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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2005年11月18日

青年団+劇団PARK 日韓合同公演『ソウルノート』10/26-30こまばアゴラ劇場(原題=『東京ノート』)

 何度も再演されている青年団の代表作で、10年前に岸田國士戯曲賞を受賞している『東京ノート』のソウル版。舞台を東京からソウルの美術館に変えただけで、内容はほぼ同じだそうです(私は『東京ノート』未見です)。
 平田オリザさんの脚本を、韓国人演出家の林広正さんと平田さんが共同演出し、俳優も日本人と韓国人の競演でした。※公演は終了しています。

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 劇場に入るなり舞台美術の素晴らしさに感涙。『ニセS高原から』などで通い詰めたアゴラ劇場が全く違う使い方をされて、現代風の新しくて美しい美術館のロビーになっていました。これこそ劇場の魔法じゃないですか!?こまばアゴラ劇場バンザイ!!

 詳しいレビューはこちらにも⇒ デジログからあなろぐ

 ≪あらすじ≫
 2014年5月のソウル。15万人もの日本人が住んでいる(ことになっている)。舞台となる美術館にはフェルメールの絵画が全て揃っていて、韓国人だけでなく日本人も美術鑑賞に訪れる。ヨーロッパで大規模な戦争が起こっており、絵画などの美術品がアジアの国々に避難してきているのだ。
 美術館のロビーには、ヨーロッパの戦争に志願する人、反戦運動をしたけれど挫折をした人、無思慮のまま輸出用の武器の部品を作る人らが登場する。
 ≪ここまで≫

 字幕の2014年という文字を見たとたん、いっぱい想像しました。青年団の近未来を舞台にした作品だと『S高原から』と『南島俘虜記』を拝見したのですが、ひとことのセリフから舞台設定を予想するのがとても面白いですし、そういう想像力を喚起してくれる空気感が、青年団の作品にはあります。
 今回は「2014年になると日本よりも韓国の方が戦争の危険が無いようになっていて、お金持ちや国の要人だけがソウルに来ることができる状態なのかな」と想像しました。それが『S高原から』のサナトリウムに重なり、また、時代は違うけれど『その河をこえて、五月』の桜の咲く川辺のことも思い浮かべながら、日本と韓国という海を挟んで隣同士の国と国の、過去から未来へつながる関係が見えてくる気がしました。

 先にも述べましたが、とにかく舞台美術が素晴らしいです。普段のアゴラ劇場は劇場入り口から入ると客席の最後列になります。今作では劇場の中の通路をググっと右に入り込んで、右側に舞台、左側が客席でした。壁は白と黒、そこに差し色の赤、そしてイマドキのおしゃれな美術館によくある白木製のパネル(壁)やベンチが置かれ、床がコンクリート(のよう)だったのも現代的でリアル。劇場は魔法の箱です。奇蹟がおこる部屋です。一歩踏み入れた瞬間にそれを体中で感じることが出来ました。

 さて、肝心の役者さんの演技についてですが、韓国人の役者さんは良かったですが、日本人が出てくると退屈して、眠くなりました。日本人の家族がいっぱい登場したシーンはほとんど記憶がありません。オリジナル版とほぼ同じ配役なのに、青年団の俳優さんはどうしたのでしょう。何か起こったのかな。

 オープニングとエンディングにいいムードの音楽が流れました。青年団のお芝居ではなかなかない(決してない?)ことだそうです。“悲しいけれど心温まるイイお話”という始末がついてしまって、世界が狭くなってしまっているように思いました。オリジナル版『東京ノート』を是非観てみたいです。

 ※お芝居の舞台が東京から韓国になっていますから、脚本は大々的に韓国語に翻訳されています。韓国人の俳優と日本人の俳優が共演し、演出も共同ですから、当然のごとく言葉の壁を越えて創作しなければなりません。たとえば学芸員役のひらたよーこさんはセリフのほとんどが韓国語でした。
 あの・・・こんなこと私が言う必要ないぐらい明らかなんですが、これって、めちゃくちゃ大変ですよね・・・?日本語の脚本を韓国語に訳して韓国人の俳優さんが演じるだけじゃないんですよ。新しい作品を韓国人と日本人とが一緒に作り出すんです。こんなに積極的で具体的な国際的文化交流はなかなかないんじゃないでしょうか?
 平田オリザさんをはじめ、青年団の方々へ。心から感謝申し上げます。私は観ることしかできないですが「観ることが、育てること。 」との優しい呼びかけに、ちょこんと乗っからせていただきたいと思います。

追加公演=10月30日18時開演
出演=山内健司/ひらたよーこ/松田弘子/足立誠/山村崇子/角舘玲奈/天明留理子/チェ・ヨンミン(Choi Yong Min)/ユ・ヨンス(Yoo Yun Soo)/イム・ユヨン(Lim You Young)/チェ・チャンヨル(Choi Chang Youl)/チャン・ソンヨン(Jang Seon Yeon)/ファン・ジヨン(Hwang Ji Young)/ハン・スンド(Han Seung Do)/イ・ジンヒョク(Lee Jin Hyuk)/パク・ジュヒ(Pak JuHee)/ク・ボンジュ(Ku Bon Ju)/ノ・ジョンア(No Jeong Ah)/チャ・ヘジョン(Cha Hye Jung)
作=平田オリザ 演出=平田オリザ/Park Kwang Jung 翻訳=ソン・キウン 演出助手=ジュジヒ(Ju Ji Hee) 音楽監督=ハン・ジェコン(Han Jae Kwon) 技術監督=キム・ヨンヒョン(Kim Yong Hyun) 舞台美術=杉山至 照明=岩城保 音響操作=薮公美子 通訳=ソン・キウン(Sung Ki Woong) 字幕操作=ソン・キウン(Sung Ki Woong)/秋山建一 字幕制作=青年団 宣伝美術=京 制作=一條智子/西山葉子 主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 共同制作=ソウル国際公演芸術祭 後援=駐日韓国大使館 韓国文化院・韓国文化観光部
日時指定/全席自由/整理番号つき 前売・当日共 一般3,000円 学生2,000円 高校生以下1,500円
公式=http://www.seinendan.org/

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Posted by shinobu at 2005年11月18日 10:54 | TrackBack (0)