2009年02月08日
桃園会『電波猿の夜~A night of Denpasar~』02/06-11ザ・スズナリ
深津篤史さんが作・演出・劇団プロデュースを手がける桃園会の新作です。タイトルの“電波猿”は“でんぱさる”と読みます。桃園会の公演を観るのは何年ぶりかしら。とても久しぶり。
今回は難解らしいと聞いたので、心して拝見したのですが、ん~・・・何もわからなかったかも(汗)。ごめんなさい。上演時間は約1時間30分。
⇒CoRich舞台芸術!『電波猿の夜』
迷彩柄の壁が三方から囲むステージ。中央に二段ベッド。壁の下部分は空いていて、人が這って手前と奥を行ったり来たりできるのが面白かったです。
抽象美術で、セリフもどうやら日常的なものではなく。突然得体の知れないものが出てくるし。なんとか想像力を駆使してついていこうとしたのですが、どこに注目していいのかがつかめなかったです。散漫なままで感じ取るだけでもいいとは思うのですが、興味が持続しませんでした。
役者さんはどこまでセリフの意味を理解して、何を考えて(何を考えないで)しゃべっているのかな~と、探るような気持ちで見ることになりました。バラバラな感じがいいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私は表現の中にコレだという核になるものが感じらないまま、集中できず。根性が足りなかったかも。
ここからネタバレします。
見るからにヤモリな衣裳のヤモリと“私”が会話する時点で、非常に象徴的な演劇なのだろうなと思って拝見。
“でんぱさる”はバリ島の州都デンパサールのことでした(⇒ププタン広場での集団自決)。私が生きる日常の裏に、同時に誰かの生きる世界がある。その間の壁はたぶん自分が勝手に作って、勝手に越えられないと思っているのでしょう。
最後に“彼女さん”と“私”だけが残ります。徐々に色を変えながら明るく舞台全体を照らしていく照明がかっこ良かったです。
≪大阪、東京≫
出演:亀岡寿行 はたもとようこ 紀伊川淳 森川万里 橋本健司 長谷川一馬 川井直美 寺本多得子 ●オーディションより選抜キャスト:岡本大輝(劇団さざんか) 阪田愛子(劇想空飛ぶ猫) 林いくみ よこえとも子(てんこもり堂) 渡辺香奈子
脚本・演出:深津篤史 舞台美術:池田ともゆき 舞台監督:河村都(CQ) 音響効果:大西博樹 照明効果:西岡奈美 宣伝美術:白沢正 演出助手:森本洋史 イラスト:山田賢一 宣伝美術:白沢正写真:白澤英司 写真撮影:白洋英司 ビデオ:西本和彦 衣装:畠本陽子 制作協力:尾崎雅久 制作:挑園会 主催:桃園会
【発売日】2008/10/25 一般前売 3,000円、学生前売2,000円 一般当日 3,300円、学生当日2,300円 ペア 5,000円(ペア券は劇団前売・予約のみ扱い) *早割り 各公演1カ月前までに予約・購入の場合前売価格よりさらに200円引き。 *リピーター割引き 2回以上観る場合、1回目のチケット半券呈示で一律1,500円に割引き。
http://www.toenkai.com/index.htm
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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スロウライダー『クロウズ』02/07-15 THEATER/TOPS
山中隆次郎さんが作・演出されるスロウライダーの最終公演です。上演時間は約1時間50分。
テレビゲーム的なB級ホラーSFの世界を具象で作り上げ、演劇らしい演出と生々しさも堪能できる快作でした。社会風刺も効かせてユーモアもたっぷり。最初から最後までそれらの“狙い”に唸らせられながら、わくわく楽しく拝見いたしました。音が鳴っただけで笑ったりも(笑)。前知識なしでご覧になると一層楽しめるのではないかと思います。
前売3,500円のところ平日夜は3,200円とお得です。初日(前売2,500円)は早々に完売で満席でした。
⇒CoRich舞台芸術!『クロウズ』
レビューをアップしました(2009/02/09)。
冒頭シーンからいきなりハラハラわくわくの危険世界にどっぷり!凝った音楽であざとく(笑)盛り上がりを演出する、狙いを定めたチープさがかっこいい!
