REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2009年11月08日

宝塚歌劇団・花組公演『「外伝ベルサイユのばら -アンドレ編-」「EXCITER!!」』10/23-11/22東京宝塚劇場

 数年ぶりに宝塚歌劇を鑑賞。レヴューの魔力にどっぷり浸かり、すっかり感激しちゃいました!数年ぶりだったので奮発してS席8500円で行ったけど、安すぎます。生演奏であの美術、衣裳、そして踊って歌える役者が約80名!

 上演時間は約3時間(途中30分の休憩を含む)。日曜日の朝11時から2時まで、途中30分の休憩中に持参したランチを食べて、まだこれから夕方ゆっくりできるんですから。素晴らしい休日の1日になりました。

 過去の記録を調べてみたところ、2001年4月以来、約8年半ぶりの東京宝塚劇場でした。あの時は星組『ベルサイユのばら2001-オスカルとアンドレ編-』を観たのでした。そう、あの時も「ベルバラ」目当てでした。

 ⇒CoRich舞台芸術!『「外伝ベルサイユのばら -アンドレ編-」「EXCITER!!」

 第一部の「ベルサイユのばら外伝」はやっぱり原作を読んでた方がいいですよね。演技については私の好みではないという以外に何も言えない…(様式美だと思うので)。
 
 第二部のレビューが凄かった。夢と喜びがあった。日本から世界に発信して恥ずかしくない芸だと思いました。満足です。ありがとうございました。

 ここからネタバレします。

■宝塚ロマン「外伝ベルサイユのばら -アンドレ編-」
 原作/池田理代子 外伝原案/池田理代子 脚本・演出/植田紳爾
 ≪あらすじ≫

 田舎者の平民女子が貴族の養子となり、貴婦人となって幼い頃の思い人(=アンドレ)に再会するというシンデレラストーリー。ピンクのヒロインドレスがキラキラ。

 平民と衛兵が衝突する戦闘シーンがダンスで表現されており、ここでやっぱり泣けてきてしまいました。こんなに恋、愛に夢中で、「愛の記憶があれば生きていける」とか歌いあげておきながら、人間はやはり殺し合いをせずには生きていられない。宝塚の夢の中にも戦争があり、その戦争をダンスという美しい形で示しているんですね。


■スパークリング・ショー「EXCITER!!(エキサイター)」
 作・演出/藤井大介

 スペインのフラメンコが元になっているらしき、前半のダンスがいきなり良かったです。

 バニーガールのようなほぼ水着の衣裳で足を高く上げてラインダンス。涙が出てきてしまった…。すべてはここから始まって、日々の鍛錬を経て、スターが育っていく。文化を育て、守り、観客に夢を与えてくれています。日本で生まれて根づいていることを誇らしく思いました。イギリスの男優集団プロペラは、宝塚にインスパイアされて旗揚げしたんですよね。

 ニューヨークのライフスタイルをコミカルに演じていく場面では、ファッションの変遷が面白かったです。

 トップは真飛聖(まとぶ・せい)さん。華がある!これだけ大勢のダンサーたちを背中にしょって、先頭を歩いて、光を、喝さいを浴びて…。やっぱりトップさんには理由があるんですね。


