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2011年05月26日

Produce lab 89 presents『官能教育 マルキ・ド・サド×松井周』05/25音楽実験室新世界

 「あなたが最もエロいと思う文学作品を、最もエロいと思う形でリーディング公演にしてください」との依頼を受けた作・演出家が、自ら出演もする『官能教育』の第一弾。松井周さんがマルキ・ド・サドのテキストを朗読劇へと構成・演出されます。出演者は松井さんとハイバイの上田遥さんのお2人です。

 松井周、全開っ!!!まさに「マツイ・ド・サド」(笑)。上演時間は約1時間20分。

 次回は6/18(土)で、構成・演出は毛皮族の江本純子さん。題材は上杉清文さんの「スイカ畑でつかまえて」です。1日2ステージのみのプラチナ・イベントですので、ぜひスケジュール帳にチェックを入れておいてください♪

 ⇒CoRich舞台芸術!『官能教育 マルキ・ド・サド×松井周

 企画タイトル「官能教育」の「官能」と「教育」の両方が組み込まれた3本立てでした。夜10時からの回に行ってよかったな~。7時半から観るには(私には)エロ度高すぎる(笑)。とはいえ笑いどころがいっぱいですから、「官能」というテーマに気負う必要はないと思います。お互いちゃんと大人ならカップルで観るのもお薦め。

 役者さんはお2人とも素晴らしかったです。あの生々しさってどうやって生み出されるんだろう・・・。その場で起こることにその場で反応するという、いわゆる俳優の作法をふまえながら、それ以上の(その範ちゅうではない)何かがあるんでしょうね。例えばある役を演じながらも、あえて俳優本人がチラチラと見え隠れするようなバランスになっていて。そこがドキドキするポイントの1つではないかと。

 松井さん凄すぎる。恥ずかしい人物をとことん恥ずかしく見せることを、楽しんでらっしゃる。上田遥さんもとっても素敵。ぽやんとした表情のしたで、実は細やかに演技をコントロールされていると思います。こういう作品を観ると、俳優とは選ばれた人がなる職業なのだと、あらためて思います。

 会場は六本木駅から徒歩8分の地下のライブハウスで、もともと自由劇場があった場所だそうです。六本木の夜にふさわしいイベントだと思います。スノッブすぎないのもいいですね。

 ここからネタバレします。タイトルは私が勝手につけたものです。

 ■ゼミ生と担当教諭

 サドを卒論のテーマに選んだ女子大生が、担当教諭の指導を受けます。女の子に猥語を言わせようと、教諭はクールを装いつつ、押したり引いたり必死。女子大生は困りに困りながら、なんとかかわそうと必死。
 読み上げられるテキストの意味を、松井さんがちょいちょい動作で表すのがホント卑猥(笑)。実は教諭は女の子のことが好きで、下手な告白もしちゃうのが痛すぎて失笑。


 ■声優オーディション

 声優未満の女の子と厳しいオーディション審査員との丁寧すぎる審査風景。
 読むテキストは無論サド。情感を込めて読むよう指導されアダルト方向へ。やがてアニメらしい萌え狙いへ。最後は2人でコラボすることになり、松井さんはテキストもサドから離れ、アムロやシンジみたくなっていく・・・ぶっ飛び度も青天井。
 マイクを使って声や音を工夫して楽しむのは、WEBラジオでもやってらっしゃいましたね。このラジオもエロくて超笑えます(ポッドキャストで通勤途中に聴くのはお薦めしません・笑)。


 ■万引き少女と書店員

 サドの本を盗もうとした女性を書店員が追求。ついには身体検査におよび・・・。この作品は台本を持たずに演技で見せてくれました。
 “スキャニング”のエロさ、ばかばかしさに爆笑。徐々に立場が逆転し、松井さんが棒や床になって上田さんがそれを踏むという、いわゆるSMプレイへと発展。松井さん楽しそうだった・・・(笑)。女王様キャラにサラリと変身する上田さんもかっこよかったです。

出演:松井周 上田遥(ハイバイ)
原作:マルキ・ド・サド『ジュスチーヌまたは美徳の不幸』『悪徳の栄え』 構成・演出:松井周 協力:野村政之 責任者:徳永京子
2500円+ドリンク代 2ステージ(入れ替え制)19:30&22:00
http://shinsekai9.jp/
http://www.producelab89.com/
http://twitter.com/producelab89