ウィルス感染者と非感染者との対立を軸に、それぞれのコミュニティ内のドラマ(家族愛、恋愛、友情、仲間割れ、差別など)にも触れながら、隔離された島での小さな戦闘をリアルに描きます。役者さんも演技は非常事態の人間の熱を表現しつつ、ちゃんと冷静さもあってとても良かったです。
登場人物は極端に弱くて、だらしなくて、醜い人間たちばかりなのに(笑)、みんなにとても愛嬌がある。それでいて、グサっと刺さるようなブラックユーモアがあちこちに散りばめられていたのも、すごく好きでした。
ここからネタバレします。
健常者はゾンビ(感染者)に噛まれると、一度死んでゾンビとしてよみがえる。ゾンビは体が腐敗し切らない限り、銃で打たれても死なない。人肉がゾンビの体に良いらしく、食べたら元気になる。平和的なコミューンを形成するゾンビ集団(クロと呼ばれる)は、人道にもとることなく(ゾンビなんだけどね)、芸術創作をしながら心安らかに暮らそうとしていた。
しかし、クロたちに防腐剤を作ってくれる元女医ウロコ(大村彩子)が、ゾンビ駆逐を企てる健常者たちによって拉致されたことから、生死を賭けた戦闘が始まる。
ゾンビは白い顔に赤や青なども加えた“ゾンビ”メイクで、常にふらふらヨロヨロしています。ゾンビを演じる役者さんは大変そうだけど、健常者との対比が見るからに鮮やかなので面白いです。
最初に登場したゾンビが凶暴なヤフー(芦原健介)だったので、人間(善)VSゾンビ(悪)を描くのかと思いきや、穏やかなリーダー格のゾンビ・サトル(池田ヒロユキ)らが登場して、世界は一変。ヨロヨロしたゾンビたちの日常会話が、ほんわかしていてサイコーに可笑しかった。
ゾンビになったばかりの県職員・湊(數間優一)だけに見える過去の自分の幻(田中慎一郎)が、舞台上に登場しました。独白する幻にスポットライトが当たるのが可笑しかった。他にも、ゾンビ埋葬屋(高見靖二)らが立てこもる小屋の壁がはずれて部屋の中が見えるようになるなど、演劇ならではの“嘘”を観客も一緒になって信じて、楽しめて良かったです。
そういえば最初の稲光の照明が効果的で、でもリアルすぎて笑ってしまいました(そこまでするか!?って・笑)。
アート作品を創作するゾンビたち(シトミマモル&池田ヒロユキ)の拠点の名前はアジルジマ・モンパルナス。それってラパン・アジルから来てますよね(笑)。防腐剤の名前がチクロンB(Wikipedia)っていうのも・・・(苦笑)。
サトルが作り上げた傑作の壷が、ちゃらちゃらしたセレブ女に落とされて割れるというてん末にも爆笑しました。思い通りにはならないものですよね、人生。きれいに生きるなんて不可能だ。
最後に舞台上に残ったゾンビが湊(數間優一)とヤフー(芦原健介)だったのが微笑ましかったです。お2人が劇団員なんですよね。スロウライダーは解散だけどゾンビとして生き残ってるよ、みたいな。腐敗してすぐ死んじゃうかもしれないけど・・・(笑)。
出演:大村彩子、中川智明、岡村泰子(きこり文庫)、池田ヒロユキ(リュカ.)、星耕介、シトミマモル、高見靖二(チャリT企画)、田中慎一郎、吹田早哉佳、中川鳶、徳橋みのり(ろりえ)、奈実、芦原健介、數間優一
脚本・演出/山中隆次郎 舞台美術/田中敏恵 照明/伊藤孝(ART CORE design) 音響/中村嘉宏 音楽/山野井譲・佐藤こうじ(SugarSound) 舞台監督/西廣奏 演出肋手/田中慎一郎 駒橋誉子 メイク/篠本尚紀 宣伝美術/上田大樹(&FICTION!) Web運営/栗栖義臣 記録・映像/トリックスターフィルム グッズ製作/YogurtWear 票券/スギヤマヨウ(制作集団QuarterNote) 制作補/迫田智哉(feblabo) 制作協力/斎藤努 企画・製作/スロウライダー
【発売日】2009/01/10 前売3500円 当日3800円 初日2500円(劇団予約のみ) 平日3200円(劇団予約のみ)
http://www.slowrider.net/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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