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Shinobu's theatre review
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2006年12月25日

王子小劇場トリビュート001畑澤聖悟/王子小劇場プロデュース『俺の屍を超えていけ』12/20-24王子小劇場

 渡辺源四郎商店畑澤聖悟(はたさわ・せいご)さんの戯曲を3本連続で上演する王子小劇場の企画です。第一回目は日本劇作家大会2005熊本大会・短編戯曲コンクール最優秀賞を受賞した『俺の屍(かばね)を超えていけ』。時間堂の黒澤世莉さん(過去レビュー⇒)が演出されました。

 12/23(土)19:30の回終演後のポスト・パフォーマンス・トークに出演いたしました。司会なんて初めてだったんですが、お客様の暖かいまなざしと、真面目にたくさん話してくださった出演者の方々のおかげで楽しい時間になりました。ありがとうございました。

 12/26(火)からいるかHotel『月と牛の耳』、1/4(木)から渡辺源四郎商店『素振り』が開幕します。両公演とも初日にポスト・パフォーマンス・トークが予定されておりまして、私は両方伺うつもりです。

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 レビューをアップしました(2006/12/27)。

 ≪ものがたり≫ 時間堂公式サイトより。(原田紀行)を追加。
 あるローカル放送局の会議室に6人の若手社員が集められた。彼らは社長より密命を与えられている。
 入社二年目、制作部の三沢(こいけけいこ)のいる会議室に、三年目の報道部、松島(黒岩三佳)が入ってくる。陽気に話す二人だが、どこかしら気が重そうだ。三沢と同じ入社二年目、技術部の北上(玉置玲央)は、純朴な組合の青年。次にあからさまに不機嫌なアナウンサー部の郡山(葛木英)、若手で一番のやり手で、三沢の上司にあたる制作部の本荘(原田紀行)も入室してくる。最後に正義漢の組合員、営業部の東根(森下亮)が、大口の営業を成功させたと入室し、全員がそろった。
 ●●●を1名、この場で決定しなければならない。かくして気の重い話し合いが始まるのであった。
 ≪以上≫ 

 会議室を舞台にしたワン・シチュエーション会話劇です。「こういう話し合いがあること自体が、いけないことだ」と誰もが思っているのだけれど、会社勤めのサラリーマンは上司の強い要求には逆らえません。登場人物それぞれの葛藤は納得のいくものばかり。現実をしっかり見つめて筋を通しながら、主張も堂々と盛り込んだ戯曲でした。作家の男気を感じます。

 上演時間は短めの80分でしたが、45分経ったぐらいから突然空気に緊張が走るようになり、一人ひとりの感情が渦のようにぐるぐると回って高まっていって、終盤は何がなんだかわからなくなるぐらいに、私の気持ちも、頭も熱くなってしまいました。それが涙になって、ほろり。

 前作でも感じましたが、黒澤さんの演出は役者さんの感情を自由に、際限なく動かせていくように思います。『エンジョイ』でも確信しましたが、人間の感情を無視した行動(政策)なんて、うまく機能するはずないですね。意味が分からない感情の盛り上がりに、こんなに影響されるのですから。私が生きてきた環境では、論理的、理性的、建設的、理知的などと表現されるような話し合いや係わり合いがもてはやされてきたように思いますが、それは正しいわけじゃないと、今、強く信じられます。

 人間の感情にフォーカスすると、少なからず私に影響を与えてくれた作品でしたが、登場人物のバックグラウンドなどに目をやると、穴はあったと思います。寒い地方のラジオ局で働く若手会社員たちの人間関係について、曖昧なままで腑に落ちなかったり、もっと掘り下げるべきだと思うこともありました。

 お芝居には関係ないんですが、今の私の職業は自営業(フリーランス?)になるのかな。自分の職歴を振り返ってみたら、サラリーマン、派遣社員、アルバイト、無職(笑)、そして経営者(会社つくったりしたから)などを経験しましたね、それぞれ短いスパンですが。サラリーマンだった期間が一番長いです。たぶん楽だったからでしょうね。でももう絶対になれないけど(笑)。

