2006年03月05日
北九州芸術劇場×飛ぶ劇場共同製作『IRON(アイアン)』03/03-05東京芸術劇場小ホール1
『IRON(アイアン)』は第44回岸田國士戯曲賞最終候補になった泊篤志さんの戯曲です。泊篤志さんが作・演出される飛ぶ劇場と、北九州芸術劇場との共同製作作品ということで、5つの地域を回った最後に東京に来てくださいました。
※東京国際芸術祭2006の舞台裏ブログに舞台写真や公演レポートあり。
レビュー⇒↑ますだいっこうのこと↑、タイプRで行こう、デジログからあなろぐ、Somethig So Right
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≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより引用。
胸焦がす脱走劇、再臨。
1999年に飛ぶ劇場で初演され、第44回岸田國士戯曲賞最終候補作となった「IRON(アイアン)」を北九州芸術劇場との共同製作で、満を持しての再演。
日本と朝鮮半島の間に位置し、戦後のどさくさにまぎれて日本から独立した島国「糧流(カテル)」。主産業は鉄鋼業であるが、国民は50年間に渡る鎖国政策の行き詰まりによって貧困と飢餓に苛まれていた。その島国の最大の娯楽は「卓球観戦」。国設卓球部を舞台に国家と個人との狭間で揺れ動く選手たちの人間模様を描く。
≪ここまで≫
架空の島国・糧流(カテル)の国設卓球部が舞台です。
日本とカテルとの関係は、東京と北朝鮮、または北朝鮮と韓国の関係にも置き換えられます(東京と地方との関係でもあるそうです。舞台裏ブログより)
舞台装置にまず感動しました。四角くて愛想のない小さな家が丸く舞台を囲み、その上には金網(鉄条網)が張り巡らされています(舞台写真はこちら)。その家が前後に動くのが効果的で、私はオープニングのシーンで体にしびれが来て、涙があふれました。
劇中で披露される「はなだまき(華玉木?)」という民族舞踊が圧巻です。カテルという実在しない国の伝統芸能を、ここまでリアルに作り上げるなんて・・・「はなだまき」のシーンになる度に、胸に熱いものがこみ上げました。カテルの歴史を昔話の中にきちんとに織り込み、衣裳や踊りについては沖縄、九州、韓国の文化が混ざり合っているように見えました。役者さんの鍛えられた身体も美しかった。これは飛ぶ劇場の公演でしか観られないのではないでしょうか。
簡単なハッピーエンドにはならなかったストーリーにも、心から納得。ただ、↑ますだいっこうのこと↑にも書かれていますように、役者さんの演技についてはちょっと不満もありました。私はわざとらしさを感じる演技に冷めてしまったことが、時々ありました。
≪北九州・伊丹・松本・福岡・熊本・東京≫
東京国際芸術祭リージョナル・シアターシリーズ参加
出演=寺田剛史/永井秀樹(青年団)/木村健二/橋本茜/ 藤尾加代子/鵜飼秋子/門司智美/加賀田浩二/内田ゆみ/佐成哲夫(sanaridance)/内山ナオミ/北村功治/宗像秀幸/桑島寿彦 ※古池記者役ダブルキャスト=葉山太司/藤原達郎
作・演出=泊篤志 美術=柴田隆弘 衣装=内山ナオミ(工房MOMO) 照明=乳原一美 音響=杉山聡 振付=佐成哲夫(sanaridance) 音楽=泊達夫 小道具=山口千琴 特殊小道具=橋本茜(Art Stage-KenTa) 舞台監督助手=森田正憲(F.G.S) 照明操作=岩田守 音響操作=塚本浩平 舞台監督=東孝史 宣伝美術=トミタユキコ(ecADHOC) 広報宣伝=佐藤和久、栗原弓枝 制作=黒﨑あかね、澤藤歩、田上佐和子、国好みづき、鶴元ふみ(飛ぶ劇場)、津村卓
4ステージ 日時指定・全席自由 一般2500円 高校生以下1500円(当日各300円増)チケット発売 1月11日~ ※未就学児童はご入場いただけません。
公式=http://www.tobugeki.com/pc/
東京国際芸術祭内=http://tif.anj.or.jp/regional/re_iron.html
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五反田団『ふたりいる景色』03/03-13こまばアゴラ劇場