花組・宝塚大劇場公演<2009年9月4日~10月5日>
花組・東京宝塚劇場公演<2009年10月23日~11月22日>
出演:夏美よう 高翔みず希 眉月凰 絵莉千晶 悠真倫 真飛聖(TOP:アンドレ) 壮一帆(アラン) 愛音羽麗(オスカル) 未涼亜希 桜一花 華形ひかる 真野すがた 紫峰七海 花野じゅりあ 初姫さあや 日向燦 紫陽レネ 桜乃彩音(娘役TOP:マリーズ) 扇めぐむ 夕霧らい 祐澄しゅん 愛純もえり 聖花まい 朝夏まなと 華耀きらり 月央和沙 望海風斗 白華れみ 天宮菜生 華月由舞 嶺乃一真 浦輝ひろと 彩城レア 芽吹幸奈 煌雅あさひ 梅咲衣舞 瀬戸かずや 冴月瑠那 遼かぐら 瞳ゆゆ 夏城らんか 白姫あかり 鳳真 輝良まさと 花蝶しほ 春花きらら 花峰千春 彩咲めい 真瀬はるか 鞠花ゆめ 天咲千華 天真みちる 月野姫花 銀華水 初花美咲 花織千桜 神房佳希 日高大地 花輝真帆 菜那くらら 大河凜 真輝いづみ 桜帆ゆかり 鳳龍あや 航琉ひびき 桜咲彩花 凪咲星南 花奈澪 美花梨 仙名彩世 和海しょう 羽立光来 舞月なぎさ 新菜かほ(※) 夢花らん 朝陽みらい 紗愛せいら(※) 冴華りおな 水美舞斗 実咲凜音 真鳳つぐみ 柚香光 愛羽ふぶき こと華千乃 美蘭レンナ 雪華さくら
専科: 星原美沙緒 邦なつき 箙かおる
※新菜かほは11月6日(金)より、紗愛せいらは11月7日(土)より休演いたしております。
※(専科)星原美沙緒、邦なつき、箙かおるは『外伝 ベルサイユのばら -アンドレ編-』のみ出演致します。
『外伝 ベルサイユのばら -アンドレ編-』脚本・演出:植田紳爾/スパークリング・ショー『EXCITER!!』作・演出/藤井大介
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/backnumber/09/flower_tokyo_gaidenverbara/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 23:58 | TrackBack

劇団青年座『3on3 Part2 喫茶店で起こる三つの物語』11/01-08青年座劇場

 (社)日本劇団協議会が主催する“次世代を担う演劇人育成公演”の中の1企画です。『3on3』は喫茶店を舞台にした短編3作のオムニバス。今回は第二弾です(2008年の第一弾は未見)。

 同じ喫茶店で起こった3つの出来事ではありますが、脚本・演出が全て違う人なので、それぞれに違う味わいでした。でも全体的に残念な出来。上演時間は約1時間40分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『3on3 Part2 喫茶店で起こる三つの物語

 こげ茶色の木としっくい、煉瓦で内層されたシックな喫茶店。コーヒーはサイフォンで淹れる本格派。家具や装飾品、小道具までがっつり具象の美術はいいですよね。気分も盛り上がります。

 それにしても・・・新劇の劇団っていつまでもこんな演技がスタンダードなのかなー。これで“次世代を担う演劇人育成”なんて言っていいのかしら。まあ役者だけじゃなく演出家も育成対象者なんですが、それも・・・。

 観客に「芝居はこういうものだ」というルールを当たり前のように押し付けている気がします。先月から刺激的なお芝居にたくさん出合っているので、ついつい辛口になってしまいました。


■『みぢかうた』
 作:本田誠人(ぺテカン)/演出:磯村純
 出演:名取幸政 宮寺智子 尾身美詞 荒川大三郎(演劇集団円) 古川龍太(クリオネ) 保可南(芹川事務所) 寒河江有似(オムプロモーション)

 ≪あらすじ≫
 店長(坂口進也)が旅行に出発し、アルバイト(古川龍太)が1人で切り盛りしている日。客はかしましい女子高生3人組(保可南 寒河江有似 尾身美詞)と、老カップル(名取幸政&宮寺智子)。突然停電になり・・・。
 ≪ここまで≫

 明るく楽しく元気に盛り上げてくれるのはいいのですが、会話に腑に落ちないやりとりが多く、疑問が頭にうずまきました。
 老カップルが深刻な話をしている時に、少し離れたテーブルで女子高生が静かにしてるのはなぜなのか(話を盗み聴きしてるのか、重要な会話を観客に伝えるためにわざと静かにしてるのか)が曖昧。演出の詰めが甘いんじゃないでしょうか。

 店を黙々と仕切るアルバイター役の古川龍太さんは、1人の人間としてちゃんと立っているように見えて良かったです。冷たそうに見えて実は気が利く“モテる男”であることにも納得。

