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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2011年12月11日

社団法人日本劇団協議会『ポルノグラフィ』12/08-13恵比寿・エコー劇場

 英国留学から帰国された文学座の上村聡史さんが、英国の劇作家サイモン・スティーヴンスさんの戯曲(⇒過去レビュー)を演出。このコンビにもキャストにも惹かれたので初日を拝見しました。“日本の演劇人を育てるプロジェクト 在外研修の成果公演”です。上演時間は約1時間50分。

 ハプニング(予測不可能なこと)を常に起こし続ける演出で、飽きることなく観続けられました。上村さんの演出作品は正統派会話劇しか観たことがなかったので(過去レビュー⇒)、このような大胆な挑戦に少々驚きつつも、個人的には大歓迎。また上村さんの演出作品を観たいと思いました。⇒参考になると思われる感想ツイート

 ※開演前にあらすじを読んでからご覧になると良いと思います。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ポルノグラフィ

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 2005年7月7日・・・
 イギリス・ロンドンで起こった地下鉄・バス連続爆破テロ事件。
 56名の人生を一瞬にして奪い、世界中を震撼させた。
 死亡した人に中には4名の実行犯も含まれていた。
 舞台は事件の前、数日間のそれぞれのドラマである。
 近親相姦にふける姉弟、報告書の作成に追われるキャリアウーマン、
 女性教師にしつこくつきまとう男子生徒、教え子を部屋に連れ込んだ
 大学教授、孤独を愛する老婦人、そして爆破事件の実行犯・・・。
 消えた命の向こうには何があったのか。それぞれのドラマを通して
 見てくるロンドン同時爆破事件とは何だったのか。
 地下鉄ホームの黄色いラインで隔てられるかのような生と死と、
 行き場を失った現代人の孤独を描く、サイモン・スティーヴンスの意欲作。
 ≪あらすじ≫ 

 黒い空間に銀色の金属が光る、シャープでスタイリッシュな美術。舞台中央を上下に横切る、ひざ上ぐらいの高さの通路のような台は、可動式です。独白や2人だけの会話劇などのミニマムなやりとりと平行して、予測不可能な要素に富んだ演出が同時進行します。現代美術のインスタレーションのようだと思いました。これは役者さん、ハードだ・・・。

 ただ、演技についてはいわゆる翻訳劇の堅さから解放されておらず、独白や会話には引き込まれませんでした。なので私は、セリフの意味自体や物語、そして周囲で起こること(演出)に、より集中して観察する方向へと意識をシフトさせました。セリフを話さない役者さんが舞台上で行う、数々の、ハプニングを起こしていく演出が面白かったです。

 ここからネタバレします。

 水と白い紙を使用していました。柔らかいペットボトルに入った水を役者さんが遠慮なく舞台上にぶちまけ、やがて床全体を静かに水が覆います。そこにコピー用紙がばらまかれ、一部は紙飛行機だったり紙吹雪だったり。スプリンクラーは大々的だったな~。紙をつないで作る長いリース(幼稚園や小学校で輪っかをつなげてよく作ります)が、水で溶けて切れてしまうのも良かった。

 帰宅難民になった80代女性のエピソードは今年の3月11日の私たちと同じだと感じました。でも、自爆テロによる無差別殺人と、この度の東日本大震災および原発事故とは、全く違う種類の犠牲だなと考えたりもしました。今の時期だと、どうしても比較する視点になってしまいますね・・・。

日本の演劇人を育てるプロジェクト 在外研修の成果公演
出演:大崎由利子、大家仁志(青年座/平成18年度派遣)、鍛治直人(文学座/平成21年度派遣)、小嶋尚樹、
照井健仁、那須佐代子(青年座)、町田マリー(ゴーチ・ブラザーズ)、森尾舞(俳優座/平成17年度派遣)
脚本:サイモン・スティーヴンス 翻訳:広田敦郎 演出:上村聡史(文学座/平成21年度イギリス派遣) 音楽:吉田さとる、美術:長田佳代子(平成21年度派遣)、照明:藤田隆広(平成18年度派遣)、音響:栗原亜衣(文学座)、衣裳:半田悦子(平成12年度派遣)、舞台監督:岩戸堅一(アートシーン)、プロデューサー:吉田健二(イッツフォーリーズ)、制作:社団法人日本劇団協議会 松村久美子
【発売日】2011/09/08 一般=4,000円 学生=3,000円(日本劇団協議会・オールスタッフのみ取扱)
http://gekidankyo.blog59.fc2.com/blog-entry-24.html


※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2011年12月11日 15:34 | TrackBack (0)