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しのぶの演劇レビュー
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2006年03月03日

津田記念日『若葉のとき』03/03-05アイピット目白

20060303 wakaba-no-toki.jpg
若葉のとき

 お友達が関係しているので観に行きました。主催者(劇団)ホームページがない公演を観に行ったのも、アイピット目白に行ったのもすごく久しぶりでした。チラシ画像は関係者から頂戴いたしました。

 関東近郊の田舎の町にある老舗の和菓子屋「若葉」を舞台にした、和菓子職人たちのほんわか心温まるお話でした。

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 開幕から1時間ぐらいが経過した頃だったでしょうか、旅館の若旦那役の辻崇雅さん(ショーGEKIメンズ)が登場し、そこからやっと空気が流れ始めました。役柄になりきって、ちゃんと舞台に立てている役者さんがほぼいなかったからだと思います。本日12時開演の公開ゲネプロ(リハーサル)にお邪魔したしましたので、いわゆる初回ですよね。その緊張もあったとは思いますが、客席の方をしっかりと観ることが出来ず、何かと舞台奥の方ばかり向いてる役者さんが多すぎます。

 和菓子屋の店舗の中の一部屋、職人さんの控えの間が舞台です。ちょっとした戸棚とカラーボックス、テレビ、そして皆がつどうテーブルが、客席に対して斜めに建て込まれた和室に並んでいます。いい感じの四角い空間でしたが、ふすまの建て付けがあまり良くないようで、開けたてがうまく行っていないのは残念。
 おそらく季節としては夏から始まって秋、冬、そして春までを描いています。でも季節感が曖昧でしたね。

 ここからネタバレします。引用するセリフは完全に正確ではありません。

 愛情と尊敬の念を持って、過剰に飾り立てたりすることなく、ありのままの職人というものを描こうとしている、真摯な脚本だったと思います。日本人的な優しさがありました。
 「和菓子は、愛だよね」という、ちょっと照れちゃいそうになるようなストレートなセリフが、何度か語られます。和菓子職人・数原(橋本利貴)が、何年も和菓子を作り続けた末にやっとたどり着いた境地なんですよね。甘いものが嫌いだったのに、父親の跡を継いで和菓子屋社長になった修平(坂口邦弘)が、その言葉を聞いて気づきを得ます。
 おそらく脚本の中でも最も伝えたいことの中の一つだったと思いますが、そういうことこそ、さりげない演出にした方が伝わりやすいと思います。ばばーん!と、大っぴらに出っ張らせて、しかも良さそうなBGMまで流しちゃうと・・・素直に受け取れなくなってしまうのです。

 登場人物はみんないい人で、終始ふんわりとした穏やかな空気が流れるお芝居でした。なので、下ネタがちょっと露骨すぎるような気がしました。言葉がね、ちょっと。その露骨な下ネタが出た時に初めてドっと笑いが起きたんですけどね(苦笑)。言葉の意味だけではなくて、演技でクスっと笑えるところが欲しかったです。

 和菓子職人の中の紅一点の牛島さん(風戸蒔)が、同じく職人の俊介(高橋裕太)にモーションをかけたのにサラっと避けられてしまい、後に残ったもう一人の職人・遊佐(津田拓哉)に対して「吸ってあげる」と思いっきりエッチな提案をします。超真面目で地味で、お世辞にもモテそうだとは思えない牛島さんの中の、奔放でドライな大人の女の一面が表に出てくる、とても魅力的なシーンです。だけど成立してなかったですね~・・・役柄としての一貫性が感じられないからだと思います(牛島さん役だけでなく)。

 ※俊介と遊佐については、本当にその役の名前だったのかが曖昧です。ごめんなさい。

出演=坂口邦弘/春口愛/橋本利貴/高橋裕太/風戸蒔/津田拓哉/長岡利幸/辻崇雅 小学校のアナウンス=鈴木悠子
演出=津田拓哉 脚本=冨士原直也 舞台監督=佐藤大祐 演出助手=前田貴子 舞台美術=阿部恭子 照明=川村ナオ 音響=泉田雄太 音響オペレーター=花嶋弥生 宣伝美術=ナガサワメグミ 制作=吉澤和泉
前売2500円 当日2800円 ※公開ゲネの回のみ、前売1500円 当日1000円 5ステージ(公開ゲネ含む)

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Posted by shinobu at 16:07 | TrackBack

【お知らせ】3月4日(土)夜にFM西東京「たけがき2」に出演します

 FM西東京の演劇情報番組「たけがき2」に出演いたします。毎月第一土曜日のレギュラーです。。
 今回は前半に“しのぶの演劇レビュー”シアターガイド4月号掲載の宣伝と、『若手演出家コンクール2005最終審査 前川知大「トロイメライ」』の感想をお話し、後半は2月に観られるお薦めお芝居を3本ご紹介します。

 西東京市およびその周辺地域でお聴き頂けます。

 3月4日(土)21:30~22:00(の内の約10分間)
 FM 84.2MHz

 たけがき2(ツー):http://takegaki.k-free.net/

Posted by shinobu at 14:51 | TrackBack

シベリア少女鉄道『ここでキスして。』03/01-05紀伊國屋サザンシアター

 土屋亮一さんが作・演出されるシベリア少女鉄道(略してシベ小)。毎回おもしろアイデアで笑わせていただいて、目がひん剥くほど驚かせていただいて、絶対見逃せない!と思っている劇団です。※シベ少作品の過去のレビューはこちらからご覧ください。

