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しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2012年09月08日

ニッポン放送・WOWOW『ロック・ミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」』08/29-09/10渋谷O-EAST

 森山未來さんがヘドウィグをやるなら、それだけで必見と信じてチケット購入。そしてそれはハズレではなかったです♪ (関連レビュー⇒) 上演時間はカーテンコール含んで約2時間10分(途中休憩なし)。

 終演後に会場で他の日のチケットも販売中。まだ残席あるようですのでご興味ある方はぜひ。多地域公演を経たツアーファイナル公演も東京であります。※お下劣な表現多々あり。覚悟して楽しんでくださいませ。
 会場入り口のポスター↓
20120908_hedwig_moriyama.JPG

 ⇒CoRich舞台芸術!『ロック・ミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」

 原作どおりではないというより、換骨奪胎と言えるほど翻案されています。この作品は『ヘドウィグ~』ではなく、『ヘドウイグ~』からインスパイアされて新しく作られたライブ・パフォーマンスだと解釈するのが、私にとってはいいあんばいでした。

 森山さんかっこ良かった~。演技もうまいし歌もいい。ダンス・動作の切れも素晴らしい。観客への接し方も上から目線にならず、決してへりくだらず対等でありながら、サービス精神満点。

 スガシカオさんの歌詞は、私が以前に観ていたものより英語が少なくなっており、音楽と日本語の相性が良くて、歌がとてもこなれたものになっていたように思います。サントラCDがあったら買いたかったけど売ってませんでした。

 三上博史さんの歌声が聴けますよ↓

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ・トリビュート(CCCD)
オムニバス 髭(HiGE) saigenji BONNIE PINK 日暮愛葉 三上博史 SILVA kayoko BLOODEST SAXOPHONE HONESTY
カッティング・エッジ (2004-05-12)
売り上げランキング: 35273

 ここからネタバレします。間違っているかもしれません。ご容赦ください。

 ご参考までに、あらすじです。おそらく約30年ぐらい先の未来。福島第一原発から20㎞圏内が“原発スラム”化し、アウトサイダーたちの住処になっていた。水商売をする母と原発作業員の父との間に生まれたヘドウィグは“原発二世”。少年の頃から父に少々性的な手ほどきを受け、教会で偶然会った牧師と恋仲に。牧師にプロポーズされたヘドウィグは、男性器の切除手術を受け、母親のパスポートを偽造して自分のものにし、20㎞圏内から初めて脱出する。でも1年後には牧師にフラれてひとりぼっちに。その1年の間に“テロリストの巣窟”だとされた原発スラムは、米軍により爆破された。
 廃墟となった故郷に再び戻ったヘドウィグは、かろうじて残っていたあの教会でトミーという若い青年と出会い、とうとう“自分のカタワレ”を見つける。ヘドウィグはトミーに音楽を教え、彼にノーシス(ギリシア語で知識)という名前を与えた。でもトミーはヘドウィグの股間の“怒りの1インチ(切り取られず残った男性器の一部分)”に触れて、ヘドウィグが放射能被ばくによる後遺症のある原発二世だと思いこみ、「ごめん、僕、無理だ」と言って彼のもとを去る。その後トミーはヘドウィグの楽曲を歌い、大スターになった。ヘドウィグの今のパートナーは同じく原発二世で男性器も女性器もないイツァーク。ヘドウィグは「今27歳だけど、自分の命はもう長くないのかも」という思いも抱きながら、ライブ・パフォーマンスを行っている。ヘドウィグは愛も恩も忘れてしまったトミーに恨みごとをつぶやくが、実のところトミーは…。

 開幕前から、舞台奥の壁面には原発事故関連の新聞記事の映像が映されていました。そして登場したミュージシャンは皆ガスマスクをつけていました。この時点で、どうしよもなく悲しくなって泣きそうになってしまいました。演出の大根仁さんはテレビや映画などでご活躍の映像作家であり演出家です。大根さんは昨年3月の震災以来、言いたいことが言えない状態にずいぶんと苦しまれたのではないか、その怒りや悔しさをこの作品にぶつけたのではないかと想像したからです。大根監督はじめ、この公演にかかわっている方々はきっと原作をとてもリスペクトされているはずです。それでも翻案せずにいられなかったのだろうと勝手に想像し、ヘドウィグが登場する前に「どんな演出にもうろたえない」と腹を決めました。

 森山さんは最後にトミー・ノーシスとなって登場し、歌います。トミー自身としても、大人気ロックスターのパフォーマンスとしても観られたし、ヘドウィグとトミーが一体となった奇跡を体現しているとも受け取れました。今までに観た中では最高のトミーでした。

 イツァーク役の後藤まりこさんのプロフィールには「大阪府生まれ」「セーラー服がアイコン」「パワフルでエキセントリック」「ポップ&キュート」などの言葉が。たしかにそんな感じでした。なんとセリフも大阪弁でしゃべってました。イツァークの人物像からはかなり離れた方ですね。後藤さんが何かするごとに森山さんが立ち上げたた劇世界がすっかり消え去り、その都度、私は落胆しました。だから後半はなるべく気にかけないよう努めました。後藤さんは歌手として人気があるのかもしれませんが、イツァーク役には演技のできる方をキャスティングしてもらいたいです。

 ステージごとにバンドとの即興のセッションがあるようで、私が観た回は、「垂直に立てられたベッドに両手両足をくくりつけられたヘドウィグが、裸にネクタイ&赤ふんどしの小沢一郎さんと…」という濃厚すぎるネタでした(笑)。
 スタンディングエリアは大盛り上がりで、森山さんが手を上げる観客たちの中に飛びこんだりも。カーテンコールの曲は「マイウェイ」でした。

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ [DVD]
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≪東京、大阪、愛知、福岡、東京≫
出演:森山未來 後藤まりこ バンド:岩崎太整 MAKO-T JUON(FUZZY CONTROL) 木島"MAX"靖夫 フルタナオキ 阿部徹 a.k.a.SANTA 永友聖也
作:ジョン・キャメロン・ミッチェル  作詞・作曲:スティーブン・トラスク 上演台本・演出:大根仁 訳詞:スガシカオ 音楽監督:岩崎太整 照明:久保良明 音響:松山岳 映像:奥秀太郎 衣装:杉山まゆみ ヘアメイク:宮内宏明 舞台監督:齋藤英明 演出助手:長町多寿子 宣伝デザイナー:森諭・清水尚樹(easeback) 宣伝衣装:杉山まゆみ 宣伝ヘアメイク:沓掛倫雄 宣伝カメラマン:大橋仁 プロデューサー:村田篤史 制作:神戸丈志 制作協力:クオーレ 宣伝:ELECTRO89 協力:有限会社植田屋染工場 主催:ニッポン放送/WOWOW
【休演日】9/3 【発売日】2012/05/26 全席指定7,800円(+1ドリンク500円)/フロントスタンディング4,800円(+1ドリンク500円、整理番号付)
http://www.hedwig2012.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2012年09月08日 20:29 | TrackBack (0)