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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年05月19日

シアター21『グリマー・アンド・シャイン』05/13-22紀伊國屋ホール

 ジャズメンたちのお話、でした。おじ様たちがめっちゃくちゃ渋くてかっこよくて“萌え”ましたね(笑)。シアター21って再演しませんよね。これ、再演してもらいたいなー・・・。

 舞台は1990年のマンハッタン。1950年代に一世を風靡したジャズ・グループには双子の兄弟トランペッターがいた。ダニエル・グリマー(羽場裕一)とマーティン・グリマー(山路和弘)だ。ある事件から兄のダニエルはジャズからすっかり足を洗ってビジネスマンになっている。弟のマーティンは酒とタバコにおぼれたまま今も昔と同じアパートに住んでいるが、ダニエルの娘(真中瞳)と出会って・・・・。

 脚本のウォーレン・ライトさんは1999年に『サイドマン』でトニー賞を受賞しています。これもジャズメンのお話でしたね。私はジャズについては外側から眺めているだけなのでよく知らないのですが、ジャズに魅せられた人たちってすごく魅力的に見えます。
 「ドラム(奏者)に女を持っていかれる」って何度もセリフに出てたけれど、ホントなのかしら(笑)。
 最後の最後のセリフで若い二人に残されたメッセージは「守りに入るな」でした。

 美術は加藤ちかさん。思い切った構図でした。下手に弟の家、上手に兄の家があり、舞台は真ん中で真っ二つに分かれている状態。弟の家は35年前からずっと変わらずゴミ溜めのようになっているのですが、それに対して兄の家(会社で借りているセカンドハウス的な部屋)はきらびやかな豪邸。でも壁や柱が斜めに傾いているんです。自分の心のままに生きた弟の家はまっすぐどっしりと存在し、妻そして子供の流産がきっかけでジャズ人生と決別した兄の家は、見るからに不安定なのです。

 なんとカーテンコールで男優3人がを本当に演奏されました!!羽場さんと山路さんがトランペット、高橋さんがトロンボーンを・・・がががーんっ、な、なんてカッコイイの!!・・・だめだ、この時ばかりは単なるミーハーになってしまったっ、真中さんがうらやましかったわ~(笑)。

≪東京、兵庫≫
"Glimmer, Glimmer, and Shine" by Warren Leight
作:ウォーレン・ライト 翻訳:小田島恒志 演出:宮田慶子
出演:真中瞳(ディーリアとマーサ)/高橋和也(ジョーダンとエディ)/山路和弘(マーティン・グリマー)/羽場裕一(ダニエル・グリマー)
美術:加藤ちか 照明:中川昭一 音響:高橋巖 衣裳:前田文子 ヘアメイク:佐藤裕子 演出助手:阿部洋平 舞台監督:澁谷壽久 宣伝美術:坂本拓也 宣伝写真:サト・ノリユキ 制作:相場未江 プロデューサー:三崎力 芸術監督:山崎正和
企画:シアター21制作実行委員会 製作:RUP
前売り5,500円
RUP:http://www.rup.co.jp/200504gli/index.html

Posted by shinobu at 23:48 | TrackBack

フジテレビジョン『エデンの東』05/01-21東京グローブ座

 ジャニーズ事務所所属の男の子が主演のお芝居です。鈴木裕美さんの演出で、松井るみさんの美術なので観に行くことにしました。脚本はグリングの青木豪さん。青木さんは4月に演劇集団円にも書き下ろされていますね。

 ジェームス・ディーンの映画が有名です。私は母親から「弟が兄の恋人を盗っちゃう話だ」と聞かされていたので、幼心に「きっと不謹慎な話なのだ」と思い込み、映画は観ていません。というかジェームス・ディーン像が「不謹慎な若者」にFIXされたため、彼の映画は全く観ていないのです。ほんとのバカですね、私。大人なんだからちゃんと自分の目で確かめます。

