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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年10月17日

Bunkamura『緒形拳ひとり舞台 白野-シラノ-』10/14-17シアターコクーン内特設小劇場TheatrePUPA(ピューパ)

 緒形拳さんがお一人で演じる『シラノ・ド・ベルジュラック』の日本版『白野弁十郎』は、緒形さんの師である新国劇の島田正吾さんの代表作です。演出は鈴木勝秀さん。東京公演は終了。
 『シラノ』といえば私はジェラール・ドパルデュー主演の映画が大・大・大好きで、『シラノ』のお芝居となると必ず観に行っちゃうのです。

 11月には鈴木忠志さんが構成・演出される新国立劇場の『シラノ』が開幕しますね。あ、江守徹さん主演の文学座公演(兵庫、東京)もあります。

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 あらすじは文学座サイトでどうぞ。※有名な作品ですので、ここからネタバレします。

シラノ・ド・ベルジュラック
エドモン・ロスタン作 / 辰野 隆訳 / 鈴木 信太郎訳
岩波書店 (1983.12)
通常2-3日以内に発送します。

 舞台は日本の江戸時代の京都、シラノ(白野)とクリスチャン(来須)は会津藩の隊士で、長州征伐に行くことになります。ロクサーヌは千種という名前になっていました。すべて緒形さんお一人で演じられます。

 ひし形のステージで、ごくわずかな家具(イスとネストテーブルなど)を使うだけのシンプルな美術です。そこに茶色い着物(袴)姿の緒形拳さんが登場します。舞台上に、私の目の前に居るのは、緒形拳。「緒形拳」なんですよね、「(かぎかっこ)」付きの。演技が上手いとか下手だとか、そういう判断は私にはできないと常々思っていますが、それ以上にこのお芝居では、自分の感覚がよくわからなくなりました。目の前に居るのは白野なのか、緒形拳さんなのか・・・。

 最初はゆったりとしたリラックスムードで、全体が緒形さん個人のペースで流れているように感じ、眠くなっちゃったりも・・・。私の座席が舞台上手側の後方だったせいもあるかもしれません。舞台が遠いので演技もちょっと見えづらいし、声も聞こえにくい。桟敷自由席は体勢的につらいでしょうが、一人芝居の醍醐味を味わうには最高だったかもしれませんね。

 でも、白野が千種への思いを告げるバルコニー(?)のシーンで、号泣!!!あぁ、やっぱり『シラノ』は恋ですよ、恋!!緒形さんの、じっくりと搾り出すようにつぶやく「あなたを、あいしています」とか、恋しすぎて切なくて、狂おしくて、息も出来なくなっているような表情とか・・・!もー、ちり紙がいくらあっても足りないぃ~っ(涙・涙・涙)!!・・・という状態でした。※セリフは正確ではありません。

 千種が白野と来須のいる戦場までやってきて、来須に「あなたのお顔ではなく、その心を愛しています」と告げるところからは、緒形さんは舞台下手面側にじっと起立した状態で、朗読するように話していました。このシーンはセリフだけでなくト書きありましたね。これが・・・泣けるっ!!
 「千種が愛しているのは君だ、そして君も千種を愛している」と白野を励まし、戦線へと突入していった来須。千種の愛を得られたと喜んだのもつかの間、大砲に撃たれた来須に「千種が愛しているのはやっぱりお前だ」と嘘をつく白野。やっと本当に愛した人(=来須)に死なれて、悲鳴を上げる千種・・・。

 十数年後、千種は尼寺に入っており、白野は10日おきに彼女を訪れるようになっています。ある日、白野は事故(もしくは暗殺)で重傷を負いますが、いつもどおり千種に会いに行きます。そこでとうとう、彼女に手紙を書き続けていたのが白野だったことがバレてしまうのです。その、バレるまでの、そしてバレてからのやりとりが、もう、凄くって、凄くって・・・(涙)。
 千種「やっぱり・・・あなた、だったんですね。」
 白野「違う!違う違う!!」
 当然ながら舞台には緒形さん一人しか居ません。だから白野のセリフも千種のセリフも、見つめる方向を逆にしながら、緒形さんが一人で語ります。それでもそこにはちゃんと対話があって、交わされる言葉の間(あいだ)があって、ニ人の驚き、葛藤、喜びがぐるぐると渦巻いて、私は全く身動きできずに、ぎゅ~~~っと緒形さんに集中していました。もちろん涙どーどー流れっぱなし状態で(苦笑)。

 最初はちょっと入っていけないムードもあったので、ついつい映画のことを思い出していましたが、後半(戦場)以降は『白野』の世界一色になれました。
 パンフレットで多数の方が書かれていますが、やっぱりこの作品は緒形拳である、ということなのだと思いました。

 会場はシアターコクーン内特設小劇場TheatrePUPA(ピューパ)ということで、コクーンの舞台上に舞台と座席が作られていました。私は『ゴドーを待ちながら』でも体験しました。楽屋口が劇場入り口になっており、細い通路を通って舞台へと向かうのは結構わくわくしますね。ロビーでは戯曲本や緒形さんの本などの物販があり、コクーンのロビーでは緒形さん及び親国劇ゆかりの品々が展示されていました。

STUDIOコクーン・プロジェクトVol.4
≪東京、茨城、山形、岩手2ヵ所、北海道5ヵ所≫
出演:緒形拳 楽師:ウォルター・ロバーツ(チェロ)
原作:エドモンド・ロスタン「シラノ・ド・ベルジュラック」 演出:鈴木勝秀 音楽:朝比奈尚行 訳:楠山正雄/辰野隆 翻案:額田六福/澤田正二郎 構成:島田正吾 美術:二村周作 照明:倉本泰史 音響:井上正弘 舞台監督:眞野純 スーパーバイザー:梶川芳友 演出部:河本昌洋/五木見名子 演出助手:安倍洋平 衣裳協力:松竹衣裳 音楽享禄:鈴木光介 企画・製作:Bunkamura
7/15(土)発売 指定席(椅子)6,000円/自由席(桟敷)5,500円 9/23~追加席発売
公式=http://www.bunkamura.co.jp/

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Posted by shinobu at 2006年10月17日 21:33 | TrackBack (0)