※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 16:55 | TrackBack

城山羊の会プロデュース『メガネ夫妻のイスタンブール旅行記』05/21-31こまばアゴラ劇場

 CMディレクターの山内ケンジさんが作・演出される城山羊の会。アゴラ初進出でしょうか。上演時間は約1時間50分弱だったと思います。

 かな~りハレンチで型破りなストーリーでした(笑)。大人向けのコメディーですね。不思議な展開にたまげつつ、ワハハと気軽に大笑いしていたら、最後にストンと、「あぁ、そういうことだったのか」と腑に落ちました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『メガネ夫妻のイスタンブール旅行記

 ≪あらすじ≫
 14年間も一緒に暮らしてきた愛猫が死に、悲しみに暮れる夫婦(鈴木浩介&石橋けい)。あつかましい隣人夫婦や、人懐っこすぎる大家夫婦が2人の部屋に訪れる。
 ≪ここまで≫

 無言でいる時間が長い目に取られているので、観客は役者さんの表情や動作から意味を受け取ろうとして、集中して観ることになります。言ってることが嘘が本当かわからない、演技のさじ加減が絶妙です。

 人間が悲しみや苦しみの底に落ちたら、そのどん底をとことん味わった後に、やり場のない気持ちを発散させたり、欲望を爆発させたりしたくなるものだと思います。でも実際にそうできるかというと、恥ずかしいだろうし周囲にも迷惑ですし、難しいですよね。だからお芝居でやってくれたんだと思いました。不謹慎でハレンチで向こう見ずで型破りなことを、のびのびとやらかしてくれました。

 美術はおしゃれなアパート。上手袖の奥には玄関がある設定です。そこに向かって伸びる壁が、劇場のエレベーターがある空間に斜めに建っているのがかっこいいですね。広々として見えました。

 ここからネタバレします。大いに誤読しているかもしれません。後ほど加筆予定。2011年1月9日加筆。

 愛する猫を喪ってこの世の終わりのように絶望した気持ちを、どうしたら乗り越えられるのか。妻が次々と意味不明の行動をしていきます。猫は隣人夫婦に殺されのだと言ったり、とりあえず夫とセックスをしてみようとしたり、嘘と本音を撒き散らして、誰かれ構わず怒鳴ってみたり。

 悲しみのどん底に沈んでしまった人は「なるようになれ!」と自暴自棄になって当然だと思います。でもそんなこと、実生活ではほぼ不可能ですよね。迷惑かけますし、恥ずかしいですし。それをお芝居の中でやってみせてくれたんだと思いました。他人のせいにして当たり散らしたり、あれだけやってくれると爽快です。

 妻が毒殺した音楽評論家(古舘寛治)は焼き場でお骨になります。客人たちが消えた後、テーブルの上に残った骨壷は、おそらく猫のものでしょう。やがて夫婦が冒頭で話していた「旅行に行こう」という話題になり、終幕。
 構造としてはいわば夢落ちと言えるかもしれませんが、明快な区切りがないので曖昧なまま。全員がメガネをかけていることも、物語の抽象性を強めていると思います。急に成長してしまった山田夫妻の息子も、やはりメガネですし(笑)。

 夫婦がイスタンブールへと出発するのは3月11日。大震災の日ですよね。とっさに「ああ、この2人は成田空港にたどり着けないだろうから、飛行機には乗れないよなぁ」と思いました。でもその想像は長続きせず、「あの日に空を飛ぶのだとしたら、彼らは天国に行ったのかもしれない」と、違う方向へと思考が飛びました。あの日に亡くなった人々の、平凡な日々の喜び、悲しみをお芝居で見せて、大切な誰かが死ぬという事の、とてつもない重さ、大きさを、あらためて考えさせてくれたのだと思います。

出演:鈴木浩介 石橋けい 古舘寛治(青年団・サンプル) 岡部たかし 永井若葉(ハイバイ) 大川潤子(三条会) 本村壮平
脚本・演出:山内ケンジ 舞台監督:黒葛野繁之・森下紀彦 照明:佐藤啓 音響:藤平美保子  舞台美術:杉山至 衣裳:加藤和恵・平野里子 演出助手:岡部たかし 宣伝美術:螢光TOKYO+DESIGN BOY  イラスト:コーロキキョーコ 技術協力:鈴木健介(アゴラ企画)  制作協力:斎藤拓(アゴラ企画)  芸術監督:平田オリザ 制作プロデューサー:城島和加乃(E-Pin企画) 主催・製作:城山羊の会・(有)アゴラ企画・こまぱアゴラ劇場
【発売日】2011/04/15 チケット料金/全席自由(整理番号付):一般前売り 3,200円 /当日 3,500円
http://shiroyaginokai.com/
http://www.komaba-agora.com/line_up/2011/05/shiroyagi/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 16:19 | TrackBack

