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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2011年02月11日

Bunkamura/Quaras『ミシマダブル「わが友ヒットラー」』02/02-03/02 Bunkamuraシアターコクーン

 三島由紀夫戯曲2本をほぼ同じキャスト交互上演、しかも演目が『サド侯爵夫人』(過去レビュー⇒)と『わが友ヒットラー』(⇒過去レビュー)という・・・驚きの企画です。

 演出は蜷川幸雄さん。男性ばかりのキャストはジャニーズ事務所所属の生田斗真さんと東山紀之さん、そして大ベテランの平幹二朗さん、木場勝己さんら。まず『わが友ヒットラー』を拝見しました。上演時間は2回の休憩を含み、カーテンコール込みで約3時間弱。

 ジャニーズ事務所のスターが2人出演している公演ですが、お約束のような3回目のカーテンコール(スタンディング込み)がなくて気持ちが良かったです。
 公演パンフレットは2作品兼用で2000円。平野啓一郎さん、小池真理子さんらの寄稿もあり充実の内容でした。操上和美さんの写真が渋い!

 ⇒CoRich舞台芸術!『サド侯爵夫人』『わが友ヒットラー』

 あらすじはこちらに詳しいです。

 2011年の今、上演されているということと、いかにも「お芝居(嘘)ですよ」ということを、はっきりと見せる演出だったと思います。オープニングの演出がかっこ良かった!!豪華な装置に、ハーケンクロイツの腕章をつけた軍服、感情の起伏に沿うような音楽。わざと演技の色合いを濃くして、大げさに強調するようなもシーンも時にはありました。初演された当時だって、普段には話されないような言葉の連続ですものね。

 『わが友ヒットラー』は一度観たことがありますし、ストーリーを追う必要は私にはありませんでした。修飾の多い美しい日本語の文章を語る男たちが、戯曲上および舞台上において戦う様を見つめました。出演者は4人4様といいますか、演技へのアプローチがそれぞれに違う気がしました。
 
 平幹次郎さんは恐ろしい武器商人クルップ役。書かれた言葉の1つひとつをじっくり味わえるようなセリフ運びを堪能。見事な朗読を聞いているような気持ちにも。
 ヒットラー役の生田斗真さんには、登場する度に引きつけられました。長いセリフの途中でヒットラーの気持ちは何度も激しく変化します。体も心も大きく震わせ、生々しく存在されていました。生田さは現在26歳なんですね。若いのにすごいと思います。

 レーム役の東山紀之さんの言葉は、私には伝わって来づらかったですねー・・・。あらわす感情の種類が少ないように思いました。例えば演技(および感情)が一直線すぎて、長いセリフがずっと同じニュアンスだったり。でも敬礼や回れ右など、軍人らしい体の動きがものすごく美しい!きびきびとした動作をされる度に見とれました。鍛え上げられた身体だからこそなんでしょね。
 木場勝己さんはレームと水と油の関係にあるシュトラッサー役。レームとの対決シーンが見せ場だったと思うのですが、個人的にレームの言葉や存在のしかたがしっくり来ず、そのせいかどうかは定かではないですが、シュトラッサーの言葉もあまり入ってこなかったです。

 ここからネタバレします。

 劇場の機構が露出した何もない舞台。幕開けにまず舞台中央奥の大きな搬入口が開き、外の景色が見えます。冷気も入り込んでくる中、天井まで届きそうな鏡ばりの巨大な壁が、上下の袖から移動して出てきました。黒い作業着を着た演出部のスタッフさんたちが動かしています。4~5つほどの大きな壁が舞台を横切りながら、徐々に横につながって空間を丸く囲むような形に固定。豪華なイスやベンチなどの調度品も登場し、きらびやかな部屋が完成しました。並んだ壁の中央部分は外へと開いたバルコニーで、どうやらヒットラーが演説する場所のようです。バルコニーの奥には先ほどから開いている搬入口があり、渋谷の景色が見えています。そして赤い豪奢なカーテン2枚が、天井の右側と左側から同時に降りて来て、舞台と客席との間をバサリと優雅に閉ざしました。かっこいーーーーーーー!!

 幕が開くとヒットラーが客席に背を向け、群衆に向かって演説をしていました。日本人がドイツ人を、しかも実在した歴史上の人物を演じるという大っぴらな嘘を、“開幕”する形で見せる演出がとても良いと思います。演技の方法や選曲なども含めてもっと深い意図があるかもしれませんが、そこまでは咀嚼できず。
 
ミシマダブル 三島×MISHIMA vs 蜷川
出演:東山紀之 生田斗真 木場勝己 平幹二朗
脚本:三島由紀夫 演出:蜷川幸雄 美術:中越司 照明:服部基 音響:井上正弘 衣裳:小峰リリー ヘアメイク:武田千巻 音楽/編曲:かみむら周平 所作指導:花柳寿楽 舞台監督:濱野貴彦 演出補:井上尊晶 演出助手:大河内直子 藤田俊太郎 劇場舞台技術:野中昭二 票券:岡野昌恵 制作助手:稲村宗子 制作:大宮夏子(Bunkamura) 宇津木信之介(Bunkamura) 麻田幹太(Quaras) プロデューサー:加藤真規(Bunkamura) 松井珠美(Bunkamura) 松野博文(Quaras) 制作協力:ジャニーズ事務所 企画・製作・東京公演主催:Bunkamura/Quaras
【休演日】2/7,14,21,28【発売日】2010/11/27 S¥11,000 A¥9,000 コクーンシート¥6,000(税込)
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shosai_11_mishima.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年02月11日 14:57 | TrackBack (0)