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2012年08月22日

【稽古場レポート】ワタナベエンターテインメント・Dステ11th『クールの誕生』08/20都内某所

 ワタナベエンターテインメント所属の若手俳優集団D-BOYSの新作演劇公演『クールの誕生』の稽古場に伺い、通し稽古を拝見させていただきました。過去レビュー⇒
 
 『クールの誕生』は1960年代の高度経済成長期を舞台にしたサラリーマン・コメディー。会社員の悲喜こもごもを描かせたら天下一品の、劇団ラッパ屋の鈴木聡さんによる書き下ろし戯曲です。
 演出はミュージカル界でも有名な山田和也さん。鈴木さんとのコンビは『ミュージカル「ザ・ヒットパレード」』以来なんですね。

 【稽古場写真:左端は演出の山田和也さん】
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 はつらつとしたD-BOYSの面々と技術の確かなベテラン客演陣が、約50年前の企業戦士たちの戦いっぷりを、熱く、コミカルに見せてくれます。笑いあり、ドラマあり、恋愛ありの、文句なしに楽しい娯楽作でした!健康的なお色気があるのも鈴木さんならではですね♪

 ●ワタナベエンターテインメント・Dステ11th『クールの誕生』
 【大阪公演】
  2012年8月25日~26日@森ノ宮ピロティホール
 【東京公演】
  2012年9月04日~10日@紀伊國屋ホール
  2012年9月12日~17日@PARCO劇場
  ⇒公式サイト ⇒公演公式twitter ⇒公演公式facebookページ
  ⇒CoRich舞台芸術!『クールの誕生』★チケットプレゼント実施中!

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 明日への夢があふれていた1960年代・・。裏銀座にある弱小商社「東京堂物産」の社員たちは、来年に控えた東京オリンピック用のグッズ販売の権利を得ようと必死だった。隣接するグランドキャバレー「COOL」で、あの手この手で取引先を接待するのだ。若手社員・岡田清(牧田哲也)と安達裕人(三上真史)もそんな狂騒に巻き込まれる。二人は伝説のサラリーマン・塙(柳浩太郎)に導かれるようにたくましく成長してゆくが、やがて派閥争いに巻き込まれ、ホステス・美枝子(三鴨絵里子)を巡る恋に翻弄され、同期の友情にひびが入る。そして訪れる東京堂物産の危機に、二人はもう一度手を取り合って立ち向かうことになるのだが・・。
 ジャズ、キャバレー、接待・・60年代の風俗の中で、時流に流されながらも夢とプライドを持ちながら生きようとするサラリーマンたちの姿を、おまぬけに、エネルギッシュに描きます。
 ≪ここまで≫

 稽古場には11人の出演者の他、大勢のスタッフさんがスタンバイ。通し稽古の1時間前から集合して、セリフが変更になった場面の返し稽古などをされていました。本番用の食べ物などの準備を整え、いざ、通し稽古開始。音響スタッフも参加し、音楽と効果音も本番仕様です。
 
 
 【写真左から:加治将樹、三上真史、牧田哲也、俵木藤汰】
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 かっこよくスーツを着ていても、スマートに気どるばかりではありません。汗だくになって体当たりのサラリーマン・コントも披露してくださいます(笑)。
 俵木藤汰さんは若い部下たちをたばねる部長役です。相手のセリフをうまく拾うアドリブを連発されるので、共演者は笑いをこらえるのに必死のようでした(笑)。
 
 
 【写真左から:三鴨絵里子、永井秀樹、三上真史、俵木藤汰】
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 キャバレーのホステス(三鴨絵里子)に熱を上げる取引先会社の幹部(永井秀樹)を、必死で接待する弱小商社の社員たち。
 1960年代のバリバリのサラリーマンは、戦争の焼け跡から這い上がってきた企業戦士でもあります。兵士として戦った体験を語る場面ではピリっとした緊張が走り、歴史の重みを感じさせてくれます。
 
 
 【写真:牧田哲也】
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 牧田哲也さん演じる若手社員は純粋で生真面目な性格。会社への忠誠心と自分の信念との間で揺れ動きます。
 
 
 【写真:加治将樹】
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 加治将樹さんは野心に燃える中間管理職をコミカルに演じます。ワイルドで愛嬌たっぷり!
 
