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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年09月10日

東京タンバリン『ワルツ~隣の男~』09/08-18三鷹市芸術文化センター・星のホール

 東京タンバリンは高井浩子さんが作・演出される劇団です。今回は1劇場で同時に2公演を行うという試みで、fringeでも取り上げられていますね
 私は出演者が少ない『ワルツ~隣の男~』の方を拝見しました。もう一方は『立待月~隣の女~』です。マンションの隣り合う二部屋が舞台になっているんですね。

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 ≪あらすじ≫
 サラリーマンの亮(山田伊久磨)が一人暮らししている小ぎれいなマンションの一室。婚約者の聡美(皆戸麻衣)が夕飯を用意して待っていたりして、2人は甘い婚約生活を満喫している。そこに亮の学生時代の親友・大輔(木下政治)が転がり込んできた。大輔は劇団の主宰かつ作・演出家で、順風満帆な人生を送っているわけではなさそうだ。大輔の劇団のメンバー、茉莉(田中里枝)と太郎(瓜生和成)も出入りするようになり、亮と聡美の生活は突然様変わり。亮は親友の大輔との暮らしを楽しんでいるが、聡美の心は決して穏やかではなかった。
 ≪ここまで≫

 若い頃からの親友同士がそれぞれ違う進路に進み(一人はサラリーマン、一人は劇団員)、久しぶりの再会を果たした時には彼らを取り巻く世界は完全に別のものになっていた。でも、好きだった映画、好きだった音楽、一緒に遊んだ思い出は決して変わることなく、二人の体に染み付いて今も輝いている・・・。こういうことってどんな人にも共通の体験としてあるように思います。だから「そうだよね~」と共感はできるんですけど、私としてはノスタルジーのその先が観たいんですよね。たとえば「だから俺はこうやって生きていくんだ」という希望とか、「だからもう俺は死ぬんだ」という絶望とか。

 東京タンバリンというと「必要とは思えないダンスシーンが挟まれる」という噂を聞いており、たしかに私が前に観た作品はそうでした。今回もダンスのようなシーンはありましたが、意味もあったし観ていて楽しかったです。突然、客席に向かって独白しはじめたり、演じる役柄を次々と変えていく演出も面白かったですね。
 ただ、初日に拝見したからかもしれませんが、全体的にぎくしゃくしているように感じました。2作品同時上演という試みも関係しているのでしょう。これから良くなっていくのだろうと思います。

 ここからネタバレします。

 1年前に母親を亡くし、母ひとり子ひとりの生活から一人暮らしをしはじめた亮は、実はかなりのマザコンだった、というのに納得でした。また、亮の母親と大輔が若い頃に肉体関係を持っていたというのも、無理のないバックグラウンドだったと思います。そして母親だけでなく、婚約者の聡美まで大輔に取られてしまうという展開も、自然に受け入れられました。プライベートでも社会的にも、大輔よりは幸せそうに見える亮だけれど、一番欲しいものはいつも大輔に奪われるという構図は、皮肉だけどとても共感できました。
 それに・・・大輔(木下政治)ってセクシーだもんねーっ。演劇をやってる人って、どうしようもなく危険な、野性的な魅力に溢れてたりするんですよね(笑)。あ、でも亮役の山田伊久磨さんもいつもながらかっこ良かったです。婚約者・聡美役の皆戸麻衣さんは白黒の千鳥格子のタイトスカートがものすごく似合ってらっしゃって、私は美しいお尻のラインに釘付けでした(笑)。すみません、へんなとこばっかり観てて。

 それにしても・・・登場人物に映画の話を延々とさせるのはなぜなのでしょうね(亮と大輔の共通の趣味が映画鑑賞だった。話題に上った人名:スタンリー・キューブリック、マーティン・スコセッシ、ロバート・デニーロ、ウッディ・アレン、アキ・カウリスマキ等。)。作・演出の高井浩子さんが映画好きであることは明らかですが、ただ映画のマメ知識を羅列するだけの使い方には必要性を感じません。前に拝見した時もそうだったんですけど、狭い世界の自慢話にしか聞こえないんだよな~・・・(いつものお約束なのかしら)。チェーホフ「かもめ」の引用についても、ただしゃべるだけじゃなくって、もっと物語の根幹に触れるような使い方をされるといいのにと思いました。

 あと、演劇をやっている人を登場させるのはリスクが高いですよね。できればバンドマンとか絵描きとか、演劇には関係のない職業だった方が良かったと思います。

 【隣りの部屋とのからみについて】

 亮の隣りの部屋に、新しく姉妹が引っ越してきたという設定でした。隣りからのアプローチは、引っ越しの挨拶にタオルを持ってくる、何かのお礼に石鹸を持ってくる(その石鹸でトラブルが起きる)、回覧板を持ってくる(ふりをして勝手に侵入?)・・・ぐらいだったかしら。特に重大なことは起こりませんでしたね。ストーリーの核の部分でつながっていたら、両方観たいと思うかもしれません。例えば亮が隣りの女と浮気するとか(笑)。

 同時進行で2作品が上演されていますので、音楽・音響、そして暗転は共通しています。これって・・・大変なことだと思います。そもそも脚本執筆の時点できっかけを同じにしなきゃいけないし、役者さんも演技をしながら時間調整とか必要ですよね。こっちで派手な照明の中、音楽にあわせて踊ってる時、むこうは何やってるんだろうな~って想像するのは楽しかったです。

『ワルツ~隣の男~』出演=瓜生和成/皆戸麻衣(NYLON100℃)/ 山田伊久磨(エッヘ)/田中里枝/木下政治(劇団M.O.P.)
『立待月~隣の女~』出演=森啓一郎/本間剛/草野イニ (ロリータ男爵) /佐藤恭子 (カムカムミニキーナ) /ミギタ明日香/島野温枝/遠藤章弘/大田景子/菊池未来/鈴木里実/田島冴香
作・演出=高井浩子 舞台監督=松下清永/甲賀亮 照明=橋本剛(colore) 照明オペ=佐生由香里/吉村愛子 音響=中村嘉宏(atSound) 音響オペ=筧良太(Sound Cube) 舞台美術=鈴木健介(青年団) 舞台補助=坂田恭子 装置=C-COM 宣伝美術=清水つゆこ 制作=東京タンバリン
8/4発売開始 前売り3000円 当日3300円 劇場会員割引あり ニ公演セット券5500円 隣の部屋追加券2500円 高校生以下1000円(公演当日、入場時に学生証提示)
劇団=http://tanbarin.sunnyday.jp/
公式=http://tanbarin.sunnyday.jp/waltz&moon/

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Posted by shinobu at 2006年09月10日 15:26 | TrackBack (0)