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しのぶの演劇レビュー
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2010年05月31日

新国立劇場演劇『夢の裂け目』04/08-28新国立劇場小劇場

 メルマガのお薦め前売り情報で2ヵ月連続(⇒2月号、⇒3月号)でご紹介しておりました、新国立劇場の東京裁判三部作が開幕しました。3部作すべての脚本は井上ひさしさん、演出は栗山民也さんです。

 第1作目の『夢の裂け目』の初演は2001年。『夢の泪』『夢の痂(かさぶた』は観たけれど『夢の裂け目』は観ていなかった母を連れて、2人で観に行きました。母は3作の中で『夢の裂け目』が一番好きと言っていました。私もそうかも。

 メルマガ号外を発行しました。キャストは一部変わっていますが、優しい言葉を通して伝わってくる心は同じ。上演時間は約3時間(途中休憩15分を含む)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『夢の裂け目

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより (役者名)を追加。
 昭和21年6月から7月にかけて、奇跡的に焼け残った街、東京・根津の紙芝居屋の親方、天声こと田中留吉(角野卓造)に起こった滑稽で恐ろしい出来事。講釈師から活動弁士を経て紙芝居という「語り物」の日本の芸能の系譜をひく“しゃべる男”天声が、突然GHQ・国際検事局から「東京裁判に検察側の証人として出廷せよ」と命じられ、民間検事局勤務の川口ミドリ(土居裕子)から口述書をとられる。ふるえあがる天声。
 岳父の紙芝居の絵描き・清風(木場勝己)、都立第一高女を卒業したばかりの娘・道子(藤谷美紀)、妹で元柳橋の芸妓・君子(熊谷真実)、君子の柳橋の同僚・妙子(キムラ緑子)、失業中の映写技師・川本孝(大鷹明良)、紙芝居大好きな復員兵・関谷三郎(高橋克実)、謎の闇ブローカー・成田耕吉(石井一孝)ら、家中の者を総動員して「極東国際軍事法廷証人心得」を脚本がわりに予行演習をする。そのうちに熱が入り、家の中が天声や周囲の人間の〈国民としての戦争犯罪を裁く家庭法廷〉といった様相を呈しはじめる。
 そして出廷。東条英機らの前で大過なく証言を済ませた天声は、東京裁判の持つ構造に重大なカラクリがあることを発見するのだが・・・・・・。
 ≪ここまで≫

 シャープな抽象美術を重みのある照明が染めて、終戦直後をたくましく生きる庶民の生活を力強く歌います。『三文オペラ』が大好きなので、メロディーを耳にするだけでも嬉しくなります。

 「東京裁判とは戦犯にすべての戦争責任を負わせる意図があったのではないか。じゃあ日本国民は?“私たち”にはまったく責任はないのか?」という問いかけ。

 ここからネタバレします。

 初演では、ジャワ島のスラバヤで会った娼婦ジェニィの思い出を語る場面で、当時のことを知る老齢のお客様が大いに笑ってらしたんですが、今回はそういう雰囲気はありませんでした。そういえば国際法の教授(石井一孝)が闇市のブローカーになってしまったというエピソードでも、今回は特に笑いは起こっていなかったように思います。

 戦争を経験した観客がごく少数になったからではないかしら・・・。私の母は戦後生まれなので、戦争経験者となると私の祖父と祖母ですが、祖父は亡くなっていますし、祖母は劇場に来られるほど元気ではありません。初演から10年経って、客層もぐっと変わったのだと思います。

出演:角野卓造/高橋克実/大鷹明良/石井一孝/木場勝己/土居裕子/藤谷美紀/熊谷真実/キムラ緑子
【生演奏】キーボード:朴勝哲 ウッドウィンズ:坂川諄(大下和人が急病で降板。中秀仁とダブルキャスト) テューバ:佐藤桃 ドラム・パーカッション:山田貴之 
脚本:井上ひさし 演出:栗山民也 音楽:クルト・ヴァイル 宇野誠一郎 音楽監督・編曲:久米大作 美術:石井強司 照明:服部基 音響:黒野尚 衣裳:前田文子 ヘアメイク:佐藤裕子 ステージング・振付:井手茂太 歌唱指導:伊藤和美 演出助手:北則昭 舞台監督:濱野貴彦 総合舞台監督:増田裕幸 芸術監督:鵜山仁 主催:新国立劇場
【休演日】2/15,22 【発売日】2010/02/21 A席:5250円 B席:3150円 Z席:1500円
http://www.nntt.jac.go.jp/play/20000211_play.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年05月31日 21:49 | TrackBack (0)