公演です。作・演出が ほさかよう という無名の新人さんなのが、さらに興味をそそりました。今公演のプロデューサーの赤沼かがみさんが彼を見出したようですね。こういうの、すごく嬉しいです。小劇場界の新しい流れとなって定着してもらいたいです。

 海に浮かぶプチ・ゴージャスなヨットの船内。若者が6人、ワケあってその船の中にいる。窓の外は嵐。密航者の発見をきっかけに始まる、密室の殺人サバイバル。

 怖かった~・・・。最後の最後まで予想がつかない展開でした。上演時間が1時間50分強だったのは長く感じましたね。1時間半にまとめられたらかなりの秀作になったんじゃないでしょうか。こういう気の抜けない作品って、役者さんのコンディションも大きく影響しますよね。残念なことに私が観た回はちょっと間が緩んでいた気がしました。でも、うまい役者さんばかりでしたので不安になることは全くありませんでした。

 しかし、こんなおっとろしい脚本を書いたのが、こんなに可愛らしい23歳の男の子だなんて・・・(写真は非公開になったようです)。若者の才能は計り知れません(笑)。これから注目の脚本家だと思います。ほさかさんは劇団こってり の主宰さんだったんですね。時々チラシで見かけたり観劇仲間から噂を聞いたりしていましたが、具体的なご縁にはなっていませんでした。この公演のおかげでお会いできて良かったです。

 ただ、演出についてはもう一歩ですね。簡単に言ってしまうと全般的にきっかけが遅れ気味だった気がします。暗転や音楽が鳴るタイミング、セリフとセリフのつながりなど、観客をリードしていくリズムがありませんでした。また、「こういう風に見せたい」と思ってらっしゃるのは伝わってくるのですが、実現できてなかったところがチラホラ。これから勉強していかれるのでしょう。

 選曲は、舞台上でも何度か話題に上ったディズニー映画の音楽(『眠りの森の美女』の"Once Upon a Dream")がとても良かったです。血まみれバトルでクラシック音楽が優雅にかかるのは最高に気持ちがいいですよね(笑)。

 伊達暁さん(阿佐ヶ谷スパイダース)。ヨットの持ち主のしのぶ役。深く役作りをされていて細かい演技もひとつひとつ丁寧なので、抜け落ちるところがないんです。どうしようもなくかっこいいです、やっぱり。
 ますもとたくやさん(スペクタクルガーデン)。おもろいなーっ!すっごいなーっ!!オープニングからめちゃくちゃ自然に笑いを生んでくださいました。いや~あっぱれ。
 武藤晃子さん(TEAM発砲・B・ZIN)。猫と戯れるこずえ役。どうしちゃったのかな・・・。TEAM発砲・B・ZINの他にも方南ぐみやG2プロデュースでキュートな武藤さんをよく拝見していましたので、今回はキャラについても舞台上での存在感についても疑問でした。あんなにがさつに作らなくても良かったんじゃないでしょうか。

 折り込みチラシによるとG-up(ジーアップ)の来年のスケジュールは↓
 ●作:川上徹也(PLAYMATE)・演出:寺十吾(tsumazuki no ishi
  『Brains』01/22-01/30シアターVアカサカ
 ●作・演出:鈴木哲也(オフィス・マキノ)
  MOBO presents Vol.2『Torys!』02/24-03/06シアターVアカサカ
  (→TEAM発砲・B・ZINや扉座の役者さんが出演)
 と続きます。今までにない組み合わせですよね~!間が1ヶ月も空いてないのもすごい。

 (以下、ネタバレします)

 南(林真也)がレイプした女子中学生の兄は、実はしのぶ(伊達暁)だったと判明するあの瞬間が一番ゾクゾクしました。あれがあっただけでこの作品は成功じゃないでしょうか。スカっとしましたね~。密室殺人の醍醐味と言えば「犯人は誰なのか?」ですが、この作品では一人(たとえばフルートを持つ少女“かや”)が全員を殺したわけじゃないそうです。一回観ただけじゃわかるのは難しいみたいですね。私なんて脚本も読んで、お稽古も拝見して、本番も通してみたのに犯人を間違っていました(苦笑)。
 問題:和彦(ますもとたくや)を殺したのは誰でしょう? (私はこの答えを間違えたんです。今だに根拠さえわかってない・・・)

脚本・演出:ほさかよう
出演:伊達暁(阿佐ヶ谷スパイダース) 武藤晃子(TEAM 発砲・B・ZIN) 中坪由起子 有川マコト(絶対王様) 林真也 ますもとたくや(スペクタクルガーデン) 広澤草
舞台美術 福田暢秀 美術製作 F.A.T studio 舞台監督 藤林美樹 音響 平田忠範(GENG27) 照明 廣井実 演出助手 奥村亜紀 ヘアメイク Tiamat 蓮 宣伝美術 石曽根有也(C-FLAT) 制作 G-up 保田佳緒 鎌田千穂子 プロデューサー 赤沼かがみ 企画・製作 G-up
G-up(ジーアップ):http://www.g-up.info/

