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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年09月03日

イキウメ『プレイヤー』08/31-09/03サンモールスタジオ

 今、注目の劇団イキウメの新作です。作・演出の前川知大さんの活躍を見逃すなかれ(過去作品のレビュー⇒)。早々に前売り完売し、9/2(土)はなんと夜9時からの追加公演が敢行されました。それも満員御礼だったようです。1日3ステージて・・・恐ろしいですよね(苦笑)。

 ロビーではこれまでの上演脚本、イキウメ特製てぬぐいなどが販売されており、私は前回公演のDVDを購入しました。

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 ≪あらすじ≫
 元也(緒方健児)は知り合いの刑事・二宮(盛隆二)に、姉のマコトの調査を続けてくれるよう頼む。2ヶ月前に失踪したきり何の手がかりもないのだ。マコトの彼氏・佐久間(宇井タカシ)もまたマコトのことが忘れられず、元也がアルバイトしている喫茶店に足繁く通い、毎日のように元也に電話したりもしている。元也は二宮に留守番電話のメッセージが録音されたテープを手渡した。入るはずのない誰かの声が入っているのだ。また、佐久間の体にも不思議な現象が起きていた。自分は無自覚なのだが、勝手にマコトの言葉を話している瞬間があるらしい。
 環境問題解決に尽力する学者でありながら、サトリオルグという団体を主宰している時枝(奥瀬繁)という人物と、元也らが出会うことになり、マコトの裏の素顔が明らかになっていく。
 ≪ここまで≫

 現代日本を舞台にした硬質な本格派SF作品でした。笑いやゆるみは、たやすくは見つけられません。あらすじを書いてみて思ったのですが、話の構造はものすごく巧妙です。私の書いたあらすじだとつまらないです(すみません)。こんな風に一直線に説明するのはもったいない!

 私は超自然現象やカルト集団などのことは身近に感じるタイプなので(特にそういう活動はしていませんが)、この作品で起こる出来事は私の隣りで、すぐそばで起こっているように感じながら、没頭してじっくりと結末を待ちました。

 現実の社会では起こりえない、人間の世界にはありえない(と思われている)ことを、じわりじわりと着実に、起こりえる・ありえることにしていく脚本・演出の力に感服です。
 SFだとはいえ人間の命について大胆な解釈が成され、あらゆる人にわかりやすく作られてはいませんので、苦手な方もいらっしゃるかもしれませんね。私はニヤっとしながら存分に楽しめました。ただ、途中で集中がきれかけたことがなかったわけではないです。説明が長く続いているように感じて、退屈した時じゃないかと思います。

 ここからネタバレします。

 二宮の同僚・八雲(浜田信也)とサトリオルグ主宰の時枝(奥瀬繁)との言い争いは、物質的世界(こちら側)しか信じないと決めている人と、精神的世界(あちら側)を信じきっている人との戦いでした。時枝は、マコトをはじめ神崎(岩本幸子)や二宮らは、身体を脱ぎ捨てて精神だけの世界へと移行したと言いますが、八雲から見たら、起こった出来事はただの集団自殺であり、時枝は自殺ほう助の現行犯でしかありません。

 時枝は「7人が“移行”して、それぞれが7人の知人を仲間にする(自分が乗り移ることが出来るプレイヤーにする)と、7人×7人=49人、次は49人×7人=343人、その次は2401人と増えて、人口が減ることになる。そして環境破壊を縮小できる」と言います。まさか環境問題からそこにつながっていたとは・・・めちゃくちゃ可笑しかったです。ぴりりと皮肉の効いたブラック・ジョークですよね。
 八雲が、神崎に乗り移られて神崎の言葉を話している自分の映像を見たときも、すかさず「これはCGだ!」と言います。んなバカな(笑)。でも信じない人は信じない理由を必死で見つけるものなんですよね。

 マコトという名前は面白いですね。漢字だと真とか、信とか、誠とかが当てはまりそうです。全てはマコトから始まった、わけです。
 ※GUEST BOOKで教えていただきました。マコトは真言という漢字だそうです(戯曲本より)。STさん、ありがとうございました!(2006/09/04加筆)

 当日パンフレットには主宰の宇井タカシさんのご挨拶と、作品説明とも受けとれる作・演出の前川知大さんの文章が書かれています。前川さんの言葉は作品の深みを髣髴させる味わいがあり、面白いです。私は宇井さんの文章も楽しみにしていまして、今回も心打たれるものがありました。劇団の姿勢・主張が表れています。作・演出家が一人で作品を作れるわけではないんですよね。

出演=宇井タカシ・岩本幸子・緒方健児・岡部由美・池上ゆき・浜田信也・盛隆二・國重直也・奥瀬繁(幻の劇団見て見て)・桜井麻樹
作・演出=前川知大 舞台監督=小野八着(JET STREAM) 舞台美術=土岐研一 照明=松本大介(enjin-light) 音響=鏑木知宏(Sound Gimmick) 音響オペ=平井隆史 選曲=303 演出助手=矢本翼子 衣裳=吉岡麻衣/太田家世/(有)アシスト 写真撮影=相川博昭 映像制作=トリックスターフィルム 宣伝美術=高井真 働き者=森下創 制作=吉田直美
自由席2,500円 指定席2,800円 当日3,000円
公式=http://www10.plala.or.jp/ikiume/

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Posted by shinobu at 2006年09月03日 14:24 | TrackBack (0)