2010年08月13日
【稽古場レポート】彩の国さいたま芸術劇場『音楽劇 ガラスの仮面~二人のヘレン~』07/27彩の国さいたま芸術劇場稽古場②
蜷川幸雄さん
『音楽劇 ガラスの仮面~二人のヘレン~』稽古場レポート②です。①はこちら。
13時から17時過ぎまでの稽古を拝見した後、演出の蜷川さんに直接お話を伺う時間をいただきました。蜷川さんさんが今、若い演劇人に対して思っていること、そして芸術監督をつとめる彩の国さいたま芸術劇場の今後の展望についても語ってくださいました。
●彩の国さいたま芸術劇場『音楽劇 ガラスの仮面~二人のヘレン~』
08/11-27彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
※チケットは発売中です。S席6,000円、A席4,000円
⇒公演公式サイト ⇒公演公式ツイッター
⇒げきぴあ「蜷川演出版『ガラスの仮面』稽古場より」
⇒CoRich舞台芸術!『音楽劇 ガラスの仮面~二人のヘレン』
■“ものをつくる”ということ/演劇は日常生活の反映
―前作に続き劇中劇で創作現場を見せるのが大きな魅力ですね。
蜷川「そうですね。どうやってものをつくっていくのかを、お客さんに通じるようにしたいと思ってるんです。演劇は一番シンプルに人と人がぶつかるから、人間の在り方の生々しさが伝わる。そして演劇は世界を反映してるんだってことを、わかってもらえるといいなと思ってる。同時に若者教育もやってるんですけどね。」
―若者教育といえば、さきほど若い俳優に対して、短い場面を何度も繰り返しながら指導してらっしゃいました。
蜷川「若者をきちっと自立した俳優に育てて、彼らに日常生活の反映として演劇があるんだということを認識してもらいたい。そのことを伝達したいと思うんだけど、なかなか伝わらないんですよね。それでも何度でも繰り返して、しつこくしつこく言い続けます。僕の現場だけじゃなくて、彼らがどこに行っても自分で色んな事を判断できるようになって、“ものをつくる”ということがわかるといいなぁ。これはもう、祈るような気持ちでやってます(笑)。」
【写真↓グループごとに振付の打ち合わせ中】
■各地の芸術監督と連携/地域からアジアへ
―蜷川さんが彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督に就任されて今年が5年目ですね。彩の国シェイクスピア・シリーズに加えて、ゴールド・シアター、ネクスト・シアターという劇団ができ、創造発信も人材育成もおこなう劇場になりました。
蜷川「中央ばかりが演劇の拠点じゃなくて、地方もまた1つの拠点であり、発信する都市だということです。僕は東京もさいたまも相対化して、同じ力量、労力を使ってやろうと思ってますよ!東京が1番良いわけじゃないよ!・・・って、意地はってる(笑)。」
―さいたまにお住まいの方々に、蜷川さんやこの劇場のことが伝わってる実感はありますか?
蜷川「昔より知られるようになったね。さいたまの違う地域に行っても『あ、芸術劇場の蜷川さんだ!』とか言われるし。こないだは信号待ちしてたら近所の人に『蜷川さん、お体に気をつけてくださいよ』って言われた(笑)。少しずつ認知度が上がってきました。」
―さいたまに蜷川幸雄あり!ですね。ここ数年で公共劇場の芸術監督が続々と誕生しています。首都圏では東京芸術劇場の野田秀樹さん、神奈川芸術劇場の宮本亜門さんなど。芸術監督同士で何らかの連携をしていくご予定はありますか?
蜷川「そうだね~、みんなで『ライバルは国立!』って言って連合を組むかな(笑)。東京、神奈川、さいたまがそれぞれにボコボコと花火を打ち上げて、活性化していって、『周辺地帯の方が元気がいい!』って言われるようになるといいね。
そのうち僕らが東京に行って野田秀樹がさいたまに来たり、僕らが神奈川に行って宮本亜門がさいたまに来たり。そういう風にしながら外国に、アジアの方にも少しずつ広がっていきたいね。ゴールド・シアターには韓国からも声がかかってるんですよ。」
【写真↓原作イラスト入りの宣伝カー】
■みんなで作りながら実践する現場主義
蜷川「僕らは作りながら実践して、実践しながら作ってる。現場主義なんだね。よく言われるんだけど、僕が独裁してるっていうのは誤解(笑)。今日見て(あなたも)わかったと思うけど、みんなでワイワイ言いながら、アイデアを持ちよって作ってるんだから。僕だけの力じゃない、スタッフの力、みんなの力なんです。」
―たしかに蜷川さんは指示を出して決定もされますが、素材は役者さんやスタッフさんが進んで提示されていました。
蜷川「そう。役者やスタッフが現場で育って、自分たちで勝手にやってるんだよ。」
―それにしても、さっきの突然の演出変更で、蜷川さんが希望されたスクランブル・エッグ(調理済みの食事)がちゃんと出てきた時は驚きました(笑)。事前の指示はなかったはずですよね?
