REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2011年10月18日

【写真レポート】北九州・枝光本町商店街アイアンシアターに伺いました(2010年9月)

20100906_edamitsu_thumb.JPG
枝光本町商店街アイアンシター

 初めて枝光本町商店街アイアンシター(以下、アイアンシアター)の存在を知ったのは、2009年のこの記事からです。その後、北九州市で活動する劇団のこされ劇場≡が関わるようになったと知り、いつか訪れてみたいと思っていました。現在は北九州お手軽劇場が運営しており、のこされ劇場≡は同劇場のレジデント・カンパニーとなっています。

 アイアンシアターの芸術監督はのこされ劇場≡の演出家、市原幹也さん(⇒ツイッター)。幸運なことに演劇関係の知人の紹介で知り合い、2010年9月に市原さんを訪ねて同劇場に伺いました。

 劇場名に「枝光本町商店街」と掲げているように、アイアンシターは商店街の中の1つの施設として存在しています。劇場が周囲の街とそこに住む人々と一緒に息をするように、親密な関係を持っていることに驚きました。“街の一員として求められている劇場”がそこにありました。

 ⇒市原幹也「地域演劇の未来形を求めて 枝光本町商店街アイアンシアター(北九州市)

 ※掲載が1年以上遅れて時期外れの記事になってしまったのですが、どうしても枝光本町商店街とアイアンシアターのことをご紹介したく、劇場関係者のご承諾を得て掲載させていただきました。

 まずはJR鹿児島本線のスペースワールド駅で市原さんと待ち合わせ。
20100906_edamitsu02.JPG

 駅の改札から出るとすぐにテーマパークが見えます。
20100906_edamitsu01.JPG

 市原さんが車で案内してくださり、数分で枝光本町商店街アイアンシアターに到着!
20100906_edamitsu03.JPG

 もともと銀行だった建物で、すっごく広いんです。
20100906_edamitsu04.JPG

 1階のフリースペース(主劇場)がこの広さ!⇒施設案内
20100906_edamitsu05.JPG

 2階のアトリエは稽古場になっていました。客席のひな壇もありますね。2階にはもうひとつ、アトリエ兼会議室という部屋があります。他にも宿泊できる部屋や倉庫などもあって、なんて贅沢なスペース・・・優雅だ・・・。
20100906_edamitsu06.JPG

 そして屋上!!野外バーベキューでもてなされた演劇関係者は、楽しすぎて悲鳴を上げるようです(ツイッターのつぶやきが実証)。写真中央↓は市原さん。
20100906_edamitsu08.JPG

 アイアンシアターの自慢は建物だけではありません。徒歩1分以内のごく近くにある枝光商店街へとふらりと歩いていくと、そこには現実なのに天国のような、温かい交流がありました。市原さんが商店街の一員だからだと思いますが、身に余るおもてなしを受けました。

 酒屋のおじいさん(右)と缶ビール片手に、炭鉱があった時代のお話を伺いました。でも缶ビールは劇場の近くの自動販売機で買っちゃって・・・すみませんっ。写真左↓は市原さん。
20100906_edamitsu09.JPG

 商店街の中央の通りに行くと、歩道でお肉の串焼きを販売している肉屋のおじさんと遭遇。劇団員の方(右)も一緒に、できたばかりの雑誌「零」を手にして談笑。「零」はのこされ劇場≡とある出版社が協力して発行されたもので、おじさんもモデルとして登場しているんです。すっごく元気で気さくな方で、串焼きをたくさんサービスしてもらっちゃいました。
20100906_edamitsu10.JPG

 市原さんが青果店のお父さんと娘さんにも雑誌を届けます。雑誌およびチラシ用の撮影現場の動画はこちら(約5分)。のこされ劇場≡公演『オズの魔法が使えない』は、商店街で働く人も参加する、町を巻き込んだイベントだったんですね。
20100906_edamitsu11.JPG

 次は商店街のアーケードの中のお店めぐりへ。市原さんが挨拶すると昔からのよしみの客のように対応してくださり、市原さんと商店街の方々が同じ町に暮らす仲間同士なんだなと感じました。写真右側にはアイアンシアター関連のチラシが置いてあります。
20100906_edamitsu12.JPG

 天ぷら屋さんでは、地元のお祭りや戦争の話を伺いました。写真右側↓が店主のおじさん。天ぷらとは練り物を揚げたもので、いわゆる“さつま揚げ”です。いくつか購入してその場でいただいたんですが、ものすっごく美味しかった!
20100906_edamitsu13.JPG

 8月9日に小倉に原爆が落とされなかったのは小倉上空が曇っていたからと言われていますが、実は前日に八幡空襲があり煙が立ち込めていたからだそうです。全く知りませんでした・・・。
 おばさん(写真↓)が「80代のお客さんが、もう私たちは走れないから逃げられないって言ってたよ。戦争はやだよね。」とおっしゃったのが鮮烈でした。そうだ、空襲の時は走って逃げたんだ、と。「空襲」という漢字と情報を知っていただけで、私は本当に空から爆弾が降ってくるのだとわかっていなかったんですね。おばさんの言葉のおかげで気づきました。
20100906_edamitsu14.JPG

 肉屋のおじさんが大通りから帰って来て、鹿児島産の上等の霜降り肉を見せて下さいました。目利きのお客さんが遠くから買い付けに来られるそうです。
20100906_edamitsu15.JPG

 最後は65年の歴史を持つ老舗和菓子店“みずま”へ。このお店でしか販売していない八幡銘菓「ひょうたん最中」を、市原さんからお土産にいただきました。可愛らしいひょうたんの形です。
 ※2011年現在、アイアンシアターとの共同おみやげプロジェクトとして、「ひょうたん最中」全3種類が入ったおみやげセットを劇場にて限定販売中!来場客の5人に1人がお買い上げになる人気スイーツだそうです♪
20110906_edamitsu16.JPG

 数時間の枝光滞在はとにかく楽しくて、吹いてくる風にも思わず微笑んでしまうぐらいに幸せな時間でした。「ここはこの世の天国だ!」と叫びたくなるぐらいに。
 少子高齢化による過疎が進んだ枝光ですが、かつては製鉄の町として栄えた有名な地域でした。商店街にはその頃からずっと枝光で暮らしてきた、歴史の生き証人であり、今も街も生かし続けている方々がいらっしゃいます。東京という大都市で所在なく、孤立しがちな日常を生きる私とは違い、地に足をつけて堂々と立って、どんな来訪者も分け隔てなく受け入れる、太陽のような大らかさのある方々でした。

 そんな素敵な街に溶け込んだアイアンシアターに行ったら、街で深呼吸するようにお芝居を観られるかもしれない。きっと特別な体験になる気がします。私は作品の面白さばかりを追求しがちな首都圏在住の演劇フリークの1人ですが、次に枝光を訪れる際には、街と劇場に心も体も委ねて、演劇との新しい出会い方、関わり方を見つけてみたいと思います。

枝光本町商店街アイアンシター:http://otegarugekijou.org/

※2010年夏に取材したものの、公開がこのように遅れてしまったことを心よりお詫び申し上げます。

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2011年10月18日 22:50 | TrackBack (0)