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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2006年11月06日

Port B(ポルト・ビー)『一方通行路~サルタヒコへの旅~』11/2, 3, 5, 6, 10, 11豊島区巣鴨地蔵通り

 Port Bは高山明さんが構成、演出を手がけられる芸術集団のようです。高山さんはアートネットワーク・ジャパンレジデント・アーティストですね。
 小さなMP3プレイヤーを首から提げ、イヤホンから指示を聞きつつ、一人で巣鴨地蔵通りを歩くという企画でした。所要時間はおよそ1時間30分、ほぼずっと歩きどおしです。タイトルどおり一方通行路ですので、帰り道は自由行動になります。

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 そもそも巣鴨という土地に降り立ったのが、私には初めての体験でした。この企画に参加しなければ一生行かなかったかもしれません。自分でトコトコと商店街を歩いていくので、鑑賞ではなく参加なんですよね。チケット代ではなく「参加費2500円」となっています。

 終わったときの感想を一言で表すならば、“不愉快”ですね、残念ながら。「自分自身の旅へと行ってらっしゃいませ」というスタンスのようですが、参加者は指示通りに動くのですから明らかにお仕着せです。

 でも、全部が全部いやな体験だったわけではありません。旅がはじまってすぐに「向かって右に○○○店」「その隣りは×××屋」などと、イヤホンの声が店の名前だけを読み上げた時は、すごく感動しました。文字や絵で(視覚で)認識していたものが人間の声で読み上げられた時、その存在が立体的に、人間と関係のあるものとして立ち上がってくるように感じました。
 また、巣鴨という町を見ることができたこと、市松人形館に入れたこと(入館料が1,400円以上)など、体験したこと全てを足せば、参加費2500円よりは絶対にお徳でした。

 ここからネタバレします。

 約1時間の音源には、巣鴨の町に住む方々のインタビューや朗読も入っています。歩くスピードを計算して、道に迷わないように誘導するために、きっと何度もこの商店街を歩いて作られたのでしょう。準備にも実行にもすごく時間と労力がかかっている企画だと思います。

 無理やりに自分自身と向き合わせようとする仕掛けに閉口しました。参加者が自然と自分自身と向き合いたくなるように誘導するならまだしも、望んでも頼んでもないのに私の姿を撮影(動画と静止画の両方)し、私の声を録音し、私に押し付けます。監視されて盗撮されて、一体どうして自由な散歩などできるでしょうか。そして、そういった行為について、なんの断りもありません(失礼ながら、撮影・録音させていただきました/このデータは必ず処分します等)。私は私のデジタルデータを誰に見られるのか、聞かれるのかわからないという不快感に、今もさいなまれています。 

 自分が見た夢の話と、心に残る出会いについて話す時間がありました。聞かれたとおり、かなり正直に真面目に話しました。自分に質問をしてくれて、話も聞いてくれるというのは悪い気分ではありません。でも、それが何かのための布石・伏線だったのかもしれないと思うと、正直に話すんじゃなかったと少し後悔しています。

 夢の話を聞いてくれた人はお名前もおっしゃってくださったし、きちんと私の話を聞いて反応もしてくださっていました。でも自分がいかにネクラかということを再確認するはめになりました。まあ、そんなもんですよね、夢なんて。今朝見たのがひっどい夢だったんですよ(ボケた老婆が介護とは名ばかりに虐待される等)。
 出会いについて話した時はただ聞かれるだけで終わったので、ちょっと損した気分になりました。なぜ私に全く興味のない人に、こんなに赤裸々に話をしなけりゃいけないんだろうって。するとその後すぐに、その時に私が話したこと全てをヘッドフォンから聞かされるという、めちゃくちゃ不愉快なことをさせられました。自分の声の録音を聞くことで自分自身と向き合うだろうと考えたのかもしれません。そんな風に簡単に主催者側の思惑どおりにはならないでしょう。
 私はラジオの仕事もしているので自分の声には慣れていますが、仕事の時よりも自然に語ってる時の声の方がいいなーと確認できたのは良かったです。 

 旅の終着駅(目的地)は庚申塚の『猿田彦大神庚申堂』でした。受付の人にMP3プレイヤーを返却すると、この企画のパンフレットとたい焼き&コーヒーの割引券などをいただきました。「パンフレットには今回イヤホンで流れていたテキストが書かれています」「よかったら読んで、考えてみてください」と言われ、興ざめでした。人間は考えたくなった時、勝手に考えています。それは自分で選択することであって、勧められてやることではありません。「参加者に町について、時間について、自分について、考えさせること」がこの企画の目的だったのかしら。参加者の上に立ってものを言ってるように感じます。

 パンフレットに書かれたテキストの文字は、大きさやフォントがまちまちで、さらに文字同士で重なったり、つまりカッコ良く(?)デザインされており、とても読む気になどならない模様です。そしてその紙の裏には写真が印刷されています。たい焼き屋で座っている私の後姿でした。盗撮されて、印刷されて、受付の人はそれを見ていたわけです。非常に不愉快でした。

 嬉しかったのは、ワイルド&セクシーなルックスで、ちょっとハスキーヴォイスのお姉さんが、私だけのために中島みゆきの『時代』を歌ってくれたこと。心づくしのおもてなしを受けました。10曲弱のレパートリーの中から歌ってほしい歌を選んだんですが、日本のヒット・ポップスばかりで残念(私の次の人も『時代』を選んでました)。「おまかせ」とかがあっても良かったのではないでしょうか。私としてはジャズとかシャンソンとかを歌ってもらいたかったですね。

ツアーガイド=青木純一/暁子猫/井上達夫/猪股剛 受付カウンター=高山明/林立騎 現地スタッフ=穴原香菜子/片岡美佐子/片山由有子/郷田真理子/坂本ゆり/田中智佳/中川ゆかり/根岸久美子/針貝聖司/檜山知美/外薗大志/増田豪介/宮井浩行/三輪冬子/森山恭平/横山綾子 構成=高山明 ドラマトゥルク=林立騎 サウンドスケープ=Port B 技術=井上達夫/宇賀神雅裕/三行英登 宣伝美術=三行英登 制作=高山暁子 制作協力=大久保聖子(NPO法人アートネットワーク・ジャパン) 主催=Port B 助成=東京都歴史文化財団 後援=豊島区 協力=巣鴨地蔵通り商店街振興組合/にしすがも創造舎(豊島区文化芸術創造支援事業)
出発時刻:各日12時~16時 10分間隔(各回1名様ごと/要予約・所要時間約60分) コース:巣鴨地蔵通りおよび庚申塚周辺 受付会場:アルプス カフェ
予約受付:10月1日(日)~ 参加費:2500円 当日参加:3000円
公式=http://portb.zone.ne.jp

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Posted by shinobu at 2006年11月06日 16:00 | TrackBack (0)