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2007年10月10日

劇団俳優座『豚と真珠湾 幻の八重山共和国』10/04-14俳優座劇場

 斎藤憐さんが数百冊におよぶ資料をもとに、執筆だけで「1年間苦闘した」力作だそうです(朝日新聞2007/09/29夕刊より)。佐藤信さんが美術と演出を手がけます。

 脚本に惹かれて観に行って正解でした。上演時間は約3時間(15分の休憩を含む)。私が観た回はNHKのカメラが入っていました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『豚と真珠湾

 ≪あらすじ≫ 劇場公式サイトより
 敗戦後の八重山諸島に米軍は進駐しなかったため、役所も警察もない無政府状態におかれていた。八重山の豚や米を食い尽くした日本軍人を本土に帰還させる船もなく、蔓延するマラリアを食い止める医師も薬もなかった。島民たちは仕方なく自治共和国を建国したのだが……。
 ≪ここまで≫

 舞台は戦争直後の沖縄・石垣島。サカナヤー(料理屋)を営む家族と彼らを取り巻く人々の、1945年~1950年の約5年間を淡々と描きます。高くて真っ白な壁に三方から囲まれた空間は、最小限の大道具・小道具で広々としながら、隔離された島の閉塞感も表していました。上下(かみしも)の壁には大きな青い開き戸がはめ込まれており、家の外を歩いているはずなのにドアを開け閉めして出はけします。

 前半2時間は説明的なセリフで単調に進むことが退屈で仕方なかったのですが、後半になってからじわじわと引き込まれていきました。淡々と時系列に起こる出来事の裏側に、当たり前のように翻弄される人間、流されて変わっていく人間、過去がすっかり塗り替えられるように変化しても、やはり大昔と同じように命をつないでいく人間・・・など、むき出しの人間の姿が見えてきたからです。涙がボロボロこぼれました。

 知っていたつもりだったけれど、やはり知らなかった。歴史劇や古典劇を観る度に感じることです。私は賢くないので本を読むことでは充分に咀嚼できないような気がするし、性格がヘンクツなので、映画のように焦点を決められると(顔のアップのシーンなど)誘導されているように感じて素直に受け取れなかったりします。だから今作のように、さまざまな立場の人間のそれぞれの言い分や思い込みが同じ土俵に並べられ、その誰(どれ)を観ていてもいいような群像劇ほど、自由に解釈ができるし、より多くのことを学べるように思います。

 斎藤憐さんの脚本から多くを教えてもらいました。
 沖縄もハワイもどちらも海に浮かぶ島。沖縄は日本軍の基地が、ハワイにはアメリカ軍の基地が作られた。だから石垣島と真珠湾は標的になった。
 沖縄にアメリカ軍用の空港がなければ(飛行機が給油できないため)、長崎に原爆は落ちなかった。

 平日マチネとはいえ、客層の年齢層の高さに驚きました。半分以上が白髪交じりの男性でした(だいたいは女性の方が多いんです)。こういう作品こそ、教養の演劇として戦争を知らない世代(私を含め)に広まってくれたらなぁと思います。NHKで放送されるのはとても良いですね。

 ここからネタバレします。※セリフは完全に正確ではありません。

 巣鴨プリズンに入れられた戦犯の多くが死刑判決を受けたことについて、料理屋の女主人ナベ(大塚道子)の息子・英文(田中壮太郎)が言ったセリフが胸に残ります。
 「(死刑にして)今殺さなくたって、50年たてばみんな死んでるさ。」
 今は2007年ですから、もう57年経っているんですよね。

出演=大塚道子、阿部百合子、長浜奈津子、生原麻友美、小澤英恵、可知靖之、中野誠也、塩山誠司、田中茂弘、西川竜太郎、田中壮太郎、松島正芳、林宏和
作=斎藤憐 演出・美術=佐藤信  音楽=中村透 照明=黒尾芳昭 音響=田村悳 衣裳=若生昌 舞台監督=石井道隆 演出助手=安藤勝也 制作=山崎菊雄 村田和隆 主催=劇団俳優座
一般5250円 学生3675円
http://www.haiyuza.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。ご了承下さい。
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Posted by shinobu at 21:07 | TrackBack

【写真レポート】たざわこ芸術村・わらび座ミュージカル鑑賞ツアー09/23~24(まとめ)

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わらび座リーフレット

 東北の大自然を満喫できる楽しい観光旅行をさせていただきながら、わらび座についてお聞きすることができました。

 ミュージカルというと日本では一般的に、劇団四季、東宝ミュージカル、宝塚歌劇の名前がまず挙がりそうですが、オリジナルのミュージカルを全国規模で上演しているカンパニーもけっこうあるんですよね。その中でも独特の事業展開をしているのがわらび座です。