蜷川「そうなんだよ、言えばすぐに何でも出てくる(笑)。準備ができてるんだね。きっと小道具係は裏で『ほらみろっ、(蜷川さんが)そう来るのはわかってたぜ!』って言ってるんだよ(笑)。」
【写真↓チラシと台本】
●稽古場取材とインタビューを終えて
初めて蜷川さんの稽古場を拝見して、お話も伺わせていただくという幸運に恵まれました。稽古場でいきなりトンテンカンテンと建て込みが始まり、あっという間に装置を作り上げてしまったり、言えば何でもすぐに出てきたり、「バカ!」「やめちまえ!」といったダメ出しが飛んだりするのは噂どおりでした。
でも私が一方的に抱いていた“演出家・蜷川幸雄像”は間違いだらけでした。公演パンフレットの役者さんへのインタビューでは「蜷川さんの現場は厳しい」と書かれていることが多いですし、テレビのドキュメンタリー(NHK「若者よ 心をぶつけろ~演出家・蜷川幸雄 格闘の記録~」)で蜷川さんが実際に「ばかやろう!」と怒鳴ってらっしゃるのを見ましたので、私は勝手に「近寄りづらい怖い人なのだろう」と思い込んでいたのです。
蜷川さんは有名人ですので、様々なメディアで“いかにも蜷川幸雄らしい”発言や行動が、必要以上に強調されて報道され、その噂がひとり歩きして広がっているのではないでしょうか。私自身がその表面的な情報を信じて誤解をしていたので、5時間の稽古を1度拝見しただけですが、蜷川さんおよび蜷川さんの現場について感じたことを書かせていただこうと思います。
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この稽古場レポートの一番初めに書きましたとおり、とにかくあの5時間はものすごく楽しかった!過剰にピリピリとしたムードはなく、おどおどしたような恐怖感や悲愴感も皆無。むしろ和気あいあいとしていました。あのスタジオにいた方々はいい具合にリラックスし、集中力も高まっていて、蜷川さんというリーダーを中心に、安心感と緊張感がバランス良く満ちていたというか・・・創造の場としてのポテンシャルが高かったと思います。それは蜷川さんがアーティストとして尊敬できて、リーダーとして信頼できるからだけではなく、面白くて、愛嬌があって、そして底抜けに優しい方だからだと思います。
インタビューをさせていただいた時、蜷川さんは初対面の私に対して威張ったり馬鹿にしたりすることなく、本気で正直に話してくださいました。対等な一対一の人間同士として触れ合えたと実感できました。
蜷川さんは怒鳴ったりされますが、その時の態度や声をしっかり受け取れば、愛情ゆえの言葉だとわかります。怒鳴った後には必ず丁寧な指導やフォローをされていました。「出ていけ!」「帰ってくるな!」などの言葉の選び方や、言う間合いも絶妙で、緊張も走りますが爆笑も巻き起こっていました。実は根っからのエンターティナーなんですね。
蜷川さんご自身も話されていたことですが、若者を育てたい、自分がつかんだ演劇の真実を伝えたいという強い思いが、稽古場でのダメ出しにはっきりとあらわれていました。蜷川さんは次の世代のために、常に言葉を尽くされています。あるシーンを何度も繰り返してダメ出しをされていた時、あまりに丁寧で、前向きで、真摯なので、見学席にいながら涙が出てしまうほどでした。こんなに優しい人がいたなんて、知らなかった・・・。
平田オリザさんが演劇ワークショップについておっしゃっていた言葉ですが、やはり「魔法はない」のだと思います。蜷川さんは紛れもないカリスマですが、ご本人もおっしゃっているとおり1人では舞台は作れません。周囲の仲間の力があってこそ蜷川演出作品が生み出されます。
関係者に伺ったところ、蜷川さんと作品創作をする演出部は3~4チームあって、公演ごとにローテーションしているとのこと。それぞれのチームが長年、蜷川さんと一緒にやってきているので、呼吸がぴったり合う稽古場になるんですね。リーダーに服従するのではなく、リーダーの望みを先取りして提示していくクリエイティブなチームが、毎月のように幕を開ける蜷川演出作品を支えているのでしょう。
以前、ある制作さんが「“蜷川幸雄”は1つのジャンルだ」とおっしゃっていて、そのことがやっと腑に落ちました。蜷川さんとそのチームが作る演劇は、日本の現代演劇の中に確立された1つのブランドだと思います。
演劇を志す若い方には、とにかく一度は蜷川演出作品を観て、味わっていただきたいです。「演劇とは何か」を描いた作品でもある『音楽劇 ガラスの仮面』シリーズは、観劇初心者にもお薦めです。舞台は1人で作るものじゃない、大勢の作り手が心を尽くして、観客とともに完成させるものだということが、はっきりわかると思います。
