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しのぶの演劇レビュー
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2008年10月07日

ナイロン100℃『シャープさんフラットさん』【ブラックチーム】09/15-10/19本多劇場

 ケラリーノ・サンドロヴィッチさんが作・演出するナイロン100℃の新作です。ケラさんは新作続きで、また12月も新作ですよね?すごいな・・・。補助席もずらりと出ていました。当日券はあるみたいです。

 ダブルキャスト2本立てで、私が拝見したのはブラックチームです。上演時間は約2時間45分(休憩なし)。「長い!」と言うのには、もう飽きました(笑)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『シャープさんフラットさん

 ≪あらすじ≫
 1990年代初頭の景気のいい日本。辻煙(つじ・けむり:大倉孝二)は東京から車で3時間ほど離れた、豪華サナトリウムに滞在している。彼の職業は脚本家。ある事情があって、誰からも連絡がつかないように1人でこもっているのだ。
 ≪ここまで≫

 両方とも豪華キャストですね。大倉孝二さんと三宅弘城さん以外は全員どちらかのバージョンにしか出演されませんので、全く違う作品になってそうです。
 映像と舞台を融合させた演出がまた進化していて、わくわくしました。

 自分が可笑しいと思うことが、必ずしも誰にでもウケるわけではない。これは仕方がないですよね。他人と笑いを分かち合えたら嬉しいし、そもそもウケなければ売れません。これにも納得できます。でもウケを狙って自分の好きな笑いとお別れしてしまうと、それは人生が面白くなくなる気がします。
 何事も追及していくと、時と場所をわきまえるとか他人を思いやるといった、自分と周囲とをなめらかにつなぐための何かを、自ずと放棄せざるを得なくなる気がします。タガをはずすというのかしら。このお芝居の場合だと、笑いが他人を傷つけたり・・・。何が正しいとか間違っているとかじゃなく、自分がどう戦っていくのかを考える時間になりました。

 サナトリウムの従業員を演じていた坂井真紀さんは、まゆを太い目にメイクされていたのではないでしょうか。パっと見た時に大阪の「くいだおれ人形」に見えて、そう見えた自分が可笑しくて笑ってしまいました。坂井さんは弱々しげなのに、時々妙~に強くなったり、誰かのために必死にどたばたしても、かえって失礼なことをしでかすのが、とても面白かったです。

 ここからネタバレします。

 辻煙(大倉孝二)が赤坂弥生(峯村リエ)と、劇団の過去作品のタイトルやその内容を楽しそうにしゃべるところが、可笑しくて、悲しくて、泣けてきました。後から何度もこのネタを思い出して一人で笑ってしまいました。カフカとか。
 あとは「日体大の教師(なぜか背むし)」が可笑しかった。

NYLON100℃ 32nd SESSION 15years Anniversary -ダブルキャスト2本立て興行-
出演【ブラックチーム】(ホワイトチーム):大倉孝二(三宅弘城) 犬山イヌコ(村岡希美) みのすけ(清水宏) 峯村リエ(松永玲子) 長田奈麻(安澤千草) 植木夏十(六角慎司) 喜安浩平(藤田秀世) 大山鎬則(皆戸麻衣) 廻飛雄(吉増裕士) 柚木幹斗(眼鏡太郎) 水野顕子(杉山薫) 三宅弘城(大倉孝二) 小池栄子(新谷真弓) 坂井真紀(佐藤江梨子) 住田隆(廣川三憲) マギー(河原雅彦)
脚本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 美術:BOKETA 照明:関口裕二(balance,inc.DESIGN) 音響:水越佳一(モックサウンド) 音楽:三浦俊一 映像:上田大樹(&FICTION!) イラスト(切り絵):古屋あき 衣裳:松本夏記(ミシンロックス) ヘアメイク:武井優子 演出助手:山田美紀(至福団)・相田剛志 舞台監督:山矢源(ダイ・レクト) 記録スチール:引地信彦 宣伝美術:雨堤千砂子(wagon) 宣伝美術コーディネート:モリタダシ(Homesize) 宣伝写真:江隈麗志 宣伝衣裳:堀口健一(フロムアップ) 宣伝ヘアメイク:山本絵里子、浅沼靖 宣伝イラスト:野中和美、おがわまさひろ、山本浩子 宣伝CG協力:BOKETA プロデューサー:北牧裕幸、高橋典子 制作:北里美織子、太斎志保、佐々木悠 制作協力:馬場順子、花澤理恵 高比良理恵 広報:米田律子 制作:キューブ 企画・製作:シリーウォーク
【発売日】2008/08/09 6,800円(全席指定・税込) ※バージョンセット券 12,000円(全席指定・税込)《cubit clubのみの期間限定取扱い》  cubit clubでの予約には会員登録(無料)が必要です。http://www.sillywalk.com/nylon/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 23:11 | TrackBack

【お知らせ】CoRich舞台芸術!「注目インタビュー・田中麗奈」2008年10月

 女優の田中麗奈さんにインタビューさせていただきました。
 麗奈さんの初舞台となる『思い出トランプ』は10/10(金)開幕です。残席少ないそうですので、気になる方はお早めにチケットをゲットしてくださいね!

