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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年09月17日

劇団青年座『夫婦(めおと)レコード』09/13-17俳優座劇場

 中島淳彦さんの脚本を黒岩亮さんが演出される青年座公演です。中島さんの作品は文学座の『ゆれる車の音』もちょうど上演中ですね。
 2004年初演で、今回が初めての再演です。父親役だけが変更され、津嘉山正種さんになりました。私は初見です。満員の千秋楽に伺いました。上演時間は約2時間。

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 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 長い間一緒に暮した中村康夫(津嘉山正種)の妻・民子が亡くなった
 死因は心臓麻痺、町内会の温泉旅行中、突然のことだった
 旅行に参加せず、自宅でその知らせを聞いた康夫は一瞬何のことだか分らなかった
 あまりにも唐突に、妻の死はやってきた・・・
 うろたえる康夫と5人の娘たち
 王貞治が756本のホームラン記録を達成しようとしていた
 1977年の夏
 ≪ここまで≫

 お葬式の日から始まる芝居・・・苦手なんですよね。中島淳彦さんの戯曲では『エキスポ』もそうですね(過去レビュー⇒)。突然に亡くなったのは50代の主婦・民子。残されたのはその夫・康夫(津嘉山正種)と娘たち。なんと五人姉妹です。
 うーん・・・登場する男性はそれぞれに際立つ個性を与えられていたのですが、五人姉妹の存在感が薄かったです。残念ながら、もっともっと面白くなるはずだ!と思って眺め続ける状態でした。

 舞台は昭和55年。私は生まれています。だから懐かしいなと思う風景もちらほらありました。『ゆれる車の音』に比べると役者さんの身体はあの時代に近づいていましたね。特に女の子はどことなく大人しい感じがよく出ていました。だから、あの時代のお話だということはスムーズに納得できたのですが、一人一人を個別に見ると物足りなかったですね。作品という枠の中にお行儀よく並んで、そこから飛び出て来てくれる人がいなかったように思います。

 タイトルの『夫婦レコード』のレコード(record)は、音の出る黒い円盤だけでなく、記憶(夫婦の歴史)、記録(ホームランの本数)という意味もあるのでしょう。

 ここからネタバレします。

 結婚行進曲って、ワーグナーやメンデルスゾーンなど、何種類もあるんですね。中島さんの戯曲では時代や状況を反映する歌がよく紹介されます。
 ちょうど長女・京子(那須佐代子)の恋人(矢崎文也)が「お父さん、京子さんを僕にください」と康夫に頭を下げるシーンで、次女(佐野美幸)の婿(井上智之)がギターでフォークソングを歌います。歌いだした瞬間の間の悪さは最高に面白かったですね。
 その選曲が吉田拓郎『結婚しようよ』、はしだのりひことクライマックス『花嫁』(←音が鳴ります)なんです。ピッタリですよね~。でも歌う際に「してやったり!」な呼吸だったのが残念。

 死んだ母親・民子は康夫とは再婚でした。戦後のどさくさにまぎれて入籍し、結婚式はしなかったとのこと。母親には前の夫との間に子供がいたのではないか、誰か浮気相手がいたのではないかなど、残された家族は邪推します。そこで康夫は不安になって、
 康夫「(民子は)俺と一緒で幸せだったんだろうか?」
 と深刻な表情でつぶやくのですが、腑に落ちなかったですね。

 死んだ人に対して「僕(私)のせいで不幸せだったんじゃないか」「他の人と一緒にいた方が良かったんじゃないか」などと考えるのは傲慢な気がします。民子さんの場合、娘を5人も生んで、その内の3人と夫と同居してる状態ですよね。普通以上に幸せだと思います。結婚して32年(?)ですし、不幸せだったら何度でも出て行くチャンスはあったんじゃないでしょうか。・・・というわけで、康夫と民子の夫婦関係に納得がいかず、お芝居自体にも感情移入はできませんでした。※セリフの言い方、位置づけの問題だと思います。

 ほろりと語るセリフに良かったところがありました。セリフは正確ではありません。

 康夫「(長女の結婚は)どうなった?」
 五女「いつの間にか、積み重なるだけさ。」

 康夫「(誰も居なくなった居間で、一人で))母さん、色んなことがあるよ。」

 最後は康夫が娘達に向けて、はなむけの言葉のような長い独白をするのですが、津嘉山正種さんに白いスポットライトが煌々と当たってしまうのは・・・恥ずかしくなっちゃいました。

≪旭川市、岩見沢市、苫小牧市、函館市、敦賀市、東京≫
出演=津嘉山正種/井上智之/矢崎文也/小豆畑雅一/那須佐代子/ひがし由貴/佐野美幸/森脇由紀/柳下季里
作=中島淳彦 演出=黒岩亮 装置=柴田秀子 照明=中川隆一 音響=井上正弘 衣裳=竹原典子 舞台監督=尾花真 製作=森正敏
前売り開始=7月11日 一般5,000円/ネット予約 4,500円/ゴールデンシート(65歳以上) 4,000円/ユニバーシート(大学・各種学校生) 3,500円/チェリーシート(高校生以下) 2,500円/特別割引 夫婦券(ご夫婦でのご観劇) 8,000円/グループ割引(5名以上・お一人様) 4,500円
公式=http://www.seinenza.com/

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Posted by shinobu at 2006年09月17日 21:36 | TrackBack (0)