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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2005年09月03日

THEATRE1010『写楽考』08/30-09/10THEATRE1010

 『写楽考』ということで江戸時代の幻の浮世絵師・東洲斎写楽のお話です。故・矢代静一さんの戯曲をマキノノゾミさんが演出されます。1971年初演で当時の主演は西田敏行さん(2度の再演後、竹中直人さんに引き継がれる)。その翌年に、矢代さんはこの戯曲で読売文学賞を受賞されています。
 矢代さんは女優の毬谷友子さん のお父様なんですね。

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 高橋和也さんと山路和弘さんは『グリマー・アンド・シャイン』に続いての共演ですね。そしてペンギンプルペイルパイルズの小林高鹿さんやラッパ屋の木村靖司さんなど、素敵な男優さんが勢ぞろい。こりゃ必見でしょう!と、早々とチケットを押さえておりました(ミーハーですね)。

 休憩15分を挟んで3時間10分ほどでした。役者さんは皆さん熱演ですし、戯曲も面白いし、演出も軽やかで楽しかったですけど、長かったですねぇ・・・。

 ≪あらすじ≫
 1974年。伊之(いの。のちの写楽)と勇助(ゆうすけ。のちの歌麿)は江戸八丁堀の八軒長屋で同居する若い絵師見習い。目指す方向も性格も正反対なのでよく衝突する。伊之は裕福な人妻のお加代と不倫関係で、金をもらいながら情夫を続けているが、ある事件が起きて・・・
 ≪ここまで≫

 アメリカン・ポップスやロック・ミュージックを編曲した音楽が使われて、熱い人間ドラマだけれど軽快に、娯楽作品として物語が進行します。また、天井近くに横に広い大きなスクリーン、そして上手と下手に縦に長細いスクリーンが設置してあり、文字映像や動画などで時代背景や意味をわかりやすく説明してくれるので、とても観客フレンドリーです。イッセー尾形さんがCG映像でフェノロサや永井荷風等に扮して写楽について語るのは、それ単体でめちゃくちゃ面白かったです。

 濡れ場がけっこう多くて、前から2列目だった私はドギマギでした(苦笑)。皆さん美しい方々ばかりですし、見栄えもするきれいなシーンでした。でもね、もっともっと本気でやってくれたら、私がテレることなかったのになぁとも思うんですね。こう、動き方は激しそうでも、心にその気が無いのが見えてしまっていて、過激な外観ばかりが目に付いてしまいました。ラブシーンって難しいですね、特に激しいのは・・・。

 ここからネタバレします。

 伊之(高橋和也)とお加代(西山水木)との不倫の肉体関係、そして劇的な情事殺人?(自殺幇助?)がこの物語の中の最大の事件であり、登場人物達の人生をガラッと変えてしまいます。赤い照明とパンチのある音楽で派手な演出が施されていました。でも、個人的にはもっともっとグサっと胸に刺さるような出来事として受け取りたかったです。見かけが大胆でも、核心には少しオブラートがかかっているような気がしました(そういう演出意図なのかもしれません)。
 第2幕で、お米(田中美里)とともに10年もの逃亡生活を続けた伊之が、「男女が体をむさぼりあうのは素晴らしいことだけれど、人間は動物とは一線を画すものであるはずで、それを俺はお加代に教えることが出来なかった」(セリフは正確ではありません)という境地にいたっていたのは感動的でした。
 他にも深く腑に落ちたセリフがたくさんあったのですが私の心に迫ってくる空気が持続してくれないので、集中力がところどころ途切れてしまいました。また、作品がとても長く感じたので、あまり記憶に鮮明に残ってくれませんでした。残念です。

 役者さんで、く~っ、かっこいい!!と思ったのは、山路和弘さん(十返舎一九役)と木村靖司さん(蔦屋重三郎役)です。
 山路さんはちゃらんぽらんな面と厳しい反政府主義者の面とを自在にあやつって、作品の大切なところを締めて、緩めて、観客を暖かく誘導してくださいました。関西弁がキュート。
 木村靖司さんはいわゆる金の亡者の悪徳商人を、渋くてかっこいい悪役に完成させていました。あのいやらしい睨み笑顔、しびれたわ~。いつもの甲高い可愛らしい声はなりを潜め、低くかすれて響く、ぎらぎら獲物を狙う賢い獣のようなうなり声でした。

 高橋和也さん(写楽役)。高橋さんは熱く燃えたりひどく落ち込んだりする激しい気性の役をよく演じられるんですよね。いつもの感じだなぁと眺めてしまっていたので、ちょっと物足りないかな(すみません、高橋さんについては求めるレベルが高くなってしまうのです)。高橋さんならではの写楽だったのかもしれませんが、できれば何かしら、もっと心や頭に引っかからざるを得ないような、意味が分からないけれど忘れられないような、特徴(魅力)が欲しかったです。でもあれだけしっかりと言葉の一つ一つを大切に伝えてくれる俳優さんはなかなか居ないと思います。

 田中美里さん(お米役)。少女らしい天然ボケで実際のところアタマも弱く、良かれと思ってやったことがどんどん裏目に出るという、可哀想なヒロインでした。棒読みチックな演技が気になりましたが、徐々にそれも可愛らしく見えてきました。どんなに崩そうとしても御嬢様のままであることって大切だと思います。その意味で田中さんは安心して見ていられる美人さんだと思います。後半は長ゼリフも多くて力演でした。

 小林高鹿さん(歌麿役)。若手俳優の大抜擢じゃないでしょうか。私も高鹿さん目当てでチケットを取りましたし♪ 冷徹で隠れた残虐性のあるキャラでしたが、まだまだ足りないなぁと思いました。もっとずるくてイヤな奴になって欲しかったです。女を見つめる眼や触れる手に殺意や欲情が感じられませんでした。高鹿さんのブログはこちら。写真も充実ですよ♪

出演=高橋和也/田中美里/小林高鹿/佐藤累央/麻生花帆/永滝元太郎/木村靖司/西山水木/イッセー尾形(映像出演)/山路和弘
作=矢代静一 演出=マキノノゾミ 美術=朝倉摂 照明=小川幾男 衣裳=三大寺志保美 音響=高橋巌 映像=奥秀太郎 演出助手=山田美紀 舞台監督=津田光正 主催=THEATRE1010 共催=TBSラジオ ニッポン放送 後援=東武鉄道株式会社
7月7日(木)一般発売開始。写楽席7,000円 (1階席15列まで) 歌麿席5,000円 (1階席16列~21列および2階席1列・2列) 千住席1,010円 (2階席3列・4列) ※千住席のみTHEATRE1010フレンズ会員10%割引販売の対象外
★千住席1,010円は土日完売ですが平日ならまだありますよ!(2005/09/01時点)
公式=http://www.t1010.jp/

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Posted by shinobu at 22:50 | TrackBack

9月3日(土)夜にFM西東京「たけがき2」に出演します。

 FM西東京の演劇情報番組「たけがき2」に出演いたします。毎月第一土曜日に出演の予定です。
 今回は前半に『エドモンド』の感想をお話し、後半は9月に観られるお薦めお芝居を3本ご紹介します。セミナーの宣伝も少しさせていただきます♪

 西東京市およびその周辺地域でお聴き頂けます。

 9月3日(土)21:30~22:00(の内の約10分間)
 FM 84.2MHz

 たけがき2(ツー):http://takegaki.k-free.net/

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Posted by shinobu at 18:25 | TrackBack