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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年07月06日

劇団俳優座『金魚鉢の中の少女』07/05-13俳優座劇場

 田中壮太郎さんがモーリス・パニッチのカナダ戯曲を翻訳・演出されます。
 これで田中さんの演出作品を見るのは3度目(過去レビュー⇒)。これまではアトリエ公演でしたが、とうとう俳優座の本公演になったんですね。上演時間は約2時間20分(途中休憩15分を含む)。

 CoRich舞台技術!⇒『金魚鉢の中の少女

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。
 カナダの海辺の田舎町。
 かつては下宿を営んでいた家に住むもうすぐ11歳になるませた少女アイリス。
 彼女にはひとつ何とかしなければならないことがあった。母シルビアが父オーエンを見限り、家を出ると決意をしたのだ。そんな事態を抱えたある日、アイリスの可愛がっていた金魚のアマールが死んでしまう。
 翌朝、アイリスは浜辺からずぶ濡れの男を連れて帰ってきて・・・・。
 ≪ここまで≫

 作品とはあまり関係ないことを書きます。
 「日曜日のマチネに俳優座の本公演を観に行った私が悪かった」と、今までならあきらめていたのですが、今日は意見したい気持ちになってしまいました。演出の田中さんがパンフレットに書かれていた文章↓に共感したのもあると思います。

 「環境が変わってゆきますからそれに適用できないものは普通死んでゆくのが理だと思います。不変を貫き死ぬことを選ぶ美学も僕は嫌いではありません。しかし、生き抜くためには変化または適用が必要だと僕は思っています(パンフレットより一部抜粋)。」
 文脈から、田中さんが変化または適応を促しているのは劇団に対してだと読み取れます。もちろん観客への語りかけでもあるでしょう。

 俳優座は設立から60年以上経っている歴史ある劇団です。日曜日のマチネは、長年劇団を応援されているのであろう、年配のお客様が多いように見受けられました。客席でのおしゃべりが多く、私は一度、後ろの席の女性2人に「しーっ」と言って静かにしていただきました。でも、まさか、上演中に客席から歌舞伎の大向こうのような声がかかるとは…。1回目は何らかの演出かと思ったのですが、2回目ではっきりと分かりました。大切なシーンがだいなしでした。

 今回の作品にはコミカルな演出も大いにありますが、何も考えずに笑って泣けるタイプのエンタメ演劇ではありません。むしろシリアスな戯曲です。あの掛け声は、作品世界をぶち壊す暴力行為と受け取れると思います。『かもめ』で、トレープレフの前衛演劇をアルカージナがひどく嘲笑するシーンが思い浮かびました。カーテンコールでももちろん役者さんに声がかかっていて、役者さんは舞台上で苦笑するしかない状況でしたが、笑って済まされて欲しくない。

 受付では未だに公演関係者の名前を言わなきゃいけないし(公演関係者からチケットを予約したので)、いかにもな流れ作業で当日精算をさせられました。無名の小劇場劇団の制作さんの方が、もっと親切で丁寧です。観客とコミュニケーションを取ってくれます。

 昔ながらのお客様のために、昔ながらのやり方を続けていては、新しい観客は増えないでしょう。常に新しい観客との出会いを求め続けることが大切だと思います(この方がおっしゃってました)。もちろん観客も、新しい気持ちで作品(劇団)と出会い、お互いに豊かな関係を築けるよう努力が必要だと思います。
 えらそうに長い文章を書きました。次に俳優座の公演を観に行く時は、平日ソワレにしようと思います。

 ここからネタバレします。

 1962年、キューバ危機直前の冷戦下のアメリカの片田舎。11才の少女アイリス(小飯塚貴世江)が語り部となって展開します。観客に話しかけたり、「明日で私の幼少期が終わるの」などと予言めいたことを言ったり、非常に饒舌。
 アイリスの母は夫に愛想をつかして家出寸前。でもずぶ濡れの正体不明の男ローレンス(松島正芳)を家に招きいれたことによって、家族は一時的に崩壊を免れます。

 2年もセックスレスで破局寸前の夫婦が、絶望的なケンカや予期せぬトラブルを経て瞬間的に心を開き、キスをします。そのキスシーンで「たっぷり!」という掛け声がかかったんです。げんなりしました。

"Girl in the Goldfish Bowl" Author/ Morris Panych
出演:青山眉子、河内浩、清水直子、松島正芳、小飯塚貴世江
脚本:モーリス・パニッチ 演出:田中壮太郎 美術:田中敏恵 衣装:秋山芳江 照明:判静香 音響:小山田昭 宣伝美術・パンフレットデザイン:川本裕之 粘土職人:キヨエコイ→ツカ 宣伝写真:和知明 舞台監督:宮下卓 制作:高橋かずえ 池田真佐美 演出助手:安藤勝也 
【発売日】2008/05/26 昼公演:一般5,250円/学生3,675円 夜割:一般4,700円/学生3,000円(劇団のみ取扱い)
http://blog.livedoor.jp/haiyuza
http://www.haiyuza.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年07月06日 19:47 | TrackBack (0)