 ⇒写真レポート1日目2日目、まとめ(この記事です)

 わらび座は大小あわせて7チームが全国・海外を回っており、学校公演を含めて年間約1,200ステージを上演しています。海外公演はアメリカ、ヨーロッパ、アジア、ブラジルなど広く16カ国で行なっており、ロシアや韓国には毎年のように渡っているそうです。

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たざわこ芸術村内にある民族芸術研究所

 わらび座が海外へ行くだけでなく、海外からわらび座へと、劇団経営システムを学ぶために視察に来られることもあります。今年はこれまでに数回、韓国から20人以上の団体ツアーがたざわこ芸術村に訪れており、韓国とのつながりは年々深くなっているそうです。

 ホテルやショッピング・モールなどの複合レジャー施設と併設される形で、わらび座ミュージカル上演劇場が2006年に誕生しています。愛媛県東温市見奈良のレスパス・シティ内にある「坊っちゃん劇場」です。こけら落としはジェームズ・三木さん作・演出の『坊っちゃん!』(昨年の約300公演を経て現在全国ツアー中/東京公演は11/10~29に北千住のシアター1010にて)。海外だけではなく地方自治体からの、たざわこ芸術村視察が増加していることにも大いに納得です。

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スタジオジブリとのコラボレーション

 国際的な芸術活動をしつつ、ホテル経営や地ビール製造・販売などでも成功し、企業とビジネス面で積極的に関わりながら、地元のお祭には毎年必ず無償で参加したり・・・。この資本主義社会の日本において芸術と経済を両立させた、地に足のついた営みを実現されています。

 最も感動したのは子供2人に1人の保育士がつく、24時間体制の保育所があることです。小さなお子様がいる役者さんやスタッフさんが、安心して全国ツアーに行けるんですね。女性にとっての結婚・出産が、芸術活動を辞めるきっかけにならないのが凄いことだと思います。既に50年の歴史があるそうです。

 今舞台に立っている役者さんの中には、ご両親ががわらび座のメンバーという“わらびっ子”も大勢いらっしゃいます。私が観た『小野小町』主役の椿千代さんも、『坊っちゃん!』主役の三重野葵さんも“わらびっ子”です。日本のオリジナル・ミュージカルの世界で、芸術が親から子へと受け継がれていっているんですね。

 保育所ではわらび座関係者だけでなく、一般の方の子供も預かっているそうです。わらび座が始めることは何でも公(おおやけ)に近づいていくという、芸術が生活に結びついているひとつの成功モデルなのではないでしょうか。

 いくつものプロジェクトが並行して進んでいるわらび座ですが、来年4月から全国ツアーが始まる新作ミュージカル『火の鳥~鳳凰編~』は、その中でも大きなものになりそうです。原作は皆さんご存知の手塚治虫の名作漫画。演出の栗山民也さんほか、豪華スタッフが揃っています。キャストはわらび座メンバーを含めて現在オーディション実施中だそうです。わらび座による純日本製の新作オリジナル・ミュージカルの誕生が、今からとても楽しみです。

※注意を払って記事を掲載していますが、正確な情報は公式サイトでご確認ください。
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Posted by shinobu at 10:03 | TrackBack

【写真レポート】たざわこ芸術村・わらび座ミュージカル鑑賞ツアー09/23~24(2日目)

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田沢湖

 初めて訪れた秋田県の秋は、柔らかい太陽光が注ぐ中で心地よい風も吹いて、深呼吸する幸せをしみじみ実感できる大自然の宝庫でした。

 ミュージカルを観て、美味しい食事をして、森林浴をして、もー何年ぶりだろう?って思うぐらいリラックスして楽しみました。

 ⇒写真レポート1日目、2日目(この記事です)、まとめ

 昨晩ビールを飲みすぎたかな~・・と思いつつ、温泉で贅沢に朝風呂に入ってすっきり爽快。バイキング形式の朝食ではパンにジャムという軽いものにしました。だって昨日は豪華に食べ過ぎた(笑)。

 ホテルをチェックアウトして、車で田沢湖観光に出発!田沢湖(Wikipedia)といえば、水深日本一のカルデラ湖です。中学の地理のテストで覚えたな~・・・などと思い出しつつ到着すると、なんとも美しい青色の、大きな湖でした!!

