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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2010年08月17日

東京芸術劇場プロデュース・日タイ共同制作『Spicy, Sour, and Sweet』08/13-15東京芸術劇場小ホール1

 野田秀樹さんがタイと日本の若手パフォーマンス集団の共同制作公演を企画・発案されました。⇒野田さんによる公演紹介
 まずはタイから来日したB-Floorが新作を披露し、休憩を挟んだ後に日本の快快(ファイファイ)とB-Floorがともにつくった約45分の短編を上演。

 写真は芸劇前のポスターたち↓です。左上が『Spicy, Sour, and Sweet』、右上がNODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』、左下がTSミュージカルファンデーション『Diana-月の女神ディアナ-』、右下がタクトフェスティバル
20100813_Spicy_Sour_and_Sweet.JPG

 芸劇に行く機会が増えましたね~。私が伺った日は3公演が同時にに初日の幕を開けるという日でした。

 ⇒稽古場レポート「トムヤン君とミソシルちゃん
 ⇒稽古場レポートを書かれた徳永京子さんの感想ツイート
 ⇒CoRich舞台芸術!『Spicy, Sour, and Sweet

 白い床に白い壁のステージを客席が2方向からはさみます。スケートボードのスライド競技(?)の会場みたい。2作品とも動画を床および壁に映写する演出を多用していました。
 快快と同世代の柿喰う客が中国人、韓国人とともにつくった『wannabe』と同様、英語が彼らおよび観客とのコミュニケーション・ツールになっていましたね。

 共同制作作品が面白かったかったかというとあんまり。でもB-Floorも快快も「自分たちが今感じていること」に正直で、舞台上に居る時もそのままの自分たちをさらして、観客と触れ合おうとしていました。この「身もふたもないありのまま感覚」というのが私にはないもので、いつも快快の作品を観たときに感激します。世代で区切ることはできないとは思いながらも、20代の演劇の作り手の作品を観る度に、時代が変わっている、新しい何かが生まれていると感じます。


 ■B-Floor「Flu O Less Sense」

 快快の山崎皓司さんが出演されてましたので、今公演用の特別バージョンなのでしょうね。

 B-Floorの若者の視点から見た「ほほえみの国」と呼ばれるタイの現実。タイで起こった暴動の映像を流しながら、舞台にいる若者たちは“いつもの労働”をしています。世界中に撒き散らされる報道と、庶民の日常との乖離をあらわしているように思いました。

 激しい身体表現にも日常的な身体がそのまま生かされていて好感。プラスチックの皿を床に転がすのがきれい。着物の女性は「蝶々夫人」かしら。さすがはプッチーニのオペラ、ボーダレス。
 空間全体の演出は色使いに個性があると思いました。でも映像と照明、音楽に頼りすぎている気も。最後のダンスで細長い照明が降りてきたのがかっこよかった。ダンスも良かったです。黒い衣装でそろえて凄みがありました。


 ■快快とB-floorの合同公演「どこでもDoor」

 「快快とB-floorが出会って交流したよ!」という内容。まさにそのまま、ありのまま。
 出演者とともに観客がヨガをしたり、タイ土産を観客が買うお買い物シーンがあったり。スムーズに観客参加型にしていく手腕はいつもながら見事です。観客の拍手でタイの街にスコールが降るという演出も素敵。

 『wannabe』でも感じたことですが、「異文化交流をした」という成果はあるものの、作品としてのクオリティーは高くはありませんでした。でもタイと日本の若いアーティストがぶつかり合って、ひとつの結果を出したことには意義があります。東京芸術劇場には、今後もこういった企画を継続してくださることを期待します。


●B-Floor新作「Flu O Less Sense」
[シーン]空港/笑顔の街/インドア(室内)/アウトドア(屋外)/瞬間/結末のはずが…
出演:ドゥダオ・ワッタナパゴン ナーナー・デーキン ワランユー・イントラカムヘン、サルット・コーマリッティポン ササピン・シリワニット オーンアノーン・タイスリウォン
演出:チィラワット・ムンウィライ(KAGE) 作曲:クリッサダー・レーイエス
技術監督:タウィット・ケーッブラバイ 照明デザイン:パウィニー・サマックプット ビデオ・グラフィック・デザイン:テーチット・ジローパースゴッソン リー・スートーサック ドキュメンタリー映像:ノッパン・ブンヤイ 振付(蝶々さん):トーポン・プンサッター メイク・衣裳デザイン:オーンアノーン・タイスリウォン 小道具:サルット・コーマリッティポン 撮影:スッティサー・パティパンテワー ソムジェット・ループグロム ウィティット・ジャンタマリット 翻訳(英語):ササピン・シリワニット ナーナー・デーキン プロダクション・マネージャー:ジャールナン・パンタチャート
●「どこでもDoor」
出演:天野史朗 大道寺梨乃 千田英史(Rotten Romance) 中林舞 山崎皓司 ジャールナン・パンタチャート ドゥダオ・ワッタナパゴン ワランユー・イントラカムヘン ナーナー・デーキン ササピン・シリワニット サルット・コーマリッティポン
作:北川陽子 演出:篠田千明 共同演出:ドゥダオ・ワッタナパゴン 照明デザイン:海藤春樹 振付:野上絹代 舞台装置:佐々木木文美 映像:天野史朗 衣装:藤谷香子

企画・発案:野田秀樹 技術統括:白神久吉 舞台監督:足立充章 舞台監督助手:渡邊千穂 映像機材協力:飯田幸司(海藤オフィス) 大道具:矢田英孝(金井大道具) 通訳(日・英):鈴木なお/田村ゆう 通訳(日・タイ):ニーラナート・アピィチャナンクン パンフレット翻訳:プッサディー・ナワウィチット
【東京芸術劇場技術スタッフ】舞台:谷内義弘/秋山佑子 照明:斉藤芳男/佐勝恵太 音響:小川義治/中根悠子 宣伝美術:水谷孝次/柄本綾子(水谷事務所) イラストレーション:田中靖夫 印刷:池田印刷株式会社 スチール撮影:加藤和他(快快) ロビーデコレーション:山本ゆい/大道寺梨乃(快快) 制作:玉塚充/勝優紀 制作協力:千徳美穂/酒井孝宏(NPOメコンクラブ) 河村美帆香(快快) 吉田直美 票券:串田陽子(東京芸術劇場チケットサービス) 金子久美子(ぷれいす) 広報協力:徳永京子
インターン:舞台芸術学院(浅野圭亮/阿部孝太郎/石渡萌子/泉佑里奈/稲垣里紗/上野沙織/海老沼正也/大工原万里子/岡野真似/鎌田みさき/児玉五月/権田菜摘/榊原千紘/坂本梓乃/福田陽子/増山舞/山田志保/渡部良太)
関連企画「ペトナムスコール」企画制作:NPOメコンクラブ(千徳美穂/酒井孝宏/中原和樹/鈴木拓/伊藤愛/山崎友貴)
【東京芸術劇場】芸術監督:野田秀樹 館長:福地茂雄 副館長:高萩宏 管理課長:笠原美由紀 舞台管理担当課長:白神久吉 事業企画課長:高橋透 制作担当課長:内藤美奈子 事業企画課:玉塚充/勝優紀/木村美恵子/秋山知美 広報:北沢聡子/土屋裕/橋爪綾子 主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団) 東京都/公益財団法人東京都歴史文化財団 助成:平成22年度文化庁国際芸術交流支援事業
【発売日】2010/06/20 前売3,500円 当日3,800円(全席指定・税込)
http://www.geigeki.jp/saiji/012/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2010年08月17日 13:34 | TrackBack (0)