前田司郎さんが作・演出される五反田団。前田さんは2年連続で岸田國士戯曲賞の最終選考に残っています。小説も書かれていますね。有名になってもチケット代は1500円。小劇場演劇界における、ひとつの基準になり得るのではないでしょうか。
今作は率直に笑える箇所かなり多く、そして私は『キャベツの類』に続いて涙ボロボロ~っ・・・。1500円でこんなに面白いお芝居が観られるなんて感動的です。一般のお客様はもちろん、演劇をやっている人にもぜひご覧いただきたいですね。
レビュー⇒休むに似たり。
≪あらすじ≫
万年床のこきたない部屋。撮り終わったフィルムが散在している。何もしない男(金替康博)と、一緒に住んでいる女(後藤飛鳥)。男はゴマしか食べない。いずれは自分のおしっこのみに切り替えて、即身仏(そくしんぶつ)になると言う。
≪ここまで≫
幕開けすぐの「ゴマ食べてると、体がきれいになっていく気がするよね」というセリフで、めちゃくちゃ笑ってしまいました。だって金替康博さんのあの笑顔!見たことないよ!MONOや青年団公演等での金替さんと違うんです。そういえば五反田団常連の黒田大輔さん(THE SHAMPOO HAT)に似てるかな。
布団の上から全く動こうとしない男と彼の面倒をみている女が、だらだらドロドロとしてる部屋に、女の友人(望月志津子)が訪ねてきます。始めの方のシーンでは設定および登場人物の紹介をしつつ、すっとぼけた笑いがいっぱいでした。単純にすごく楽しめました。そして4人目の登場人物が・・・(笑)。ネタバレするので後ほど。
優しいけれど臆病で、そして欲深な人間は、
「そばに居たいけど、そばに居たからといって常に満たされるわけじゃない。つながりたいけど、つながったままではいられない。だったら、いっそのこと一人でいる方がいいんじゃない?だって二人で居ることが、もしかすると相手にとっては迷惑かもしれないし、相手は他の人と一緒にいた方が幸せかもしれないんだから・・・。」
・・・という風に考えがちです。私もそんな状態に陥るタイプかも・・・(恥ずかしい)。でもこのお芝居の後半で、
「ふたりが一緒に居る、その状態だけで、すでに幸せじゃないか」
と、にっこり笑いかけられたように感じて、私はそんな簡単なことに再び気づかされ、涙を流しました。一緒に居られれば、楽しい時ににっこり笑い合えれば、それだけで幸せです。
ネタバレします。
女2人が退場して男が1人で部屋にいる時に出てきたのは、傘を持ってしゃなりしゃなりと歩く、着物姿のゴマの精(立蔵葉子)でした。「ゴマを大切にしているから」と言ってやってきたゴマの精の自己紹介に爆笑しました。「ゴマの方から来た、ゴマの精です」・・・「ゴマの方から」て(笑)。
「即身仏になる」と言って部屋から一歩も出ず、ゴマだけを食べて、しまいには自分のおしっこを飲むだけに移行しようとしている男に、恋人の女は「自殺まがいのことはやめて」「あなたが死んだら私はどうなるの?」と言って、止めようとします。でも男は全く聞く耳を持っていません。堪忍袋の緒が切れた女は、とうとう荷造りをして部屋から出て行こうとするのですが、男は引き止めようともしません。女は「なんで引き止めないのよっ!!」と激怒して、いわゆる男女の痴話げんかが始まるのですが、それがとても可愛らしく、ちゃんとコメディーとして笑える構造になっています。私は金替さんと後藤さんとのキュートなケンカを微笑ましく眺めながら、男と女の間にある越えられない壁、底が見えないほど深い溝を見せ付けられているような心持ちになり、胸が痛みました。
とうとうひとりぼっちになってしまった男のところには、ゴマの精がやってきます。しかしゴマを食べなくなっておしっこを飲むだけの生活になってからは、ゴマの精もめったに来なくなります。そして男は感じるのです。「寂しい」と。
過去なのか未来なのか、それとも男が死ぬ間際に見た夢なのか、男と女が一緒に温泉旅行に行くシーンになります。相合傘をして二人一緒に空を飛ぶことを空想するシーンは、まさに『ふたりいる景色』でした。たあいもない話をして、二人が笑いあっています。なんて幸せなんだ、これが幸せなんだな。
旅館の夜。二人は布団に入って話をします。下記、かろうじて覚えているセリフです(正確ではありません)。もぞもぞと、何度も同じ言葉を繰り返しながら、とても素直な気持ちで二人が語り合っていました。こんな対話がしたい、と心から思いました。
