2009年01月16日
ハイリンド『血のつながり』01/14-18「劇」小劇場
俳優4人の劇団ハイリンドが、事実を元に書かれたカナダ戯曲を重厚な演技・演出で紹介してくれました。
上演時間は約1時間50分。全席自由席・受付順入場ですので、お早めに劇場に行かれることをお勧めします。
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≪あらすじ≫ 公式サイトより。
手斧の乱打による頭蓋粉砕、即死。全世界を震撼させたこの事件は、未解決のまま迷宮入り。
疑惑がかけられた被害者の次女、リッツィー・ボーデンも証拠不十分で不起訴。
1981年度カナダ総監賞(最優秀創作戯曲)に輝いた珠玉のサスペンス・ドラマ。
息をつかせぬ展開、鋭い人物描写をハイリンドが再現する。
≪ここまで≫
無罪判決から10年後、リッツィー(はざまみゆき)のもとを訪れた女優(枝元萌)が、リッツィーの立場になって事件を振り返っていきます。役が入れ替わる劇中劇として、演劇的な演出も見どころですが、何より戯曲の内容の濃さがとっても私好み。一筋縄ではいかないカナダ戯曲の魅力を味わえました。
ただ、ゆがんだ家族の関係を息苦しくなるぐらいの張りつめた緊張感をもって描きますので、お好みに合わない方は少し疲れを感じるかもしれないですね。私は好きなんですが。
ここからネタバレします。
リッツィーが繊細すぎる性格でありながら、進歩的な考え方をする気が強い女性であるため、周囲の人々は彼女の扱いに手を焼いています。
義理の母アビゲイル(松永麻里)とその弟ハリー(伊原農)、実の父親アンドリュー(池田ヒトシ)から経済的な面で追い詰められ、父との口論の末に可愛がっていた鳩を殺されたリッツィーは、恋人(といっても散歩して話すだけ)の医師(多根周作)の言葉を自分の都合のいいように解釈して、邪魔なアビゲイルを惨殺してしまいます。続いて、予想よりも早く帰宅してしまった父を殺害。
小さな出来事の積み重ねによって、気持ちの揺らぎが大胆な行動へと人間を駆り立てていきます。残忍な殺人者が、たった数日間で、どのように生み出されてしまったのかを丁寧な心理描写で見せて下さいました。舞台下手にハトの小屋を作り、ハトを小さな木のイスに見立てて、殺されたど同時にドサっとイスを落とす演出は、わかりやすいし良かったと思います。
リッツィーが生まれた時に実の母親が死亡しており、父親にとってリッツィーは、可愛い娘であると同時に妻の命を奪った仇でもあるんですよね。なんと皮肉な設定。
姉エンマ(江間直子)は義理の母にも忠義を尽くす出来のいい長女ですが、リッツィーの育ての親でありながら、妹を最後まで守ってあげるほどの愛情は持ち合わせていませんでした。事件から10年後の最後のシーンでリッツィーが、「あなた(姉)は私。あなたがやりたいことを、私がやっていた」と言います。これは・・・戦慄でしたね。
誰でもリッツィーになる可能性があるということを、2人のリッツィー(はざまみゆき&枝元萌)で表現しているのも良かったです。
ハイリンドvol.7
出演:多根周作、はざまみゆき、伊原農、枝元萌、池田ヒトシ、江間直子(無名塾)、松永麻里(The30's)
【脚本】シャロン・ポーロック 【翻訳】吉原豊司 【演出】藤本剛 【舞台監督】井関景太(るうと工房) 【照明】石島奈津子(東京舞台照明) 【音響】高橋秀雄(SoundCube) 【舞台美術】向井登子 【衣裳】山本亜季 【宣伝美術】西山昭彦 【スチール】夏生かれん 【撮影ヘアメイク】田沢麻利子 【Webデザイン】藪地健司・夏子 【ハイ友】鍋谷ナナオ 【制作】石川はるか 【制作補佐】竹内佐枝
【発売日】2008/12/07 前売/当日3,500円 ハイリンド賛助会員2,500円(全ステージ共通) 平日マチネ(15日14時の回)前売/当日3,000円
http://www.hylind.net/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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キューブ/ブリーゼアーツ『冬の絵空』01/12-02/01世田谷パブリックシアター
