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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年05月18日

エリーコーポレーション『返り花』05/15-19三越劇場

 ご縁があってものすごく久しぶりに三越劇場にお邪魔しました。2002年以来!やっぱり内装がゴージャスで素晴らしいわ~。
 休憩25分を挟む人情もの(?)の現代劇でした。上演時間は3時間ぐらいあったんじゃないかな・・・って、うろ覚えです。最後はやっぱり主役の男優さんの歌がありました。参っちゃうな(笑)。

 ≪ストーリー≫ 公式サイトより。 (役者名)を追加。
開発の波に乗り遅れてしまったと在る都会の片隅。主人公太一(石橋正次)はエリート銀行マンであったが、銀行側の命令で自宅謹慎を仰せつかっている。過去、仕事一筋に生きてきた太一の身の上に様々な災難が降りかかります。今の世の中の忘れ去られた戦後の人間愛・家族愛がここにあります。
 ≪ここまで≫

 主人公はバブル時代のツケがまわって来たエリート・サラリーマン。会社のために身を粉にして働いてきたのに、会社は都合が悪くなると簡単にクビを切ろうとする・・・。新劇や小劇場演劇でもよくテーマになってきましたが、三越劇場みたいなところでも上演されるんですから、それぐらい日常的な、当たり前のことになっちゃったってことなのでしょうか。

 予想(覚悟)はしていましたけど実際に体験すると強烈な客席でしたね。まず年齢層がものすごく高いです(劇団民藝よりも)。マダムは上演中も客席で思いっきりおしゃべりしてますし、サンドイッチも召し上がります。場面転換で暗転する時、びっくりするほとシーンに合っていない大団円な音楽がかかります。そしてなぜか観客が拍手。うー。

 演出といえるものは作用していなかったですね。集中して見る必要を感じませんでした。一緒に観に行った方が「テレビの再現ドラマみたい」とおっしゃって、まさにその通りだなと思いました。

 ここからネタバレします。

 元エリート銀行マン・太一とその妻と娘、太一の弟(叔父)と妹(叔母)・・・という家族に加えて、太一と因縁がある(と後からわかる)小料理屋の女、そして元船頭だった老人らが登場します。
 汽車の運転手だった(かな?)父親の幽霊が、仏壇の裏から登場するのは可愛かった。「誇りを持て」という幽霊の言葉はありきたりではあるけれど正しいし、私もがんばろうと思えました。

 女子高生の娘の描き方に納得がいきませんでした。ダンスを勉強するためにアメリカに留学したいと思っていて、いつも携帯を肌身離さず持っているような17歳の若い女の子が、「弟と起業するから留学を1年待って欲しい」という父の奇想天外な願いをあんなにすんなり受け入れるのか。そして鶏ビジネス(?)をやるために田舎に引っ越して「すっかりあの土地の生活に慣れる」のか。しかも父と母は2人で伊豆に住むんでしょ?じゃあ娘は叔父と2人で田舎暮らし!?あんなチャランポランな叔父が真面目に働くなんて・・・ありえないよな~。
 脚本家の方は基本的に、子供は大人よりもバカで親に従順なものだ(そうあるべきだ)という考えを持っていらっしゃるんじゃないかと思いました。会社に「都合が良すぎるゾ」と物申しておきながら、子供に対してやってることは企業と同じなんじゃないのかな。 

出演:石橋正次/吉沢京子/西崎緑/小宮健吾/佐々木剛/亜蘭美香 /田村元治/柴崎まり子/鶴見卓三/大本麻鈴/根岸光太郎/萌乃智子/小林真二/本倉さつき/摩耶聖子/仲野智美
脚本:阿部照義 演出:吉村忠矩 
前売開始 2007年4月1日(日)午前10時~  6,000円(全席指定・税込)
http://www.elly-pro.com/

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Posted by shinobu at 16:56 | TrackBack

チャリT企画『アメリカをやっつける話』05/17-21王子小劇場

 楢原拓さんが作・演出されるチャリT企画早稲田大学演劇研究会(通称:劇研)出身の劇団です。私はこれが3度目(過去レビュー⇒)。超満員の初日でした。
 キャッチーな(笑)タイトルですよね。パンフレットによると上演時間は1時間30分(私は未確認)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『アメリカをやっつける話』 

 ≪あらすじ≫
 場所はある大学の地下の部室。ときは新入生歓迎会がさかんに行われる4月。新入部員を獲得しようとアメリカ研究会のメンバー全員が張り切っている・・・かと思いきや、実はサークル内は分裂しており・・・。
 ≪ここまで≫

 サークル間・内の派閥争いを主軸に、和気あいあい、喧々諤々、走って暴れて、アメリカをやっつけようとするお話。隠喩がいっぱいあるものと期待していたのですが、それほど意図されてはいなかったようです。中盤以降、予想できない展開が生まれてググっと劇空間が盛り上がるのですが、最終的に大人しく収まってしまった感、大。結果、終始ストイックに組み立てられた前作『アベベのベ』の方が私には面白かったですね。でもアイデアや設定はとても面白いと思いました。

 舞台をどんどこ走り回るライブ感や役者さんがぶつかり合う熱さが、学生演劇っぽくて楽しめました。でもしたたかな狙いをもって作っているようには見えませんでしたので、できれば今後はそのあたりの洗練も観たいなと思います。

