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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年05月24日

万作の会+(財)せたがや文化財団『まちがいの狂言』05/08-22世田谷パブリックシアター

 世田谷パブリックシアターの芸術監督でいらっしゃる野村萬斎さんの演出です。『まちがいの狂言』は2001年初演でこれが3演目。やっとチケットを入手できたので観に行きました。萬斎さんの人気はホントに凄いですね。
 この公演後にはアメリカ公演があります。2001年にはイギリスのグローブ座でも上演されました。
 2001年初演の公演情報はこちら。あらすじや作品紹介が充実しています。
 2002年再演(グローバル・バージョン)の公演情報はこちら

 「人生に一度は観た方がいい。」そうお薦めできる傑作だと思います。

 劇場ロビーに入ると、フロアの床になにやら白黒のシールのようなものが貼ってあります。よく見るとそれはたんぽぽの花の形をしており、客席入り口のすべてに掛けられたのれんや、舞台美術に使われているモチーフ(紋)と同じデザインでした。劇場に足を踏み入れた瞬間から作品世界へと入っていける演出は嬉しいです。

 客席に行くと、黒装束に怖いお面をかぶった人たちが「ややこしや ややこしや」と口々に語りながら、ぐるぐると歩き回っています。観客をじーっと見つめ(?)たり子供の手を握ったり、自由に遊んでいる雰囲気で、こちらの気持ちもリラックスしました。客席にはお子様もけっこう沢山いて、ややこしや星人たち(私はそう名づけました)に大喜び。NHK『にほんごであそぼ(いきなり音が鳴ります)』でお馴染みのようです。普通に見たらかなり怖いキャラなのにね(笑)。
 
 ストーリーはシェイクスピアの『間違いの喜劇』を室町時代の日本のお話に翻案したもので、ドタバタ喜劇の部類に入ると思います。

***あらすじ***(こちらより引用しました)
 白草の国の商人、直介(野村万作)には息子がおり、同じ頃近隣で生まれた父なし子の双子を従者として引き取り、一緒に育てていましたが、ある日、妻と赤ん坊四名を伴い旅に出たところ、瀬戸内海で嵐に巻き込まれ、妻と息子一人従者一人と生き別れになってしまいます。
***引用おわり***

 商人の息子が双子で、その従者も双子。片方ずつセットで生き別れになり、5年後に4人がお互いのことを知らずに再会することから起こる大騒動。商人の息子の双子を野村万作さんがお一人で演じ、従者の双子を野村萬斎さんお一人で演じます。面を被ることで役を区別するのが狂言風で渋いです。
 出演する役者さんの熟練の技はもちろん、ユーモアもたっぷりの演技と演出も満喫できました。

 最後に萬斎さんが一人で舞台に立ち、被っていた面をステージ中央の床に置きます。置かれた面をまた拾って、その面と対話するようにセリフを言います。
 「ややこしや ややこしや」
 「わたしがそなたで そなたがわたし そも わたしとは なんぢゃいな」
 私と他人、私と他人から成る世界、私という宇宙・・・を感じました。同一人物と間違われる2組の双子のドタバタ悲劇の形を借りて、狂言があらわす哲学的世界が、その時、その場に生まれていました。

 日本の舞台芸術の最高レベルの作品だと言えるのではないでしょうか。これを海外で上演してくださるのは凄く嬉しいです。世田谷パブリックシアターのレパートリーですのでまた再演されることでしょう。後はチケット入手の難しさがナントカなってくれれば・・・・。
 
 某日観劇録に舞台の内容が簡潔にまとめられています。

原作: ウィリアム.シェイクスピア「まちがいの喜劇」より 作:高橋康也 演出:野村萬斎
出演:野村万作 野村万之介 野村萬斎 石田幸雄 深田博治 高野和憲 月崎晴夫 野村遼太 中村修一 高山悠樹 破意志晋照 時田光洋 小美濃利明 野村良乍 宇貫貴雄
囃子方:松田弘之(笛)、槻宅聡(笛)、太鼓:桜井均
美術:堀尾幸男 照明:キムヨンス 演出助手:小美濃利明 舞台監督:山本園子 衣裳スーパーザイザー:阿部朱美 制作:奥山緑(アムアーツ) 
一般 A席6,500円/B席4,000円、学生(3階)2,500円(くりっくチケットセンターのみ取扱い、要学生証)SePT倶楽部会員割引 <A席のみ>6,000円 世田谷区民割引 <A席のみ>6,300円
公演ページ:http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/04-2-4-78.html

Posted by shinobu at 2005年05月24日 15:31 | TrackBack (0)