風琴工房『紅き深爪』05/24-29ギャラリーLE DECO 4F

 詩森ろばさんが作・演出される風琴工房の公演です。出演者は客演の方々ばかりですね。『紅き深爪』は子どもの虐待をテーマにしたある家族の物語。私は京都で一度拝見しています。終演後のトークにも惹かれ、初日に伺いました。

 登場人物が抱える問題がそれぞれに深刻で、空気も張りつめています。上演時間は約1時間と短いですが、ちょうど良かったと思えるぐらい密度高い目のお芝居でした。

 ⇒CoRich舞台芸術!『紅き深爪』※CoRichでカンタン予約!

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 舞台は深夜の病室。
 もう目覚めないかもしれない眠りをむさぼる一人の女と、
 それを看病する娘、睦美。

 そこに、睦美の姉である妙子、
 その夫、
 さらには睦美の夫と娘の知奈がやってくる

 一見不毛にも思える4人の会話はやがて
 姉妹がかつて女から受けた加虐の記憶へと辿りつく

 これは、
 誰がなにをしなくとも数日中には止まるはずの
 ひとりの女の呼吸をめぐる物語。
 ≪ここまで≫

 病院の個室。舞台下手側には2人掛けソファとテーブル。上手奥にカーテンに隠れた部屋があり、そこに母親が寝るベッドがあります。入院費はかなり高そうですね。
 母親の病室には娘たち(葛木英&浅野千鶴)が毎日通い、基本的には妹(浅野千鶴)が母の介護をしています。とはいえ母はずっと眠っていて、どうやらもう目覚めないらしく・・・。

 前回より面白かったです。妹の娘(小学生)を同年齢であろう子役が演じているのが良いですね。

 ここからネタバレします。

 母親による虐待のせいで自分の子供にも虐待をしてしまう妹。病室ではベッドに横たわる母親の体をつねっていました。肌にその後が残らないように、爪を深く切っています。きれいな女の姿のまま死んでいく母親をにくみ、妹は「誕生日に母を殺す」と日記に書いていました。その日記を見つけた妹の夫が、カーテンの裏でひっそりと母親を殺してしまいます。

 立派な大人が子供に暴力を振るう図を見せることで、痛々しさ、深刻さが増します。娘を虐待している妹役の浅野千鶴さんは、一見平凡で大人しそうな女性に見えます。でも・・・というところが良かった。目に見えない心の傷が、暴力や怒鳴り声になって出てしまう、そのバランスを細やかに制御されていたと思います。

 姉とその夫(佐野功)のラブシーンは至近距離で観るのもあって、かなり刺激的。でも官能的でなかったのが良かったですね。2人の関係は複雑だから、肌で愛情を確認し合うにしても欲望をむさぼるにしても、何やら不自然な、ぎくしゃくしたような空気があるのだと思います。ただ、ほんの少し形式ばった感があったのは残念。

 最後にかかった音楽は私の好みではなかったですね。無音で暗転しても良かったのではないかと思いました。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:松枝佳紀(アロッタファジャイナ 主宰/日本の問題プロデューサー) 谷賢一(DULL-COLORED POP 主宰) 詩森ろば

 谷さんが「妹の夫の方が怖いと思った。彼も狂気を抱えている」という意味のことをおっしゃっていて、同感でした。私は下手のサイド席だったので、最後に長ゼリフを言う夫の顔が全く見えなかったのですが、彼を見つめる妻(妹)の顔が見えていたので問題なかったです。

出演:浅野千鶴(味わい堂々) 葛木英(ehon) 園田裕樹(はらぺこペンギン!) 佐野功 大塚あかり(IVY アイビィーカンパニー) 横尾宏美(シアターノーチラス)女:露木友子(24日、26日昼・夜、27日、28日昼、9日夜)/中山有子(25日、29日昼)
脚本・演出:詩森ろば 演出助手:鳥越英士郎(けったマシーン) 当日運営:吉田仁美(クロカミショウネン18) 企画製作:ウィンディハープオフィス
【発売日】2011/04/02 日時・エリア指定 (劇場の構造上見やすさに多少の差がございます。予約の早いお客さまから見やすいお席にご案内いたします。) 一般 2500円 当日 2800円 障碍 1500円
http://windyharp.org/tsume/index.htm

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 15:44 | TrackBack