出演:大和田美帆 奥村佳恵 ・ 細田よしひこ 新納慎也 原康義 月川悠貴 岡田正 黒木マリナ 立石凉子 香寿たつき ・ 夏木マリ
花山佳子 妹尾正文 飯田邦博 難波真奈美 新川將人 井面猛志 篠原正志 佐野あい 福田潔 澤魁士 沓沢周一郎 町田正明 多岐川装子 池島優 遠藤瑠美子 森野温子 宮田幸輝 川畑一志 江間みずき 西村篤 周本えりか 隼太 土井睦月子 露敏 深谷美歩 齋藤美穂 横山大地
原作:美内すずえ 脚本:青木豪 演出:蜷川幸雄 音楽:寺嶋民哉 美術:中越司 照明:室伏生大 衣裳:宮本宣子 音響:井上正弘 音楽監督:池上知嘉子 振付:広崎うらん ヘアメイク:佐藤裕子 歌唱指導:泉忠道 演出補:石丸さち子 井上尊晶 演出助手:藤田俊太郎 舞台監督:白石英輔 宣伝美術:阿部剛(Seagull) 写真:大原狩行 宮川舞子 主催・企画・製作:日本テレビ・財団法人埼玉県芸術文化振興財団 協力:白泉社 後援:さいたま市教育委員会 株式会社FM NACK5
一般:S席6,000円、A席4,000円 メンバーズ:S席5,400円、A席3,600円
http://www.saf.or.jp/arthall/event/event_detail/2010/p0811.html
http://www.saf.or.jp/arthall/event/event_detail/2010/glass/index.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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【写真レポート】東京芸術劇場「野田秀樹芸術監督就任1周年記者懇談会」07/08東京芸術劇場カフェ・コンチェルト③
野田秀樹さん
「野田秀樹芸術監督就任1周年記者懇談会」の写真レポート③です。⇒レポート① ⇒レポート②
野田秀樹さんが記者の質問に次々と答えてくださり、東京芸術劇場そして池袋という街の今後が見えてくるようでした。
■ロンドン留学中にインスパイアされた人物は?
ドンマー・ウェアハウス(Donmar Warehouse)の芸術監督サム・メンデス(Samuel Alexander Mendes)ですね。今は映画監督として有名です。メンデスのチョイスは間違いないと信じているので、ロンドン留学が終わった後も、ロンドンに戻る度に最初に観に行ったのはドンマー・ウェアハウス。芸術監督への信頼です。
■芸術監督になったメリットとデメリット
メリットはえらそうになれたこと(笑)。なぜかわかんないけど納得してもらえるようになりました。背後に何かあるように感じるんじゃないですか?海外でも「アーティスティック・ダイレクターになったよ」と言うと、今までより真面目に話を聞いてくれる(笑)。彼らにとって芸術監督は力の強いものですから。
余計なことですが、新国立劇場の芸術監督なんてものは海外においては、「その人の発言が日本の文化を代表する」ぐらいに受け取られるものなので、気をつけていただきたいですね(笑)。とはいえ私も“東京”の文化を背負ってるんですが。
デメリットは時間的なこと。周りの方々がフォローしてくれるので、徐々に細かいことはやらないで済むようになっています。就任直後はすごく細かいことをやらなくちゃいけなくて。たとえばチラシを置き換えるとか(笑)。芸術監督以外の仕事をずいぶんやって、かなり時間のロスがありました。
■本多劇場ができる前、下北沢はピンクサロンの街だった
池袋については、劇場が街の中心である必要はないけれど、お芝居を観ただけじゃなく帰り道になにかあるような場所になってほしい。劇場だけでできることじゃないから、色んな仕掛けや相談が必要。古本屋さん出身の現・豊島区長が劇場に理解がある人なので、その方と一緒にちょっとずつ変わって行けたらいいかなと。
池袋は古い街で江戸川乱歩が住んでいたこともあり、もともと文化的な匂いがある場所だから、うまく下町のにおいと文化の匂いが混ざるようになればいいなと思う。自分ができるのは、ここでお芝居をやってお客さんを呼ぶことかなと思います。
下北沢は本多劇場ができる前はピンクサロンの街でした。若い人がいっぱい集まるようになって、集まる人間の種類によって、街は変わっていくもの。劇場は毎晩大勢の人が来るから、街に影響を与える要素にはなれると思う。
■高校生割引1,000円の継続には助成が必要