 ⇒原作本のご紹介
 ⇒CoRich舞台芸術!『思い出トランプ

Posted by shinobu at 16:37 | TrackBack

劇団俳優座『スペース・ターミナル・ケア』10/04-12紀伊國屋ホール

 坂手洋二さんが俳優座に新作を書き下ろされました。演出は栗山民也さんです。お2人のコンビは『ピカドン・キジムナー』以来7年ぶり。タイトルはスペース・ターミナル(宇宙ステーション)とターミナル・ケア(終末期医療)をかけたものです。

 演技のスタイルはいわゆる“新劇”でしたが、私たちが今、生きているこの瞬間を、舞台と客席とが一体になって実感できる素晴らしいお芝居でした。上演時間は約2時間45分(途中1回の休憩を含む)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『スペース・ターミナル・ケア

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
 ターミナル・ケア(終末医療)を行うホスピスを舞台にした坂手洋二の書き下ろし作品を栗山民也演出で俳優座が贈るこの秋の話題作
 「終末期医療」を受けることになった、ある夫婦癌と診断されてショックを受ける20代の女性、がん診断初期から積極的治療として「緩和ケア」を受ける少年、ケアの中心となる先輩医師と後輩の女医、彼らとともに働くチーム、医療過誤を疑う患者の姿などが描かれる中で判明する先輩男性医師の末期がん。人生の終末を意識しながら、本人と周囲の人たちがどのように生きるか、どのようにお互いに向き合うかを描く。
 ≪ここまで≫

 現代西洋医学では、がんを完治できる治療方法(特効薬)は見つかっていません。末期がんに侵された患者は、治る見込みがないまま予言された“余命”を生きることになります。ホスピスの舞台で、パジャマを着た役者さんが対話をして伝えてくれるからこそ、身になる知識が得られる気がします。

 少々くどく感じる説明ゼリフがないわけではありませんが、永井愛さんがおっしゃっていたように、人間の日常会話はほとんどが説明だったりするのです。それに、演劇はそもそも“嘘”ですからリアルである必要はないと思います。観客一人ひとりが、自分の中でリアルを受け取れば良いと思います。少なくとも私は、清潔なホスピスでもがく患者と医師たちの苦悩や小さな喜びを、自分のこと(自分の家族のこと)のように感じ取れました。

 患者の子役の薄衣峻平さんが素敵でした。元気な看護士役の森尾舞さんも魅力的。

 ここからネタバレします。

 余命を宣告された人と、介護をする人間がどうやって一緒に生きていくのか。介護する人へのアドバイスのひとつとして「問題が起こっても、許すこと」というセリフがありました。許せる人間になりたい。

 100年後はがんの特効薬ができているかもしれない。だからこの宇宙船(ホスピス)に乗って100年後に行こう。そしてがんを治したら、未来のタイムマシンに乗ってここに帰ってくればいい。夕陽が美しいたそがれの時間に出発して、同じ時刻に戻ってくれば、つまりこの夕陽は永遠なのだ。永遠の6時40分。時を越えて、今、ここに生きる。―永遠の一瞬が舞台にありました。

劇団俳優座・現代劇作家連続公演
出演:加藤佳男/田野聖子/川井康弘/若尾哲平/森尾舞/太田亜希/川口啓史/片山万由美/阿部百合子/田中茂弘/小澤木の実/薄衣峻平(劇団ひまわり)/佐藤あかり/星野元信/松島正芳
※高山真樹は体調不良のため、片山万由美に配役変更。
脚本:坂手洋二 演出:栗山民也 美術:松井るみ 照明:勝柴次朗 音響:小山田昭 衣裳:若生昌 演出助手:眞鍋卓嗣 舞台監督:関裕麻 制作:下哲也 高橋かずえ
【発売日】2008/09/01 一般5,250円 学生3,675円 ※11月公演「春立ぬ」との一般セット券9,200円 学生セット券6,500円(但し俳優座のみの取扱い)
http://www.haiyuza.sakura.ne.jp/info/200810.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 15:03 | TrackBack