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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2011年05月27日

七里ガ浜オールスターズ『パ・ド・ドゥ』05/24-29王子小劇場

 七里ガ浜オールスターズは“赤ペン瀧川先生”としても活躍している瀧川英次さんのプロデュース・ユニットです。今回はチェルフィッチュの舞台にもよく出演される伊東沙保さんと、瀧川さんの2人芝居。『パ・ド・ドゥ』は1999年初演で、私は再演を拝見しています。演出は山本了さん(同居人)。

 この公演は「×王子小劇場(カケル・オウジショウゲキジョウ)」という企画に選ばれているんですね。王子小劇場というと最若手の新進気鋭劇団を紹介することでも有名ですが、大人が安心してじっくりと味わえるストレート・プレイを上演してくれるのもありがたいです。

 上演時間は約1時間40分だったかな?曖昧です。

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 ≪あらすじ≫
 拘置所の接見室に来た弁護士。塀の内側から現れたのは元妻だった。弁護士は戸惑いながらも、殺人未遂事件の犯人だとされる彼女に事件当日のことを訊ねる。
 ≪ここまで≫

 劇場中央に、弁護士・名塚憲治とその元妻・日向草子が、透明パネル越しに向かい合う接見室。
 かつてともに暮らしてた男と女の戦い。接見を重ねるごとにばれる嘘と、長年秘めてた思い。可愛さあまって憎さ百倍。やっぱり面白い戯曲だと思います。お2人とも熱演でした。

 タイトルはバレエ用語のフランス語(Pas de deux:2人のステップ)。1組の男女の踊りのことです。いいタイトルですよね。開場中はバレエの超有名楽曲が流れていました。

 ここからネタバレします。

 接見室を真横から眺めるように、2方向から客席がはさみます。劇場の大きさのわりに客席数が少なくて、ガランと空いている空間が多いです。ところが開演前に一度暗転して照明がついた時には、ギュっと空間が狭くなっていました。向かい合う2人(まだ登場はしていませんが)の背中側に、大きな黒幕(計2枚)が降りてきたからです。これは気持ちよかったですね~。観客も一緒に接見室に閉じ込められたようでした。

 2人の離婚の原因は名塚の浮気。草子は別れた後も名塚のことを深く愛しており、結婚中から精神を病んでいたことがわかってきます。彼女が子供はいらないと言っていたのは、「生まれてきた子供に夫の心が奪われて、ますます自分のことを見てくれなくなると思ったから」というのが悲しい。
 草子の今の恋人(=被害者)は名塚の古くからの友人で、2人の間を取り持ってくれた人物。親友でありながら自由奔放な名塚に嫉妬していた彼は、名塚が違法スレスレ(もしかすると完全に違法)のやり方で弁護士業をやっていることを突き止めて、マスコミにばらそうとします。草子はそんな恋人を4階のベランダから突き落としました。つまり名塚を助けるためだったのですが、名塚の身辺調査を探偵に依頼していたのもまた、草子でした。背中合わせの愛憎。

 名塚は嘘ばかりついて自分を困らせる(共犯者にしたてあげる)草子の弁護を降りようとするのですが、彼女の本当の気持ちに気づいて、決心を翻します。非常に大きな変化なので、瀧川さんにはもっとフラフラに、ぐちゃぐちゃに、崩れに崩れて欲しかったな~。
 草子役の伊東さんははっきりテキパキと長いセリフを語りながら、狂気をじわじわと見せていくのがさすが。涙をぼろぼろ流して笑うところが良かった。ただ、今考えてみると、もっと可憐さやか弱さを見せても良かったんじゃないかと思います。責める方向だけでは、男は改心しづらいんじゃないかと。

 最後の最後に接見室が移動して黒幕の裏に消え、2人が楽しそうに笑い合っている場面が挿入されました。過去なのか未来なのかわかりませんが、2人が(色んな意味で)壁を越えたことを表した演出だったのでしょう。意図が少々わかりづらいので、もうちょっと長い目に時間を取っても良かったと思います。接見室がもとの位置に戻ってくるカーテンコールへの流れも、もっと密に、スマートにできるんじゃないかな。

 脚本はほぼ初演時のまま上演したようですね。若貴の話題とかって、なんだか懐かしいというより新鮮でした。1999年の日本はやっぱり今より経済的に豊かだったんだなぁ~(遠い目)。夫がちゃんと慰謝料払ってるし。妻もちゃんと就職できてプロデューサーにまでなってるし。

七里ガ浜オールスターズ×王子小劇場
出演:伊東沙保 瀧川英次(七里ガ浜オールスターズ)
脚本:飯島早苗 演出:山本了(同居人) 音楽:佐藤こうじ(Sugar Sound) 舞台協力:松本謙一郎 照明:吉村愛子(Fantasista?ish.) 工藤雅弘 音響協力:島貫聡 宣伝美術:川村文明(ねずを。) 車両:佐藤電機 仕掛人:本郷剛史 受付:大槻志保 須藤千代子 野崎恵 塩田友克
【発売日】2011/04/24 前売 2500円 当日 2700円 前半割引 2000円(5月24、25日の3公演) トリオチケット 6600円
http://blog.livedoor.jp/age_guts_go/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年05月27日 14:03 | TrackBack (0)