『ザ・キャラクター』は7月から高校生割引が始まります。好評です。すっごく身近なところでは、(出演中の)古田新太の娘が高校1年なので喜んでました(笑)。
公共劇場のメリットを少しでもうまく還元できるように、どうすればいいのかと考えました。これ(高校生割引)を支えるにはお金が必要です。公の助成金から出すシステムができるようになればいいなと思います。
助成金制度を知っていて、申請した人間にだけ助成金が与えられるのではなく、舞台を観に来たい人たちに還元すること。その意味で料金を下げるのは合理的だと思う。本当は国全体にそういうことへの理解が広がればいいんですけど。
⇒『The Blue Dragon』高校生割引は9月16日(木)受付開始!
2011年の三谷幸喜新作、NODA・MAP新作でも実施!
■ちゃんとしたものを確実に見せ続けるしかない
若い層がお芝居から少しずつ離れつつある。そこをどうするかが、日本だけでなく演劇というものの大きな問題になっている気がします。テレビや映画のスターを出演させてお客さんを増やすという単純な考えは、もう飽和状態になってるんじゃないかと。海外でも、例えばロンドンでマドンナが舞台出演したりしましたけど、意外に続かない。
だから「ちゃんとしたものを確実に見せ続ける」というところに戻ってきちゃうんですよね。結局、(いい舞台を)観たことがないだけなんです。昨日、多摩美術大学の学生が35人まとまって『ザ・キャラクター』を観に来たんですが、僕の芝居をたぶん観たことなくて、今までは授業中もチャラチャラしてた1年生が、終演後に俺と会ったら初めてきちっとしてましたから(笑)。急に真面目な質問をぶつけてきたりして、「お前、今ごろかよ」って思ったけど(笑)。
そういう機会があることで少しずつ変わってくるんだと思う。魔法のようなことはないんじゃないですかね。破格の高校生割引をするとかして、どうやって劇場に連れてくるか。他に何か方法があれば聞きたいです。良ければどんどん採用していくべきだと思います。このことをいつも頭の中に置いておかなきゃいけない。
■周りの人に支えられている
周りの人に支えられているということが、この年になってやっとわかりました(笑)。本当にそのおかげだと思っています。
芸術監督としてやることは文化と直結しているので、最終的には自分の現場に跳ね返ってくる。劇場は理想的には、劇団を持ったり役者を養成したりするもの。それがあれば先の世代の話ができると思う。
■リニューアル後のビジョン
※開館から20年経った東京芸術劇場は、劣化した設備を修復するために一時閉館します。2011年3月31日で今期の運営は終了。2012年秋にリニューアル・オープン予定。
日本の演劇人が日本でつくっているものが劇場で上演されるのだから、(リニューアル後に)いきなり今までとは見違えるようなものができるわけじゃないです。長い目で見て、「お芝居は面白い」「もう一度観たい」と思われるような上質のものを発表していくことですね。今のラインナップが方向的には間違ってるわけではない気がしています。
海外作品については、去年のプロペラや今年のルパージュは、ある程度演劇を知ってる人にとっては目新しい名前ではない。誰も名前を知らないような団体で、でも面白いものを、海外から見つけてこられればと思う。
1つの劇場だけではなく、国内の劇場やアジアの劇場と連携すれば、海外作品をもっと呼びやすくなる。たとえば8月に主催するTACT/FESTIVAL(タクトフェスティバル)は、東京だけでなく日本の他地域の劇場と一緒に招聘しています。これが劇場の特性です。色んな劇場が連携していくべきじゃないかと考えています。
「野田秀樹芸術監督就任1周年記者懇談会」写真レポートは以上です。
⇒レポート① ⇒レポート②
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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【写真レポート】東京芸術劇場「野田秀樹芸術監督就任1周年記者懇談会」07/08東京芸術劇場カフェ・コンチェルト②
「野田秀樹芸術監督就任1周年記者懇談会」の写真レポート②です。⇒レポート① ⇒レポート③
野田さんが今後のラインアップについて紹介・解説してくださいました。
※懇談会から1ヵ月以上過ぎているため、すでに公演が始まっているものもあります。
■「TACT/FESTIVAL(タクトフェスティバル)」(2010年8月)
⇒公式サイト ※チケット発売中!