 閑話休題。あらすじはこちらでどうぞ。※音楽が鳴りますのでボリュームにご注意ください。

 ストーリーを全く知らなかったのもあり、とても楽しく拝見しました。やっぱり鈴木裕美さんの演出は手堅いです。そして松井るみさんの美術は美しい。あと、音響が細やかに計算されていたように感じました。かすかに鳴り出す音(鳥の声とか民衆の声とかいろいろ)がとても心地よく、効果的でした。脚本については、構成はすごくスムーズで気持ちよかったです。セリフは少々クドかったところもあったかな。

 役者さんは新劇っぽさが鼻につく感もありましたが、イヤにならずに最後まで観られました。主役のキャル役の松本潤さんはさすがジャニーズ、輝きがありましたね。ただ、体がいつもゆらゆら揺れているのは気になりました。

 キャル(松本潤)とアロン(小橋賢児)、そして父親(浜畑賢吉)が暮らす家と、彼等を捨てて出て行った母親ケート(銀粉蝶)が経営する女郎宿への場面転換がかっこいい!セットは基本的にリアルなアメリカンハウスです。中央および上手側がキャル達の家で、下手側が女郎宿なのですが、仕切りも何もないんです。ただ互いの家具が置いてあるだけ。つまり、音響と照明の変化だけで場所が変わるんですね。キャルの家から女郎宿のある繁華街までは汽車で1時間ぐらいという設定でした。キャルとアロンが家の中で会話をしている時からすでに汽車のシュッポ、シュッポという音が鳴り始め、2人がふらりと下手へと移動したとたんに照明の色が変わって、そこはもう女郎宿・・・鮮やかでしたね~。

 ここからネタバレします。

 病に倒れた父親と不良息子キャルの心が通い合う、というのがラストですが、あまり感情移入はできなかったです。父親は、アロンからのプレゼント(恋人との婚約)には喜んだのに、自分が相当苦労して作ったプレゼント(現金)には喜びませんでした。そこでキャルは初めて「なんでアロンばっかり!?」と、兄のアロンに対する嫉妬の気持ちを言葉に表すのですが、その嫉妬心が感じられなかったからかもしれません。アロンのことすっごく好いているように見えていたので。

 キャルの兄アロン役の小橋賢児さん。四面四角でヤな感じでちょっといけ好かない青年役、良かったです。たしか『若き日のゴッホ』でもそんな役だったような。女郎屋の女将になった実の母親に会って、志願兵になる決心をしたシーンには説得力がありました。
 アロンの恋人アブラ役の水谷妃里さん。きれいな方なんでしょうけど、きびきびしすぎな印象でした。特に父親が脳溢血で倒れてからは、がみがみしゃべる声が聞き苦しかったです。
 女郎宿の女将ケート役の銀粉蝶さん。ド迫力で渋い!でも、紋切り型な時もあって、それは楽しくなかったかも。
 歌川椎子さんが超イラつく家政婦役なのですが(笑)、弟役の永滝元太郎さんとすっごくいいコンビでしたね。

≪東京、大阪≫
おそらく映画がもとになっていると思うので書いておきます。
映画『エデンの東』→ 製作:監督:エリア・カザン 原作:ジョン・スタインべック 脚本:ポール・オズボーン

演出:鈴木裕美 脚本:青木豪(グリング) 美術:松井るみ 
出演:松本潤(嵐) 小橋賢児 水谷妃里 川原和久 歌川椎子 永滝元太郎 銀粉蝶 浜畑賢吉
照明:中川隆一 音響:井上正弘 衣裳:黒須はな子 小道具:石井みほ ヘアメイク:河村陽子 演出助手:坂本聖子 舞台監督:村田明
東京グローブ座:http://www.tglobe.net/
フジテレビ内:http://www.fujitv.co.jp/events/stage/st050501eden.html

Posted by shinobu at 00:01 | TrackBack