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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2009年09月18日

Bunkamura『コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ・第三部』09/12-10/04シアターコクーン

 第一部第二部を経てとうとう第三部へ。観客が同じ劇場に3日連続で通うなんて、めったにないことだと思います。シアターコクーンに親近感が湧いてきて、今日で終わっちゃうのが寂しいぐらい。

 第三部はゲルツェン(阿部寛)がイギリスに渡ってからの、1853年から1868年までが描かれました。あ~終わっちゃったんだな~。上演時間は約3時間5分(途中休憩15分を含む)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 失意の底にあったゲルツェンはロンドンに亡命。自宅をヨーロッパ各地で革命に失敗した亡命者たちの社交場として提供し、新しい人脈を得てロシア・ポーランド自由印刷所を立ち上げる。個人の自由こそ絶対的であるべきだと論じた『向こう岸から』のロシア語版を出版。あきらめていた母国語での自著の記念すべき一冊目を、亡妻ナタリーとの息子に熱い想いと共に手渡す。
 やがて、盟友オガリョーフと共に大衆誌『鐘』を創刊する一方、オガリョーフの奔放な妻、ナターシャ(栗山千明)との関係を深めていく。
 1861年、ついにロシアは農奴解放を実現する。喜びも束の間、不徹底な改革に落胆するゲルツェンは、流刑地から逃亡し、テロを企てる強硬派のバクーニンと決裂。暴力革命に反対するゲルツェンは、次世代の革命家たちに「死人」であると罵られる。
 壮年期を迎えた彼らの胸に去来する、永い間求め続けた、革命の意義、本当の人間の幸福とは・・・。
 ≪ここまで≫

 3回目にしてやっと流れに慣れてきたようで、今回は追いつけなくて困ることはありませんでした。
 客席通路で演技をする演出のおかげで舞台がとても近くなり、ゲルツェンらの生きたヨーロッパが今の私の世界のように感じられます。

 ロシア語、フランス語、ドイツ語、英語など、普段の生活から多言語が飛び交います。子孫が何語を話すのか、どこに住むのかも、家族の在り方を変えていくんですね。次の世代となる子供の印象が強く残る作品になっていました。

 たった30年とはいえ、日本だって70年代と今とでは様変わりです。私が生きてきたこの数十年の間も、歴史はどんどん塗り替えられてきました。お芝居の登場人物と、目の前に居る役者さんと一緒に、時の流れを共有できたような気がします。今の日本も激動まっただ中なんですよね。そういえば今回の選挙で自民党から民主党に政権交代したのは、ひとつの革命だったのかもしれません。
 
 ミハイル(勝村政信)はまたまた変貌(笑)。勝村さんの明るい存在感が心地いいです。

 ここからネタバレします。

 ゲルツェンとオガリョーフ(石丸幹二)、そしてナターシャ(栗山千明)との共同生活は、第二部と同様に奇妙(笑)。オガーリョフは娼婦(毬谷友子)と一緒に居るのでこちらも四角関係ですね。
 石丸幹二さん(元劇団四季)が歌うシーンがあって嬉しかった。

 第三部は、父の遺産を受け継いだゲルツェンが、どんなにお金持だったのかを見せつけられた感あり(笑)。毎日のように亡命革命家の人々を泊めていたし、出版を始めることになっても元手に全く困らない。ゲルツェンの子供たちはマンツーマンで家庭教師をつけてもらい、勉強のためいに外国に住むこともできました。でも彼に会いに来る運動家の若者たちは、決して裕福ではないんですよね。それだけ貴族が財産を独占していたってことなのかな。

 新しい登場人物としてニヒリストの若者が出てきて、かっこいいな~と思ったら池内博之さんでした。若者と言えば急進主義編集者ニコライ・チェルヌイシェフスキーを演じたのは長谷川博己さん。リアルな世代交代を感じさせました。
 大きくなったゲルツェンの子供たちを、第一部に出ていたバクーニン家の四人姉妹を演じた女優さんらが演じます。ぐるりと回転してもとに戻ったようでもあり、新世代へとバトンタッチされたようでもあり。

 革命が起こっても農奴は幸福にはなれず、すぐに大量の血が流れます。ユートピアを目指しても、そこにはたどり着けないと思い知らされるばかりの歴史。それでも、何度も失敗しても、自分が信じる何かをやり続けること。
 ゲルツェン「前へ進むこと。楽園の岸を上陸することなどないのだと知ること。それでも前へ進むこと。」

Bunkamura20周年記念特別企画
第一部:VOYAGE「船出」 第二部:SHIPWRECK「難破」 第三部:SALVAGE「漂着」
出演:阿部寛、勝村政信、石丸幹二、池内博之、別所哲也、長谷川博己、紺野まひる、京野ことみ、美波、高橋真唯、佐藤江梨子、水野美紀、栗山千明、とよた真帆、大森博史、松尾敏伸、大石継太、横田栄司、銀粉蝶、毬谷友子、瑳川哲朗、麻実れい 塾一久 赤司まり子 冨岡弘 手塚秀彰 妹尾正文 清家栄一 飯田邦博 岡田正 新川將人 星智也 宮田幸輝 嶋田菜美 遠山悠介 三村和敬 桐山和己/坂口淳(Wキャスト) 首藤勇星/鈴木知憲(Wキャスト) 大出菜々子/佐藤日向(Wキャスト) 木村心静/清水詩音(Wキャスト)
脚本:トム・ストッパード 翻訳:広田敦郎 演出:蜷川幸雄 美術:中越司 照明:室伏生大 衣裳:小峰リリー 音楽:朝比奈尚行 音響:鹿野英之 ヘアメイク:鎌田直樹 振付:広崎うらん 演出補:井上尊晶 演出助手:大河内直子 藤田俊太郎 技術監督:小林清隆 舞台監督:濱野貴彦 劇場舞台技術:伊集院正則 野中昭二 営業:加藤雅広 中川未来 票券:岡野昌恵 制作助手:三浦瞳(ゴーチ・ブラザーズ) [Bunkamura]制作:大宮夏子 佐貫こしの 北島由紀子 プロデューサー:加藤真規 松居珠美 [ローソンエンターメディア]制作:藤原友紀 営業:上野尚徳 プロデューサー:宮澤政司 主催:Bunkamura/ローソンエンターメディア 企画・製作:Bunkamura
【発売日】2009/06/27 [通し券(土・日・祝)通し上演]S席29,000円 A席24,000円 コクーンシート15,000円 [セット券(平日)3日にわたり一部ずつ上演]S席29,000円 A席24,000円 コクーンシート15,000円 ※セット券(平日)は3日間( I 部・ II 部・ III 部)とも同じお席番号となります。[各部券(平日 I 部・ II 部・ III 部)]S席10,000円 A席8,000円 コクーンシート5,000 ※平日セット公演に残席があった場合に限り、8月上旬に各部券(一部ごとお求めいただけるチケット)の販売を行います。※通し公演(土・日・祝)の各部券の販売はなし。※本公演は客席で舞台を挟むセンターステージ形状。
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shosai_09_coast.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2009年09月18日 00:21 | TrackBack (0)