野田「大阪で開催されていた国際フェスティバルなんですが、子供向けといっても、とても質が高いです。」
■快快とB-floorの合同公演『Spicy, Sour, and Sweet』(2010年8月)
⇒公式サイト ※チケット発売中!
野田「先日、快快とタイから来日したB-floorのワークショップがあったんですが、僕は全部が終わってもめているところを見ました(笑)。それが文化交流なのだとわかってもらえればいいかなと。日本人の若いふざけた連中と、ものごとを真面目にしかとらえないタイの若者との文化の差は凄かったです。打ち解けるまではいかなくとも最終的には違いをよくわかったようだから、それで良かったんじゃないかと思います。
僕も海外で仕事をする時に生易しいことはやってきてませんから。簡単に交流なんかできるわけがないんで、彼らが生(なま)の姿でぶつかり合ったのはいいことだと思います。本番は8月13日~15日。観てのお楽しみということですね。」
⇒稽古場レポート「トムヤン君とミソシルちゃん」
■NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』のヒロインは公募オーディションで選出
⇒公式サイト ※前売り完売
野田「約1100人の応募があり、150人ぐらいが書類審査を通過しました。実技審査はまだ行っていません(2010年7月8日時点)。書類審査は非常に難しいんですが、漏れがないように全部見ました。僕と勘三郎さんと同じセリフ量がある極めて大きい役なので、キャラクター(の魅力)だけでは済まない。セリフを言える力がないと。記者発表の時に「無名性に賭ける」と言ったので、“力を持っている無名な人を探す”という、つくづく無謀なことをやってしまったなと思っています(笑)。なんとかがんばります。しのびます。」
⇒オーディション情報
⇒太田・緑・ロランスさん(29歳)と黒木華さん(21歳)が選ばれました!
■ロベール・ルパージュ演出『The Blue Dragonーブルードラゴンー』(2010年11月)
⇒公式サイト(音が鳴ります) ※チケット発売中!
野田「ルパージュの4年ぶりの来日公演ということで、観てきた人によるととても面白いそうです。
ロンドン留学中に観た彼の演出による『真夏の夜の夢』に衝撃を受けました。すごい演出家です。公演期間がたったの4日間というのはもったいないです。」
■自主製作企画・タニノクロウ演出『チェーホフ』 (2011年1月~2月予定)
野田「演劇評論家の鴻英良さんがチェーホフの未発表の日記を翻訳したところ、面白い題材が見つかったので。演出のタニノクロウさんは、神経を病んでいるような雰囲気が合ってるのではないかと(笑)。」
⇒インタビュー「広がる脳内イメージ 劇作家・演出家 タニノクロウ」(asahi.com)
■三谷幸喜さんの新作が2011年1月に芸劇にお目見え!