 ここからネタバレします。

 フランス帰りの新社長の命令は、幹部社員の中から一人、リストラ対象(クビ)になる人を選ぶこと。決められた時間内に選べなければ、会議に呼ばれた6人の中の1人がクビになります。やり手の本荘(原田紀行)主導で会議は進み、本荘の同期で営業部の東根(森下亮)が反発するものの、無記名投票の多数決で1名が選ばれてしまい・・・。

 会社の中の希薄な人間関係が、クビの危機を共有することで接近・衝突していきます。言葉よりも身体(動き)よりも、それぞれの感情の高まりに圧倒されて、私の気持ちがコントロール不能になりました。三沢(こいけけいこ)の今にも泣き出しそうな、ぐしゃぐしゃの表情に引き込まれました。
 最後は三沢と北上(玉置玲央)のほっこりとしたラブ・シーンになるかと思いきや、やはり感情は収まらず、熱くなったまま突然に終幕。個人的にはもっと長い暗転が欲しかったですね、涙が流れっぱなしだったから(苦笑)。

 松島(黒岩三佳)は報道部なんですね。でもどういう仕事をしている人物なのかがわかりませんでした。松島とアナウンサーの郡山(葛木英)、制作部の三沢(こいけけいこ)の3人の女性社員の位置関係が曖昧なままだったように思います。あと、薄着すぎる気が・・・。
 本荘(原田紀行)と東根(森下亮)の対立はもっと深める必要があったのではないでしょうか。特に東根は営業部なので、会社の外側を担う仕事です。ものづくり(音づくり)をしている他のメンバーとの温度差というか、仕事の質的な違いをもっと見せてほしかったですね。
 一番下っ端の技術部の北上(玉置玲央)が「僕はみんなのものです」という意味のセリフを2回言うのですが、意図がわかりづらく、もったいないと思いました。

 「俺の屍を超えていけ」って、ムネさん(進んでリストラ対象になったベテラン職人)の言葉かな~。泣けるゼ。

 ※12/26のポスト・パフォーマンス・トークで畑澤さんがおっしゃっていたのですが、出演者が6人なのはロシアン・ルーレットだからだそうです。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:黒澤世莉/原田紀行/森下亮/玉置玲央/高野しのぶ(司会)

 まずこの作品および企画について説明し、作品自体とお稽古について、一人ひとりに質問をしていきました。
 工夫したのは、舞台に上がる人全員の名札をつくったこと。役名、役者名、所属劇団を明記しました。さまざまな劇団の役者さんを集めたプロデュース公演であることを、文字とトークでわかりやすくお伝えしたかったからです。

出演=葛木英(メタリック農家)/黒岩三佳(あひるなんちゃら)/こいけけいこ/玉置玲央(柿喰う客)/原田紀行(reset-N)/森下亮(クロムモリブデン)
作=畑澤聖悟 演出=黒澤世莉 舞台監督=松下清永 照明=工藤雅弘(Fantasista?ish) 舞台美術=近藤麗子 宣伝美術=村山泰子(時間堂) スチール撮影=松本幸夫 ビデオ撮影=藤澤友子 制作=近藤のり子 主催=王子小劇場 共催=時間堂 製作=俺の屍を越えていけ実行委員会 主催=王子小劇場 共催=時間堂
前売2,800円(全席指定) 当日3,000円 学生1,500円(要証明・当日のみ) 中高生グループ割引 3人3,900円(要証明・当日のみ)【王子トリビュート001 3公演共通】北区在住者 / シニア(60歳以上) 1,500円(要証明・当日のみ)王子トリビュート001 3公演通しチケット 4,500円 限定50枚
公式=http://www.en-geki.com/tribute/

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Posted by shinobu at 2006年12月25日 17:24 | TrackBack (0)