 
 【写真左から:俵木藤汰、柳浩太郎】
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 柳浩太郎さんは、独自の美意識を持つ、謎めいた“伝説のサラリーマン”。語り口に独特のムードがあり、空気を一変させます。
 
 
 【写真左から:加治将樹、鈴木裕樹】
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 鈴木裕樹さんは加治さんと同じ中堅社員役で、仲間でありながらも実はライバル同士。会社内の戦いも熱いのです。
 
 
 【写真左から:山田悠介、弘中麻紀】
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 山田悠介さんは、どんな苦難も笑顔で乗り切る総務の鑑、近石役。先輩社員役の弘中麻紀さんとの凸凹コンビが微笑ましい!
 
 
 【写真左から:三上真史、堀井新太】
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 堀井新太さんはキャバレーに勤めるボーイ役。三上真史さん演じる若手会社員との間に、意外な共通項が…。
 
 
 【写真左から:三上真史、山田悠介、牧田哲也】
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 斜めストライプのネクタイをして大きなフレームの眼鏡をかける、レトロな会社員ルック。同じ白いシャツを着ているからこそ、性格や言動の違いがクッキリとあらわれます。
 
 
 【写真左から:鈴木裕樹、三上真史、牧田哲也、加治将樹】
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 サラリーマン社会にも弱肉強食の厳しい現実があります。笑顔の裏には競合企業との熾烈な争いがあり、同じ部内のライバルを演技で出し抜く狡猾さも必要です。
 タイトルの「COOL」、つまり「かっこいい」って一体どういうことなのか。登場人物が決断をしていくうちに、それぞれの「COOL」が見えてきます。
 
 
 【写真左から:柳浩太郎、山田和也、鈴木裕樹】
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 通し稽古の上演時間は約2時間10分(休憩なし)。演出の山田さんは最初に「昨日に比べて見事に良くなってます。柳さん、すごく良かったですよ!」とひとこと。とても優しく、穏やかにお話をされる方でした。ダメ出しをする時は、根拠を詳しく説明してから、具体的な指示をされます。音響と演技のきっかけ、バランスなど、微調整にも余念がありません。
 
 柳さんは2003年に交通事故に遭われて以来、高次脳機能障害を持つ俳優として活動されています。障害を持つ仲間との創作活動は、作品にも、D-BOYSのチームワークにも、少なくない影響を与えているのではないでしょうか。D-BOYSの方々は気さくで人懐っこく、積極的に人に関わっていこうとする明るい行動力も魅力的です。ありのままの相手を見て、聞いて、感じとる豊かな感受性が、外向きに開かれた包容力のある柔軟さにつながっているように思います。

障害役者 ~ 走れなくても、セリフを忘れても ~
柳 浩太郎
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 美術は仮設で照明効果はなく、衣裳も本番用ではありませんでしたが、とても面白くって、手放しに楽しんでしまいました。劇場での本番はこれより面白くなることは間違いなし!演劇に馴染みのない方にもお勧めしたい作品です。会社帰りに同僚と、お休みの日にお友達、恋人と一緒に、大笑いできるお芝居を存分に堪能してください♪
 
 
出演:柳浩太郎、鈴木裕樹、加治将樹、牧田哲也、三上真史、山田悠介、堀井新太(以上D-BOYS・順不同)/ 三鴨絵里子、俵木藤汰、弘中麻紀、永井秀樹
脚本:鈴木聡 演出:山田和也 音楽:川崎晴美 美術:二村周作 照明:佐藤公穂 音響:長野朋美 衣裳:木村猛志(衣匠也) 演出助手:相田剛志 舞台監督:堀吉行(DDR) 宣伝美術:タカハシデザイン室 宣伝写真:西村淳 宣伝衣裳:牧野iwao純子(ダダグラム) 宣伝ヘアメイク:糸川智文 協力:藤本篤志 宣伝:大澤剛 票券:上野正人 制作:水島智代 佐藤みのり プロデューサー:渡部隆 総合プロデューサー:渡辺ミキ
【一般発売】7月7日(土)午前10時~【料金】7,000円(税込/全席指定/未就学児童入場不可)
※D-BOYS STAGEは11thよりDステになりました。
http://www.dstage.jp/cool/

稽古場写真撮影:mao

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年08月22日 09:49 | TrackBack (0)