 ここからネタバレします。

 ろうそくの光の中、見知らぬもの同士が身の上話をします。
 「俺は糖尿病のせいでもうすぐ失明するんだ」という元夫の告白(嘘なのですが)に対する、元妻の態度が・・・軽すぎる。元妻が踊り出すのに女子高生が付き合うのも不自然。演技や演出でなんとかなるはずだと思います。
 結局「袖振り合うも多生の縁」の境地に落ち着くのですが、短絡的すぎる印象。これも演出次第でどうにかできるんじゃないでしょうか。脚本も強引ですが。

 最後の最後に、女子高生(尾身美詞)がアルバイターに告白する場面で溶暗して終幕。これは可愛かったです。

■『青島先生』 ※★は育成対象者
 作:鈴木哲也/演出:須藤黄英★
 出演:桜木信介★ 若林久弥

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 たった一人の静かな店内。
 ため息をつき、やがて席を立とうとすると、
 「青島先生。僕です。井上です……」
 呼び出した男。呼び出された男。
 中学教師(若林久弥)とかつての教え子(桜木信介)、12年ぶりの"危険"な再会!
 ≪ここまで≫

 面白い脚本なのにもったいないなーと思ったまま終幕。セリフの解釈(発音や言い方、演技の選び方)が的外れな気が・・・。突然忍び寄よってくるはずの恐怖や、ドカンと来るはずの笑いどころをつぶしてしまってるように見えました。

 ここからネタバレします。

 教え子は無職になってしまい思いつめ、誰でもいいから殺して死刑になろうとしていました。中学教師は多額の借金をして女房にも逃げられ、死のうとしていたところでした。


■『はひふへほ』 ※★は育成対象者
作:長谷川孝治(弘前劇場)/演出:千田恵子
出演:嶋田翔平★ 原口優子 髙橋幸子 坂口進也(青年座映画放送) 土師孝也(青年座映画放送)

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 母が忽然と姿を消してから数年が経った。
 「今度、結婚することにした」父(土師孝也)からの報告に困惑する息子(嶋田翔平)。
 母の事はどうするつもりなのか……。
 新しい母(原口優子)と三人で会う日、
 父と息子の奇妙な関係が動き出す。
 ≪ここまで≫

 脚本の深みや、それゆえの苦い味わいが、演出でかき消されている印象。息子役は大役です。演じた方は“育成対象者”だから仕方ないのかもしれませんが・・・うーん。他の人もありきたりな言葉運びで、相手とコミュニケーションせず、1人でしゃべってるみたい。
 あらためて感じましたが、私は長谷川孝治さんの脚本が得意じゃないですね。やっぱり(2000年の『三日月堂書店』以来、弘前劇場は観てません)。

 ここからネタバレします。

 いきなり青森の話が続くのですが必要性が感じられず。吹雪のこととか名産品のこととか、全く実感が伝わってこない。

 新しく母親になる女性(原口優子)は美術教師ですが、デリヘル嬢もしており、元アル中だと告白したところから一気に面白くなりました。息子と関係を持っていたんですね。

 息子が電話で知人の死を伝えられるのですが、それはつまり失踪した母親のことでしょう。でもあんな演出(演技)だと観客には伝わりづらい気がします。

装置:阿部一郎 照明:中川隆一 音響:中島正人 衣裳:竹原典子 舞台監督:安藤太一 宣伝美術:早田二郎 制作:森正敏 監修:宮田慶子 平成21年度文化庁芸術団体人材育成支援事業 次世代を担う演劇人育成公演8 主催:(社)日本劇団協議会
全席指定 前売・当日4,000円 月曜割引3,500円
http://www.seinenza.com/performance/gekidankyo/091101.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 01:12 | TrackBack

渡辺源四郎商店『今日もいい天気』11/05-08こまばアゴラ劇場

 渡辺源四郎商店は畑澤聖悟さんが作・演出(たまに出演も)される青森の劇団です。『今日もいい天気』の初演は2003年。新キャスト、新演出の再演です。

 青森の男所帯の家庭での、平凡な日常に起こる奇跡。温かいお話でした。開演前からハンカチを用意しておいて正解。上演時間は約1時間30分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『今日もいい天気