 今回は・・・本編(というのかな)で細かい演技のこだわりに笑わせていただき、全体を観終わった時には煙に巻かれた心地でした。が、たまたま一緒に観劇していた方に意外な解釈を教えていただき、「なな、なんと!それは面白い!!」と気づいて、そして帰り道でいろいろ考えさせられました。土屋さん、すごいなー。

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 レビューを最後までアップしました(2006/03/19)。

 制作タカダの芝居制作日記(2006/2/24)によると↓(引用します)
 『シベリア少女鉄道をご覧いただいたことがない方がほとんどだと思われますので
 めちゃくちゃ今さらですが、自己紹介させてください。
 ざっくり例えて言いますと、
 「月9のドラマをボーっと見てて、恋人たちの別れとかのクライマックスシーンで、いきなり七人の悪魔超人が空から降り立ってきたら、そりゃおもしろかろうよ」
 というようなことを毎回手を変え品を変えやっているところです。』
 これは明快!その通りですよね!
 制作さんがはっきりこうおっしゃっているんですから、こんな感じのことを期待して、ぜひ観に行ってみてください。

 さて、恒例です。何を書いてもネタバレですので、これからご覧になる方はどうぞお読みにならないでくださいね。

 ≪あらすじ≫
 田舎の旅館。今日は地元から出た代議士先生(前畑陽平)が宿泊中。旅館の旦那(藤原幹雄)は先生の接待につきっきりでピリピリしている。代議士先生の息子(吉田友則)が遅れて到着した。旅館協会の娘との結婚(結納?)を明日に控えているのだ。実はその息子、本当は父親に無理じいされた政略結婚をしたくないと思っている。昔の恋人のことが忘れられないからだ。板前(横溝茂雄)は息子に「今度もし出会うことがあったら、その娘を連れて逃げちゃえよ!」と励ます。
 若女将(内田慈)は不機嫌な旦那にこき使われながらも、ほがらかに宿泊客をもてなし、新米の仲居(篠塚茜)の教育にも熱心だ。ちょっとヌケているが素直でマジメな仲居に、板前はほんのり恋心を抱いている。でも仲居には、今は会えなくなってしまったが、心に決めた恋人がいるのだ。気のいい板前は、彼女にも「今度もし出会うことがあったら、そいつと逃げるんだぞ!」と励ます・・・・あれ? これって・・・・何か、起こるんじゃない・・・?
 そうだ!実は代議士先生の息子と仲居こそが、その恋人同士だったんだ!!
 再会してしまった息子と仲居は、励まされたとおりに二人で逃げることを決意。親切な若女将と板前は、代議士先生と旦那の目を盗んで、どうにか二人の愛の逃避行を成功させようする。しかし次から次に想定外のトラブルが発生して、嘘に嘘を上塗りしていくはめになり、事態は無関係の宿泊客(出来恵美)をも巻き込んで混乱を極めていく。果たして息子と仲居は無事に旅館を脱出できるのか?
 ≪ここまで≫

 舞台は2階まできっちり立て込まれたリアルな旅館でした。下手にはエレベーターもあります。このあらすじだけでもよく出来た(仕組まれた)シチュエーション・コメディなんですよね。例えば三谷幸喜作品とかレイ・クルーニー作品に似ていると思います。うまく行くはずだったことが、次から次へと予想外の方向に進展(暗転)して泥沼にはまっていき、登場人物の慌てふためく様子がめちゃくちゃ滑稽で笑えるようなタイプです。旅館を舞台にした家族向けのテレビドラマのようにも見えます。こういう、誰もが思いっきり笑えるような無難な(←いい意味で)コメディって大切ですよね。

 よくあるタイプのキャラクターを大げさにデフォルメした演技でつくりこみ、いわゆる上質なコメディの世界を、シュールに笑い飛ばしながら進みます。そしてシベ少の真骨頂である仕掛けがはじまって、クライマックス。
 ※仕掛けについては小劇場系に詳しいです。
 ※作・演出さん日誌によると「元ネタはない」とのこと。う~ん、これを知ってたら戸惑わなかっただろうな~。

 仕掛けが始まる前まではシチュエーション・コメディーのパロディとして見せていたと思います。それはそれでとっても可笑しいです。仕掛けが始まってからは、そのコメディもパロディも両方が、ゲームの中で人形が演じていた嘘だったということになります。
 若女将が「真心をもっておもてなしをする」ことを中居に教育したり、無関係だと思われていた宿泊客の女が実は代議士先生の実の娘で、親切な板前が彼女の自殺を思いとどまらせたり、いわゆる「良い話」をしっかり描きながら、それを「嘘だ」と言い切ってバーチャルなゲーム(遊び)にしてしまうのです。
 私達はいわゆる「良い話」をすっかり鵜呑みにして、さらにそれを常識だと思い込んだりするという、甘い罠に陥りがちです。今作は軽妙に「そんなの嘘だよ」と教えてくれて、さらにその嘘を土台にしてドタバタのお笑い(お約束のコメディ)にまで昇華させていました。

出演=前畑陽平/藤原幹雄/横溝茂雄/吉田友則/篠塚茜/出来恵美/内田慈
作・演出=土屋亮一 舞台監督=谷澤拓巳+至福団  音響=中村嘉宏(atSound)  照明=伊藤孝(ART CORE design) 映像=冨田中理(Selfimage Produkts)  小道具=畠山直子  宣伝美術=土屋亮一 thanks Norimichi Tomita 制作助手=安元千恵  制作=保坂綾子  製作=高田雅士  企画製作=シベリア少女鉄道  主催=ニッポン放送
前売3,200円 当日3,500円(全席指定)★若者割引(25歳以下限定):2,500円 5ステージ
公式=http://www.siberia.jp/

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Posted by shinobu at 00:52 | TrackBack