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 ↑山の緑と湖の青、そして晴れた水色の空!風が強かったようで、湖には大きな波が立っていました。

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 ↑神社にお参りしてから、ウグイという魚の餌付けポイントへ。温泉の排水が湖に流れ込んで一時は魚が死滅してしまったそうですが、町をあげて水質汚染対策に取り組んだところ、少しずつ魚が戻ってきたそうです。

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 ↑そのひとつがウグイ。餌を群れの中に投げ込むと・・・

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 ↑集まる!跳ねる!重なる!! 「わーーーっ!!」と喜びながらじゃんじゃん餌を投げる私(笑)。風も気持ちいいし、空気も美味しいし、絶景だし、もーサイコーに楽しかった。
 ダンサー・振付家のピナ・バウシュさんが、雪の中の田沢湖を観光に来られたこともあるそうです。

 ウグイに別れを告げて、湖の周りを走りながら田沢湖高原へ。わらび座ミュージカル『山神様のおくりもの~マタギの里から~』の作・演出を手がけられた菊池准さん、美術の島次郎さんも創作前にいらっしゃっています。

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 ↑またもや絶景!!奥に見えるのが先ほど餌付けをした田沢湖です。

 そしてわらび座が経営する田沢湖高原温泉郷・ゆぽぽ山荘にご案内いただきました(たざわこ芸術村から車で約40分)。女優の故・山本安英さん、昨年亡くなられた劇作家の木下順二さんが長期滞在されたこともあるそうです。※写真はゆぽぽ山荘サイトより。

 たざわこ芸術村のホテルの名前にもなっている“ゆぽぽ”の由来を教えてもらいました。アイヌ語で「歌」を示す“うぽぽ”と、東北弁で「温かい」を意味する“あぽぽ”(おばあさんが赤ちゃんに話しかける時に使う)から来ているそうです。そこに温泉の“湯”が入って“ゆぽぽ”になったのかしら。なんとも愛らしい名前です。

 高原を下りてたざわこ芸術村に戻り、昨日は貸切で入れなかったTAZAWAKO BEERでイタリアン・ランチをいただきました。
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 ↑パスタとピザが美味しかった。地ビールは昨日飲みすぎたので自粛(笑)。

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 ↑スタジオジブリとわらび座のコラボレーション商品です。『ジブリの絵職人・男鹿和雄展』が開催されていた東京都現代美術館と、わらび座関連施設のみでの販売。男鹿さんは秋田県出身なんですね。展覧会のオープニング・パーティーでは、わらび座が民族舞踊「沖揚音頭」を披露されたそうです。

 食事の後、角館(かくのだて)観光へ。

 武家屋敷(時代的のロケ地としても有名)をご案内いただき、わらび座と由縁のある安藤醸造元を訪れました。わらび座のメンバーが東京から秋田に移住し、農業を手伝いながら芸を披露して生計を立てていた頃に、お米や醤油、みそを分けてくださったのが安藤醸造元の女将(当時)だったそうです。※写真は安藤醸造元サイトより。

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 ↑レンガ造りの蔵座敷(くらやしき)を見学しました。

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 ↑蔵の中に和室があるんですよ~。ふすま絵が豪華。

 そして、安藤醸造元が経営する北浦本館にも足を伸ばしました。安藤醸造元は今は若旦那が経営されており、わらび座とともに角館を大いに盛り上げていくプロジェクトに関わっているそうです。

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 ↑高速道路のサービスエリアのように、休憩&お買い物する人がいっぱい。名物のソフトクリームがあるそうで、どんな味かと思ったら、なんとしょうゆ味!

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 ↑意外にもキャラメルのような味がして、これはクセになりそう♪地元の新聞で人気ランキングNo.1になっていました。

 ⇒たざわこ芸術村・写真レポート(まとめ)に続く

※注意を払って記事を掲載していますが、正確な情報は公式サイトでご確認ください。
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Posted by shinobu at 09:59 | TrackBack

【写真レポート】たざわこ芸術村・わらび座ミュージカル鑑賞ツアー09/23~24(1日目)

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わらび劇場

 オリジナル・ミュージカルを創作し、日本全国で公演をしているわらび座。本拠地のたざわこ芸術村がスゴイらしいという噂を聞き、1泊2日の旅行に行ってまいりました。

 そもそも秋田県でミュージカルを観たいと思ったのが始まりなんですが、実はわらび座が有名なのはミュージカルだけじゃなかったんです・・・!