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 青森市郊外にある一軒の家。
 この家の太陽であったひとりの女は7年前、この世を去った。
 遺された4人の男たち(宮越昭司、田中耕一、山田百次、工藤良平)はそれぞれ喪失を抱えつつ、ひとつ屋根の下で日々を送ってきたが…。 
 ≪ここまで≫

 舞台は畳の居間。黒いペン(←おそらく)でパネルに家具の絵が描かれており、四角いはずの畳の部屋がまん丸い形になっています。縁側(廊下?)まで丸くなってるのが可愛い!絵本の世界のようですが、衣裳や小道具が具象なので、リアルとファンタジーの混ざり具合が楽しいです。

 ゆるやかに弧を描くような発音の方言、やわらかくて優しい声、そして一緒に居る相手に対する、おっとりしているようでいて実はとてもこまやかな心配り。そんな役者さんの在り方を目で見て、体と心で感じているだけで、涙がぼろぼろこぼれてしまいます。これは私が普段よく目にする東京(または首都圏)で生活している役者さんからは、受け取れないものだと思います。

 不器用ゆえに気持ちを言葉にできない状態がいとおしくて。目、口、肩、お腹、そして床に着いた足から、その気持ちがしみ出してきてしまう様が温かくて。役者さんがもぞもぞしてたり、だまっていたりする場面でも何度も涙が流れました。

 ここからネタバレします。

 家政婦と名乗る女性(工藤由佳子)は、登場した時から飼い猫のタマだとわかります。猫は今朝、死ぬために家を抜け出したばかり。一家の太陽のような存在だった長女の姿をして、4人の男たちの前に現れるのです。
 彼女の正体を見破るのは僧侶(牧野慶一)。でも長男で主夫(&アルバイト)をしている和也も、うすうす気づくのがいいですね。彼が猫のタマを一番愛してたから。

 彼女が作ったお昼ご飯(バターライス)をむさぼるように食べるシーンも良かったです。家族で一緒にご飯を食べるってことが、どれだけ幸せなことなのか、美味しいということがどれだけ人間にとって大切なことなのかが、ほんの数分(もしかしたら1分未満)であらわされていたように思います。カーテンコールでカレーの匂いが広がるのも素晴らしい。

 大学生の亨(工藤良平)は富平(宮越昭司)の孫で、万次郎(田中耕一)の息子ですよね。つまり交通事故で亡くなった長女(工藤由佳子)の息子ってことなんですが、そうは見えづらかったです。長男(山田百次)の弟ぐらいに感じてました。
 長男はサークルKでアルバイトをしていて、そこで出会った恋人(柿崎彩香)が家を訪れますが、恋人同士には見えなかったな~。もうちょっと色っぽいムードが欲しかったですね。

 『猫の恋、昴は天にのぼりつめ』よりも前に書かれているので、『猫の恋・・・』のもとになったのかしら。どちらも広い年齢層に受け入れられる、質の高いストレート・プレイだと思います。 

≪青森、東京≫ 渡辺源四郎商店第10回公演
出演:工藤由佳子 高坂明生(Wキャスト) 工藤良平(Wキャスト) 柿崎彩香 宮越昭司 田中耕一(劇団雪の会) 牧野慶一(劇団雪の会) 山田百次 吉田唯
脚本・演出:畑澤聖悟 照明:浅沼昌弘 音響:藤平美保子 舞台美術:山下昇平 装置:渡辺源四郎商店 舞台監督:三上晴佳 プロデュース:佐藤誠 ドラマターグ:工藤千夏 宣伝美術:木村正幸 制作:渡辺源四郎商店 制作補:西後知春、おりゅう 主催・企画制作:渡辺源四郎商店 東京公演提携:(有)アゴラ企画/こまばアゴラ劇場
【発売日】2009/09/15 前売一般3,000円、学生2,000円、高校生以下500円 当日一般3,300円、学生2,300円、高校生以下800円
http://xbb.jp/wgs/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 00:07 | TrackBack