野田「正直に言いますと、芸術監督の仕事を引き受けて最初に、劇場にお客を呼ぶことを考えました。自分ももちろんやりますが、自分だけがやるのは違うなと思い、2人に電話をしました。それが三谷幸喜さんと松尾スズキさん(⇒上演作のレビュー)です。三谷さんにはずいぶん前にオファーしたんですが、この時期まで忙しかったということですね(笑)。」
⇒三谷幸喜生誕50周年「大感謝祭」(theaterguide)
■改修前の最後を飾るのはNODA・MAP新作(出演:蒼井優・妻夫木聡)
野田「ウソつきの話を描こうというのは決まってます。都合が悪くなると倒れる、とか。そこまでは決めてます。」
※倒れる役を演じるのは蒼井優さん。
記者「改修前最後の中ホール公演ですね。劇場を破壊するような何かを企んでらっしゃるのでしょうか?」
野田「・・・ちょっと“にやり”です(笑)。ありがたい。気づかなかったな~。」
⇒レポート③に続く。
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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【写真レポート】東京芸術劇場「野田秀樹芸術監督就任1周年記者懇談会」07/08東京芸術劇場カフェ・コンチェルト①
野田秀樹さんが東京芸術劇場の芸術監督に就任して1年が経ちました(⇒就任記者発表)。野田芸術監督の1年間を振り返ると同時に、次のラインアップを発表する記者懇談会に出席させていただきました。
劇場広報の方の進行で、野田さんが率直に今感じていること、考えていることを話してくださいました。なんと質疑応答の時間が1時間以上(!)設けられており、ざっくばらんでとても楽しい会でした。
野田さんは記者とお互いの顔が見える対話をしていこうとお考えのようで、記者発表のスタイルにも独自性があらわれていますね。
野田さんがおっしゃった言葉をなるべくそのままに、意味を歪めないように心がけてまとめてみました。長いレポートになりましたので、3エントリーに分けて掲載いたします。⇒レポート② ⇒レポート③
■芸術監督の一年間を振り返って
東京芸術劇場という劇場で芸術監督をすることには、2つの意味があるとわかってきました。1つは芸術監督は劇場という“場所”を本拠地にして企画をするということ。1年経ってずいぶん池袋にも愛着が出てきました。
一番力を入れているのはラインナップです。劇場はハコ(建物)がどれだけ立派でも、はじまりはやはり中身。中で何をやっているのかが重要です。中身があってから、その次に劇場というハコの環境、そして劇場と街との連携、さらに東京および日本の文化の発信と広がっていくのでしょう。でもまずは劇場の文化として何を発表するかです。
急に(芸術監督を)始めたわりには、周囲の人たちの助けもあって、自分としてはいいラインナップになったのではないかと思います。
2つ目は、東京芸術劇場が公共の劇場であるということ。引き受けた時はあまり意識をしていなかったんですが、実際にやっていくと時々戸惑いがある。我々の“ものを作る”プロセスは、公の収支という1年のタームではやりづらいことがあるんです。それをどう改善するかが課題ですね。公共劇場が悪いというわけじゃなくて、公の場所でものを作るとはどういうことなのかを考えていけなければいけない。
芸術監督というと日本では「自分のやりたいことをやる」「色(個性)を出す」ものだとされていて、実際そうなのですが、東京芸術劇場が公共劇場だというのもあってか、「他人がやりたいことも考える」ようになりました。自分がやりたいことをやる時は、自分が人様を巻き込むだけの形なのですが、他人がやりたいことを考えると、他人によって自分が巻き込まれる。それが面白いと思うようになりました。
たとえば“芸劇eyes”という企画は僕が考え出したことではなく、我々のスタッフの中からのアイデアだったんです。昨年は若い人の芝居を5本上演し、それを観に行って、今までの自分だったら出合わなかっただろうことに触れました。人様に巻き込まれるということは、ものを作っていく上ですごく大事だなと思いました。以上が一年間の概観です。
■「芸劇が注目する才能たち、“芸劇eyes”」の成果とこれから
前回の“芸劇eyes”では岩井秀人くん(ハイバイ/青年団演出部)の作品がとても面白くて。僕は観たことがなかったんです。こういう若い人も出て来てるんだと知って、自分が不勉強だったなと思いました。他の演出家も面白かったので、今年も非常に楽しみにしています。
我々が若いころは上の世代(例えば唐十郎さん)が元気だったので、『あいつらをいかに潰すか』みたいな出方だったと思うんですよね。僕なんか特に「上の世代とは付き合わず押し進もう」という、我が強いところがあった。でも今の若い人は意外に上の世代とも会うし、話も聞いてくれる。会うと気のいい人が多いです。ただ“気のいい人たちが作っているもの”は、若干似ているというか、近いところがある。
平田オリザさんが若い人といち早く接して、いつの間にかひとつの形を作ったと思うんですよね。私のように荒っぽくお芝居を作る人間からすると、「油断したかな」という気持ちもありまして(笑)。たとえばさっき言った岩井くんもそうですし、その層がつくったものが出てきていますから。我々“荒削り派”がちょっとなまけたかな…というのはある。それであわてて芸術監督とかやってるんですけど(笑)。
若い人は目覚めたら早いのでそんなに悲観はしていないんですが、もう少しスケール感のある芝居を作ってくれないかなという欲求はあります。でもそれは押し付けることではないんで。
⇒レポート② に続く。
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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