 ここからネタバレします。

 爆弾が落ちたような音が鳴って、部室が何度か停電します。すると本土決戦に備えて「鬼畜米英!」と叫びながら訓練する防空頭巾を被った女(内山奈々)が登場するので、昭和20年の日本と平成の今が混ざってきたのかと思いました。そしてアメリカをやっつけるための巨大ロボットを操作するリモコンを探し、奪い合う・・・というフザけた展開になります。これがすごく面白かったんですよね。ブッシュ(おそらく現ブッシュ大統領)が来日するという架空の設定、あるコミュニティ(アメリカ研究会)の崩壊、反戦モノの常套手段である過去と現在の交差に加えて、子供向け戦隊モノの王道まで盛り込まれるんですから。しかも役者さんが舞台を走り、暴れまわるので疾走感・躍動感もあります。

 でも実際は爆音ではなくカミナリの音だったそうです。演劇サークル(「凶器の桜」を上演)が中庭の桜の木を切り倒したことのバチが当たり、木のそばに居た学生だけが錯乱状態になっていたということでした。んー、わかんなかったな~。爆音だと勘違いしたおかげで作品世界がものすごく広がったので(勝手な言い分ですが・笑)・・・桜の木を元に戻した(といってもアロンアルファでくっつけた程度)途端に、夢から覚めたように元の状態に戻ったのはもったいないなと思いました。あのまま突っ走ってしまって良かったんじゃないでしょうか。

 アメリカ研究会はアメリカについて真面目に研究する社会部(冠仁、小杉美香、熊野善啓)と、Nintendo Wiiで遊びまくる文化部(松本大卒、秋吉孝倫、下中裕子、竹内洋介)と、語学部(角田ルミ)に分裂しており、特に社会部と文化部との間で意見が対立しています(立て看板の撤去について等)。
 “アメリカをやっつける話”は文化部の米良(冠仁)、利香(小杉美香)、新入部員の阿久津(熊野善啓)の名前から来ていました。⇒阿久津のア、米良のメ、利香のリカ。

出演=松本大卒、内山奈々、伊藤伸太朗、高見靖二、冠仁、下中裕子、秋吉孝倫(乞局)、角田ルミ、竹内洋介、小杉美香、熊野善啓、楢原拓、長岡初奈(新人)
脚本・演出=楢原拓(chari-T) 音楽=YODA Kenichi 舞台監督=甲賀亮 照明=伊藤孝 (ART CORE design) 音響=島貫聡 音響操作=樋口亜弓 宣伝美術=BLOCKBUSTER 制作=チャリT企画
【発売日】2007/04/15 前売=2300円(日時指定整理番号付き) 当日=2500円 ○学生割引=前売当日共に1800円(劇団のみ取扱い・要学生証掲示) ○失業者・障害者=無料(要証明書類)
http://www.chari-t.com

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Posted by shinobu at 13:21 | TrackBack

ナイロン100℃『犬は鎖につなぐべからず』05/10-06/03青山円形劇場

 7つの岸田國士(きしだ・くにお)作品をある町内で起こったお話としてまとめた、ナイロン100℃の本公演。“日本の近代劇の創始者”といわれる岸田國士戯曲を7本一度に味わえるお得な公演、とも言えますよね。上演時間は10分の休憩を含む3時間。当日券が出ていました。

 空調が寒かったので休憩時間に劇場スタッフの方にお伝えしたんですが、円形劇場ってなかなか温度が変わらないみたい・・・。

 ⇒CoRich舞台芸術!『犬は鎖につなぐべからず』 

 和風のわびさび感も少々付加されたポップでおもちゃっぽい美術。役者さんは基本的に和装(和装監修:豆千代)で登場します。何度も着替えてくださって、それはそれは見ごたえがありました。衣裳、最高でしたね。わんさかと踊りながら(振付:井手茂太)場面転換するのがにぎやかで、音楽も良かったです。

 岸田國士作品を一度に沢山観られたのが何よりの収穫でした。でも、もっと面白いはずなんじゃないかな・・・と思うこともありました。
 ナイロン100℃っぽいナンセンスをがっちりと体現する、個性のはっきりしたキャラクターが登場します。何かしらの目的のために狙いを定めて演じる技術はさすがだなと思いますが、今の私はそういう演技にはあまり魅力を感じないんですよね。素敵だなと思ったのは「屋上庭園」で並木(植本潤)の妻を演じられた植木夏十さんでした。

 新国立劇場で2008年3月に『屋上庭園/動員挿話』が再演されます。また楽しみになっちゃったな。

NYLON100℃ 30th SESSION ~岸田國士一幕劇コレクション~
「犬は鎖につなぐべからず」「隣の花」「驟雨」「ここに弟あり」「屋上庭園」「ぶらんこ」「紙風船」
出演=松永玲子、みのすけ、村岡希美、長田奈麻、新谷真弓、安澤千草、廣川三憲、藤田秀世、植木夏十、大山鎬則、吉増裕士、杉山薫、眼鏡太郎、廻飛雄、柚木幹斗、緒川たまき、大河内浩、植本潤、松野有里巳、萩原聖人
脚本=岸田國士 潤色・構成・演出=ケラリーノ・サンドロヴィッチ 和装監修=豆千代 振付=井手茂太 舞台監督:福澤諭志+至福団 舞台美術:加藤ちか 照明:関口裕二(balance,inc.DESIGN) 音響:水越佳一(モックサウンド) 映像:上田大樹(iNSTANT WiFE) ヘアメイク:武井優子 大道具:C-COM舞台装置 小道具:高津映画装飾 演出助手:山田美紀(至福団) 宣伝美術:坂村健次(C2デザイン) 宣伝写真:小木曽威夫 イラスト:フカザワテツヤ 宣伝ヘアメイク:山下まきえ/山本絵里子 舞台写真:引地信彦 制作助手:市川美紀/土井さや佳/寺地友子/松田美緒 制作:花澤理恵 お問合せ・企画・製作=(株)シリーウォーク
【発売日】2007/03/17 前売¥6,000/当日¥6,500(全席指定)
http://www.sillywalk.com/nylon/

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