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しのぶの演劇レビュー
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2007年06月09日

松竹・Bunkamura『コクーン歌舞伎第八弾「三人吉三」』06/07-28シアターコクーン

 コクーン歌舞伎『三人吉三(さんにんきちさ)』はメルマガ2007年6月号のおすすめNo.1作品です。2001年の公演では生まれて初めてスタンディング・オベーションをしました(過去レビュー⇒)。

 大詰めでやっぱり震えました~!他では絶対観られないと断言できる舞台ですね(笑)!上演時間は約3時間30分(10分、15分の2回休憩を含む)。
 
 ⇒CoRich舞台芸術!『三人吉三

 吉三(きちさ)という同じ名前を持つ悪党3人(和尚吉三:中村勘三郎/お嬢吉三:中村福助/お坊吉三:中村橋之助)がある橋の上で出会い、兄弟の契りを交わします。偶然に出会ったはずなのに、それぞれの人生の因縁が重なり合って・・・。
 約6年を経た今回は2度目ということもあって複雑な人間関係がスムーズに理解でき、じっくり見せる・聞かせる演技とセリフを密度濃く味わえたように思います。筋書きは最初から知っておくといいですね。あらすじが載ってるサイト⇒

 ニューヨーク公演があるんですね。チラシやポスターのビジュアルをコラージュしたデザインの緞帳(っていうのかな)が可愛らしかったです。「sannin-kichiza」って書いてたような。

 役者さんが客席に入り込んで演技する演出がいっぱいあります。桟敷席の特権ですよね~。お客様と一緒に遊びながら、しゃんと立って一線を引いているのが歌舞伎役者さんのすごいところですね。

 一幕では丸い回り舞台が水の池になっています。青っぽい緑色の水に照明があたって、反射した光が舞台美術の壁に映ります。その色が緑と白がまざったような少々おどろおどろしい色合いで良かったです。
 
 ここからネタバレします。

 敵討ち、親類殺し、兄妹の交わり(畜生道)などが複雑に絡み合ったお話です。本物のワンちゃんが出てきて思わず「ワオッ♪」って言っちゃったよ(笑)。「犬の報い」がこの物語の軸になっていることがわかりやすかったです。和尚吉三の父(笹野高史)の過去の犯罪(刀を盗んで犬を殺したこと/その犬はメス犬でお腹に子犬をはらんでいたこと等)が消えずにずーっと大きな影響を及ぼしていることを、胸に留めておくことができました。奥の間で寝ている男女が双子の兄妹だと気づいてしまった時の、父(笹野高史)の演技が渋かったですね。ストーリーがわかりやすかったおかげで(2度目だからでもありますが)、そういう細かいところを楽しむことができました。

 十三郎(中村勘太郎)とおとせ(中村七之助)がばったり出会って一目ぼれするシーンの美しいこと!一目ぼれってこういうことだよねって実感しました。心がふるふる震えて身体にジンジン来ましたね。七之助さん、ほんとにきれいだ。勘太郎さんの純朴さがあるからこそ、ですよね。

 福助さん演じるお嬢吉三は少女の姿で盗みを働く男です。女と男の声色の演じわけが面白いほど鮮やか。おとせ(中村七之助)の胸元の財布を盗むお嬢吉三の白い右手が恐ろしいほど白くて・・・一体なんだろ、あの手。あの動きとかぐわしさ。未だにアニメーションみたいにパラパラと動きがよみがえります。

 福助さんといえば大詰めも凄かったです。やぐらに登って太鼓を叩く姿には、愛しい人に会いたくて放火をした「八百屋のお七」の姿が重なります。白い空間に紙吹雪がドッサドッサ吹き荒れる中、赤い着物も髪も振り乱し、ばっさばっさと大暴れのたち回り。純白の広い空間で鮮やかな赤が目に焼きついて、私はあっけに取られたように口をあんぐり開けながら、涙をこぼしていました。

 ラストは3人の吉三がうつぶせに重なり合って舞台中央に倒れているのを、パッ!パッ!と色んな白色に変化する照明で空間ごと照らします。私が感じたのはテクノポップと宇宙のイメージ・・・?なんて刺激的な演出でしょう(笑)。
 音楽は女性ボーカルの邦楽が使われていましたね。オープニングなどに流れたエレキギターのノイズ音のようなインストゥルメンタルはかっこいいなと思いました。ささやくような歌声が聞こえるラストの曲は、「おやすみ」という歌詞がシーンの意味に合っていましたが、ちょっとやりすぎなんじゃないかなと思いました。アメリカでは受けるかもしれませんね。
 ※ラストの曲は椎名林檎さんの書き下ろし曲「玉手箱」だそうです。歌舞伎美人サイトより(2007/06/14加筆)。

 気になったのは2幕のお寺のシーンで、舞台中央の照明器具が何度も上がったり下がったりしたこと。どういう効果があったのかな~。下に敷かれた布の色が変わってたのかしら・・・。見た目に美しい演出ではなかったように思います。

出演=中村勘三郎/中村福助/中村橋之助/中村勘太郎/中村七之助/片岡亀蔵/笹野高史/ほか
作:河竹黙阿弥 演出・美術:串田和美  主催:松竹・Bunkamura 製作:松竹
2007/4/22(日)発売 1等平場席 ¥13,000 1等椅子席 ¥13,000 2等席 ¥9,000 3等席 ¥5,000(税込)※4歳以上入場可。
http://www.bunkamura.co.jp/

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Posted by shinobu at 2007年06月09日 15:16 | TrackBack (1)