 いいお天気にも恵まれ、暖かいおもてなしを受け、満足以上の秋の東北の旅になりました。

 ⇒写真レポート1日目(この記事です)、2日目まとめ

 秋田新幹線こまちに初めて乗りました。単線になっている箇所があるので、途中で止まったりするんです。それがのどかで可愛い。

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 ↑イスがデラックスなんですよ、カップ・フォルダーが付いてたりして。はやてに乗らずにこまちに乗る人も多いそうです。

 駅から車で7分ほどでたざわこ芸術村に到着。まずはホテル「温泉ゆぽぽ」にチェックインし、ふわっと新しい畳の匂いのする和室でいっぷく。そしてお食事処ばっきゃで昼食にしました。

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 ↑比内地鶏釜めし膳をいただきました(食べてる途中の写真でごめんなさい・・・)。上演中のミュージカル「小野小町」にちなんだ冷たいおうどん(“小町うどん”だったかな)のメニューもあり。

 昼食後、「小野小町」マチネが始まるまで森林工芸館でお買い物。

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 ↑手作りのオカリナを演奏していただいたりして、掘り出し物のおもちゃ「ひとひねり」を購入!かなりキてる、一種の“知恵の輪”です!!

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 ↑てくてく歩いて劇場へ。緑がいっぱいの道が気持ちいいです。

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 ↑イタリアン・レストランTAZAWAKO BEERでは、豪華にレストラン・ウェディングの最中でした♪

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 ↑わらび劇場(710席)が見えてきました。屋根が東北の建築らしいですね。わらび劇場では4月から翌年のお正月まで1演目が上演されます。年間およそ300ステージ!⇒「小野小町」レビュー(写真あり)
 1月から3月は積雪のためわらび劇場での上演はお休み。その期間は小劇場(150席)で「秋田風味コメディ」シリーズを上演されています。来年の演目は「花舞台だよ、おっ母さん」。女優2人のコメディだそうです。

 ミュージカル鑑賞後はたざわこ芸術村をぐるりと歩いてみました。

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 ↑広い敷地には稽古場が4つ!小劇場や民族芸術研究所もあります。劇場のすぐそばでお稽古をして、本番前に劇場を使ってお稽古をして、あーもー本当に恵まれた創作環境ですよね。

 歩きつかれたらホテルにもどって温泉へ。ゆっくり温まって浴衣に着替えてリラックスしたら、夕食です。

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 ↑超豪華なディナーでした♪もちろん地ビールも一緒に。秋田県は米どころですから日本酒も種類がたくさんあります。でも今日はやっぱり地ビールで。たざわこ芸術村で作られたビールはインターナショナル・ビア・コンペティション(国際ビール大賞)で金賞を受賞しているものもあるんです。欲張って3種類いただきました。美味しかった~♪

 ⇒たざわこ芸術村・写真レポート(2日目)に続く

※注意を払って記事を掲載していますが、正確な情報は公式サイトでご確認ください。
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Posted by shinobu at 09:56 | TrackBack

世田谷パブリックシアター『音楽劇「三文オペラ」』10/09-28世田谷パブリックシアター

 大好きな『三文オペラ』を、これまた大好きな演出家・白井晃さんが演出されるということで、スタッフも豪華ですし、楽しみにして初日に伺いました。

 上演時間は3時間10分ぐらい(休憩1回ふくむ)。んー、まだ完成していない感じがしましたね。これから観に行こうかと思ってらっしゃる方は、もうちょっと後に行くのがいいかも。

 ⇒CoRich舞台芸術!『音楽劇「三文オペラ」

 ≪作品紹介≫ 公式サイトより
 20世紀最大の演劇の革命家、ベルトルト・ブレヒト。
 ~1928年、代表作「三文オペラ」は初演された。
 舞台は19世紀のロンドン。資本主義社会の矛盾を痛烈に皮肉った。
 演劇の枠組みをぶち壊し、脱オペラの手法を打ち立てた。
 ~2007年、21世紀の今。
 時代はハイパー資本主義へと拍車がかかる。
 人々の欲望は、見境なしに膨張する。
 舞台は現代、どことも知れぬアジアの街!
 翻訳も歌詞も大胆不敵にニューヴァージョン!
 クルト・ヴァイルの音楽が華麗に炸裂する!
 貫くエネジーで、現代社会のカオスを切り開く。
 白井版「三文オペラ」!
 世田谷パブリックシアターをぶっ飛ばす。
 ≪ここまで≫

 『三文オペラ』を観るのはこれで4作品目になります(⇒)。今年の新国立劇場演劇研修所第1期性の試演会1で、ぞっこんに大好きになりまして、音楽の前奏を聴くだけでもわくわくするぐらい。かなり期待していたせいもあり、今作は残念な仕上がりだったように思います。
 たまたま劇場でお会いした「『三文オペラ』は何百回も観たことがある」とおっしゃるベテランの演出家さんが、「今上演してもなかなか成功しないものなんだよ」と教えてくださいました。