サンケイホールブリーゼのこけら落とし公演です。劇団そとばこまちの1987年初演の戯曲を、鈴木勝秀さんが演出されます。
小劇場から育った有名俳優が、豪華な装置の中を伸び伸びと走り、飛び回り、軽い笑いとドラマを見せてくれました。上演時間は約2時間50分(休憩15分を含む)。
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≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
時は元禄。人気役者・沢村宗十郎(藤木直人)は豪商・天野屋利兵衛(生瀬勝久)に、娘のおかる(中越典子)を嫁にしたいと嘆願するが、まったく相手にされない。大石内蔵助(橋本じゅん)は城主・浅野(中村まこと)の切腹、お家取り潰しが決まった後も、討ち入りにはやる家臣たちを抑え、まだ討ち入りの機は熟していないこと、そして各々の身の振り方を考えるよう説く。天野屋は赤穂の家臣たちが討ち入りすることを期待していた。しかし、大石にその意志がなく赤穂浪士の評判も落ちていることを嘆いた天野屋は、一計を案じ、宗十郎に、あることを条件におかるを嫁にやると持ちかける。
それは、宗十郎扮する偽の大石内蔵助に悪者退治をさせ、赤穂浪士たちの評判を回復させるとともに、討ち入りへの機運を盛り上げることであった・・・。
≪ここまで≫
前半はギャグなどを含めて少々長く感じたのですが、終盤の展開にはなるほど~と唸るほどに引き込まれました。
ごうつくばりの恐ろしい商人・天野屋を演じた生瀬勝久さんに、何がどう転んでも、目が釘付け。
琵琶法師のように語りをする尼を演じられていたのが、中越典子さんだと後から気付いてびっくり。重みのある存在感が良かったです。
ここからネタバレします。
切腹したはずの殿が生きて帰ってくるという発想が面白いですね。身代わりになって死んだのは殿の影武者でした。役者の宗十郎が武士・大石のニセモノを演じるのもまた、誰かのフリをして自分を偽り、人を騙すという行為です。次々と嘘VS嘘となる構図が面白い。
殿が生きていたとわかっても、気持ちの高まりを抑えられずに仇討ちをしてしまう浪士たち(内田滋ら)。嘘を本当に変え、真実が迷宮入りすれば、そのまま史実となって後世へと残ります。「本当とは何か?その証ができるのか?」という宗十郎の問いかけが胸に響きました。
最後の桜吹雪がきれいでした。装置の効果を実感。
≪大阪、愛知、広島、福岡、東京≫
出演:藤木直人、橋本じゅん、中越典子、中村まこと、片桐仁、伊達暁 新谷真弓、六角慎司、内田滋、小松利昌、前田悟、武田浩二、安田桃太郎、八十田勇一、松尾貴史*、粟根まこと*、加藤貴子、生瀬勝久 (*)ダブルキャスト ※私は粟根まことさんの回を拝見。
脚本:小松純也 演出・上演台本:鈴木勝秀 美術:二村周作 音楽:横川理彦 照明:原田 保 音響:井上正弘 衣裳:前田文子 ステージング:前田清実 殺陣指導:田尻茂一 川原正嗣 前田悟 武田浩二 へアメイク:宮内宏明 犬兜造形:片桐仁 演出助手:長町多寿子 舞台監督:瀧原寿子 宣伝美術:東學 宣伝写真:須佐一心 宣伝衣裳:前田文子 宣伝ヘアタイク:宮内宏明 主催:株式会社サンケイビル/株式会社キューブ/関西テレビ放送株式会社 制作協力:リコモーション 企画・製作:株式会社会社キューブ/株式会社ブリーゼアーツ
一般S席9,000円/A席8,000円/プレミアムシート11,000円
http://www.sankeihallbreeze.com/kouen_fuyu.html
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2009/01/post_134.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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