Posted by shinobu at 20:20 | TrackBack

山の手事情社20周年記念公演Yamanote7481『夏の夜の夢』10/08-17青山円形劇場

 劇団 山の手事情社の20周年記念公演です。観客アンケートで再演希望の多かった3作品を2週間連続で上演しています。2作品連続上演とかは聞いたこともあるのですが、3作品って・・・すごすぎる。一体どうやって作ったんだろう・・・。私は『夏の夜の夢』から拝見しました。

 銭湯を舞台にした『夏の夜の夢』は初演の時から評判が高かったのは知っていましたが、期待が大きすぎたせいか「めちゃくちゃ良かった」とは思えませんでした。最近の『DOUJOUJI』の方がずっと面白かったんですよね。セリフもほとんどシェイクスピアの作品そのものを生かす形でしたしね。そうなるとシェイクスピアの『夏の夜の夢』は何度も観てますので、今まで観たものと比べてしまいます。どうせならもっともっと奇抜な演出で観たかったな~。男と女の配役がところどころ逆になっているのは楽しかったです。特にオーベロン(倉品淳子)とティターニア(山本芳郎)は最高。

 落語家の柳家花緑さんがボトムをはじめとする町人たちをお一人で演じられる(語られる)のですが、私は退屈でしたね。落語にあまり慣れてないからなのかなぁ。茶色の網パンストをかぶってロバになるのは素晴らしいアイデアだと思いましたが(笑)。

 あと、役者さんの力量の差が気になったのが残念でした。山の手事情社のお芝居には役者全員による身体表現がよくありますよね。上手な方は本当にお上手なので、ちょっとおぼつかないな、という人がいるとヘンに目立っちゃうんです。でもオープニングはめちゃくちゃかっこ良かった!「わぁっ・・・!」と小さな声を上げてしまいました。

 青山円形劇場をプロセニアム(額縁)形式で使っていました。青っぽい白を基調にした舞台上に、黄色いおけが沢山積まれていて、コインロッカー、電動あんま椅子、体重計、牛乳瓶の入った冷蔵庫など、昔ながらの銭湯にある調度品がオブジェのように置かれています。おけ以外はすべて真っ白な舞台上に、カラフルな和風の衣裳をまとった役者さんがしずしずと歩み現れ、次第に体の動きで見せていきます。あぁ・・・思い出すだけで嬉しくなります。

 照明が素晴らしかったです。山の手事情社の蛍光灯は本当にかっこいいですよね。上から吊り下げられた掛け時計と冷蔵庫が照らされるのもいい。冷蔵庫は中から照明が仕込まれているのもきれいです。舞台のまわりを丸く囲むように、天井から床まで真っ直ぐ落ちるようにスクリーンがかかっていて、そのスクリーンを、下から青、緑、黄色、ピンク、赤などの原色系の照明が色とりどりに照らします。

 衣裳はいつも素晴らしいのですが、今回も美しかったな~・・・。着物に袴スタイルで、配役ごとに色や柄で違いを出しています。特に妖精たちの帽子と頭飾りが凝っていましたね。パックが黒ぶち眼鏡をかけているのもキュートでした。

 休日マチネってあまり演劇に慣れていない方がいらしている度合いが高いので、アート系のお芝居は平日ソワレに行くことにしているのですが、やっぱりヤラれました。おそらく山本芳郎さんのファンの女性なのでしょう、山本さんが出てくるだけで大笑いしてらっしゃいました。女装してきた時なんて休まず笑い続けるんです。なんでやねん!?ファンならもっと演技とかを見ればいいのいね。ラストのめちゃくちゃいいシーンで、一人で大声を上げて手を叩いて大爆笑したおばさま!まわりは皆キレかけだったのよ!!(怒)。そう、ラストの「役者は・・・」のところはジィーンと来ました。あの邪魔な大笑いさえなければ「今まで観た中で一番美しい『夏の夜の夢』のエンディングだった」と言えたと思います。

 3作品全部に出演されている役者さんは「モノスゴイことになっている」そうです。「『jamゴールドブレンド』は即興だからいいんだけど、『オイディプス@TOKYO』と『夏の夜の夢』は正反対の内容だから」と、ある役者さん談。なるほど頭の切り替えが大変そう・・・。こんな公演を実現・実演されていることに感服です。

 ※『jamゴールドブレンド』は10/15(金)以外すべて完売だそうです。ご予約はお早めに!

出演:柳家花緑 山本芳郎 倉品淳子 野々下孝 岩淵吉能 太田真理子 水寄真弓 河村岳 浦弘毅 森谷悦子 山口笑美 久保村牧子 植田麻理絵 鴫島隆文 名久井守 野口卓磨 山田宏平
構成・演出:安田雅弘 照明・舞台装置:関口裕ニ(balance, inc) 音響:斉見浩平 衣裳:渡邉昌子・栗崎和子→『夏の夜の夢』『オイディプス@TOKYO』 寒河江真紀(lame☆trap)→『jamゴールドブレンド』 舞台監督:本弘 宣伝美術:福島治 演出助手:小笠原くみこ 制作:福冨はつみ 製作:劇団山の手事情社・(有)アップタウンプロダクション
山の手事情社オフィス:http://www.yamanote-j.org

Posted by shinobu at 18:20 | TrackBack