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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2011年08月05日

サスペンデッズ『g』08/04-07ザ・スズナリ

 早船聡さんが作・演出される劇団サスペンデッズの新作です。初日はぎっしり満席。他の日はまだ残席あるそうです。

 架空の世界のSFかしら・・・と思ったら、とんでもなく現代の、現在進行形のお話。大量のブラックユーモアをベースに、滑稽な人間を笑いながら悲しむ群像劇で、静かな怒りと煩悶が充満しているように感じました。素っ頓狂な出来事に驚いてプっと吹き出しつつ、ぐっと深く考える約1時間30分。

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 ≪あらすじ≫
 田舎から都会に出てきた若い女性(田口朋子)は美容師(伊藤総)と仲良くなるが、彼には副業があり…。
 ≪ここまで≫

 特定の場所であることを想像させない、雑然と物が置かれた舞台。電信柱やお店の看板、室内の家具に干草など、同じ空間にあるはずのないものが混在します。赤いパイプの枠がついたカウンターが面白いですね。

 意外な設定で一体どういう結末にするのかしらと思ったら、終盤からじわじわと核心へ。最後はぎゅるりと推進力が加速して、驚きの展開に。
 何も変わっていない、これからも変わらないかもしれない私たち人間のことを、人間以外の存在と対比しながら見つめることになりました。

 ちょっと深刻な感じの書き方になってしまいましたが、舞台には間抜けで愛嬌のある人間(とそれ以外)が登場し、笑いもいっぱい起こっていました。私は笑うことより、その奥を見たくて、受け取りたくて、集中していたんだと思います。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 人型ロボットが一般家庭で利用されるようになった未来の日本。原発事故が何度もあったようで、既に魚は死滅しています。労働はロボットが肩代わり。でも人間は現代と全く変わっていません。アイドルに不毛な恋をするし、大事なものを棄てて金の亡者になるし、簡単に嘘をついて大切な人(ロボットも)を裏切ります。夢を追っているつもりが、手段が目的になり本末転倒。
 滑稽を通り過ぎてあわれで情けなくて、怒りがこみ上げます。でも全部私のこと。「何なんだコレ、人間って何で地球で生きてるの?そんな資格あるの?」って思っちゃう。

 最後は牛の出産場面でした。牛の姿に切り取られた黒い板に穴があいており、そこから牛(佐野陽一)が生まれます。
 「悪いけどこんな世界に生まれてきたことを祝福できないよ。ファッキンヒューマン!いのちって何なんだ!」
 徐々に4本足で立ち上がり、とうとう後ろ足だけで立ったのは、彼(=子牛)が人間だということでしょう。

 「ツジ君(佐野陽一)は意外にレアメタルの宝庫だから」に一番笑ったかな(笑)。佐野陽一さんは前々回はこちらの公演では虫や死者も演じてらっしゃいました。今度はロボットだし牛だし、子牛まで(笑)。

第11回公演
出演:伊藤総 佐藤銀平 佐野陽一 田口朋子 尾浜義男 白州本樹
[作・演出]早船聡 [美術]長田佳代子 [照明]工藤雅弘(fantasista?ish) [音響]平井隆史(末広寿司) [衣裳]大野典子 [舞台監督]大友圭一郎  [舞台写真]渡辺大祐 [ビデオ撮影]滝沢浩司 [イラストレーション]木村タカヒロ [宣伝美術]野島敏光 [制作]上田郁子(オフィス・ムベ)+ 石川はるか(ハイリンド)[企画製作・主催]サスペンデッズ
【休演日】なし【発売日】2011/07/04 前売・予約3,000円 当日3,500円 高校生以下 前売・予約2,500円 当日3,000円(高校生以下は、サスペンデッズ+オフィス・ムベのみ取扱い)
http://suspendeds.net/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年08月05日 13:09 | TrackBack (0)