 アジアが舞台とありますが、特に「アジア」とは感じなかったですね。今の日本人が出てるから現代日本で通用している言葉が出てくる、というぐらいで。役名も原作のままだし。

 薄汚れたコンテナなどを高く建て込んだ装置(松井るみ)は、最初は「すっごーい!」って思ったんだけど、持続せず・・・。役者さんが落ちるんじゃないかと心配になることが多々ありました。たぶん装置と照明の演出はかなり凝ってると思います。でも初日ではそのクオリティーがわからなかったな~。

 歌詞(ROLLY)は面白い言葉が並んでいて、今までに聞いたことのある歌詞を比べるのが面白かったです。スカンチっぽいんだな~、やっぱり。セリフも新たな翻訳(酒寄進一)なので、言葉の意味を聞いて「なるほど~」と思う分には楽しめました。

 役者さんは・・・セリフもよく間違ってましたし、まだ自信がなさそうに見えました。そして寄せ集め感は拭えず。濃いコミュニケーションが見えないんですよね。

 ジェニー(ROLLY)が働く娼館にいる娼婦たちは若い女優さんが演じられるんですが、めーーーーっちゃくちゃスタイルが良くって、ダンスがうまい!(と思う) しかもほとんど下着姿で出てきますから、男性には目の保養間違いなし(笑)。私は美しい女性の裸が大好きなので(危険発言か?)、めっさ見とれました。あーもー彼女たちをもっと観ていたかった。

 ちょっとネタバレになるのですが、どうしても書いておきたいのでひとこと。最初の「休憩」は休憩にはなりません。おそらくトイレに行ってしまったのであろう可哀想なお客様がいらっしゃいました。どうぞ1回目は座っていてください。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 オープニングの「マック・ザ・ナイフ」は素晴らしかったです。編曲がメロディーと全然違うんだもの!普段着姿のROLLYが素なのか演技なのか曖昧な状態で歌いだすのも、導入としては最高でした。

 客席にぐっと近づいて高くそびえる装置は3階立て。2階部分に歌のタイトルなどを表示する電光掲示板(LEDスクリーン?)があります。4階部分はコンテナのような四角い箱が天井に張り付いている状態で、その壁にくっついた細い蛍光灯が光るのもかっこ良かったです。

 メッキー(吉田栄作)の死刑シーンで、メッキーが電気イスで本当に殺されてしまいます。ビリビリと身体が震えて叫び声まであげるので、ちょっと怖かった。そしてピーチャム(大谷亮介)が「別のエンディングをご用意しました」「女王の使いがやってくる」等と言って、つかの間のハッピーエンド。助かったメッキーが「台本読んでたから助かるのは知ってたのさ!」と言ったのはびっくり(笑)。しかし一瞬でハッピー・ムードは消え、厭世的な歌を大合唱して幕。

 「人は悪を手立てに生きる」は、その部分だけNNTドラマスタジオ版と歌詞が一緒でした。いい言葉ですよね~、悪を手立てに生きるって。やっぱり好きですよ、三文オペラ。

出演=吉田栄作 篠原ともえ 大谷亮介 銀粉蝶 佐藤正宏 猫背椿 ROLLY 六角慎司 細見大輔 内田紳一郎 富岡晃一郎 櫻井章喜 田島俊弥 杉崎真宏 大林洋平 篠原功生 鈴木良一 金世一 岡寛恵(赤いスリップ) 中澤聖子(ジーンズ) もたい陽子(豹柄) 冨岡真理央(黄色いキャミソール)
作=ベルトルト・ブレヒト 音楽=クルト・ヴァイル 翻訳=酒寄進一 演出=白井晃 音楽監督=三宅純 歌詞=OLLY 美術=松井るみ 照明=齋藤茂男 音響=福本荘一 衣裳=太田雅公 振付=井手茂太 技術監督=眞野純 プロダクション・マネージャー=堀内真人 舞台監督=勝康隆 歌唱指導=満田恵子 演出助手=中村太郎 石内エイコ 音楽監督助手=荻野清子 学芸=小宮山智津子 制作=根本晴美 相場末江 宣伝美術=タカハシデザイン室 宣伝写真=ニ石トモキ スタイリスト=青柳美智子 ヘアメイク=神﨑美香 CGオペレーション=Studio Gumbo 撮影協力=Bee OMIYA
【休演日】月曜休演  全席指定 A席7,500円/B席5,500円 TSSS 各一般料金の半額 友の会会員割引(A席)7,000円 世田谷区民割引(A席)7,300円
主催=財団法人せたがや文化財団/ぴあ/朝日新聞社 企画・制作=世田谷パブリックシアター
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2007/10/post_90.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありませんので、ご了承下さい。
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