女「私はあなたで私を埋めようとしているのに、あなたはあなたで自分を埋めようとしている」
男「ちょっと、どうしていいのか、わかんないんだよ」
「(そばにいても)役に立っているのかわかんないし、必要なのかもわからない」
「火星みたいなところで一人になりたい」
「でも寂しいんだよ」
「寂しいっていう理由だけで、空洞を埋めるために、そばにいていいってこと?」
女「ただ、そばにいればいいんだよ」
出演=金替康博(MONO)/後藤飛鳥(五反田団)/立蔵葉子(青年団)/望月志津子(五反田団)
作・演出=前田司郎 照明=前田司郎 照明アドバイザー=岩城保 宣伝美術=藤原未央子 制作=榎戸源胤/吉田悠軌/塩田友克
16ステージ 予約・当日ともに1500円 2006年2月3日(金)予約開始
公式=http://www.uranus.dti.ne.jp/~gotannda/
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リュカ.『WHITE PHASE』03/02-06王子小劇場
リュカ.初見です。文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を受賞した戯曲の10年ぶりの再演で、劇団民藝でも上演されたことがあるそうです。
作品のジャンルとしては、いわゆる「静かな演劇」に入ると思います。王子小劇場の天井の高さと色、質感を存分に利用して、劇場空間自体が現代アートのオブジェのようでした。
≪あらすじ(さわりだけ)≫
植物園を併設している郊外の研究所が舞台。新しくてきれいな研究所に集まった若い医師たちは、新薬の研究にいそしんでいる。ある日、所長を訪ねて昔の同僚がやってきて・・・。
≪ここまで≫
隔離された感のあるこぎれいな空間で、たんたんと会話がつむがれていきます。シーンは割と細かく分けられていて、二人芝居のように少人数で対話を見せることが多かったです。全体的にひんやりとしたムードでした。でもシーンの切れ目で流れる音楽は、明るい音調で軽いリズムのものが多く、そのギャップが意外で少し気になりました。
登場人物一人一人にじっくりと焦点を当てて、こつこつと丁寧に、その人自身やその周りの人々との関係を見せていきます。すごく長いセリフもありますし、ぎりぎりとした人と人とのぶつかり合いを見せることも多いので、観ていて結構、緊張が続くんですよね。その意味で、上演時間が2時間あったのは長いと思いました。
ここからネタバレします。
落合(大塚秀記)が高田(境宏子)に、彼女に届いた手紙が誰からのものだったのかを聞き、それが高田の妹からだった(男からじゃなかった)と知って、ホっと安堵した時の表情がすっごく良かったです。私はやっぱりロマンティックなものとか、温かいものとかが好きなんですよね。
ポストパフォーマンストークで作・演出の渡邊一功さんのお話が聞けました。戯曲を書いたのは23歳の頃だったそうで、それは早熟だなーと思いました。
劇場の壁面をほぼ完全に多い尽くしていた、布のような紙のようなものの材質についての質問がありました。美術の太田創さんがわざわざ灰色に染める前の現物を持って舞台上に来てくださり、お答えくださいました。「麻と石膏(だったかな?)をビニールで挟んで、上からアイロンをかけたもの」だそうです。あの量を全部アイロンがけ?!・・・・凄いです。舞台美術は圧巻です。
文化庁舞台芸術創作奨励特別賞作品 ~王子小劇場提携公演~
出演=境宏子/増戸香織/池田ヒロユキ/こいけけいこ/宇和川士朗/山田佑美(無機王)/大塚秀記(つよしとひでき(trf))/中川智明/中田顕史郞
脚本・演出=渡邊一功 舞台・宣伝美術=太田創(01Ga) 舞台監督=小林英雄(Anjuta・Arts) 照明=兼子慎平 音響=宮崎淳子 衣裳=華咲薫/景山育美 制作=安田有希子(axis) 企画・製作=リュカ.
前売2,500円 当日2,800円 グループ割引=2,200円(1名)※グループ割引は2名様以上でご予約のお客さまが対象となります。
7ステージ
公式=http://www.lyka.net/
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